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株式会社Yanekara・HarvestX株式会社登壇|東大IPC DEEP TECH DIVE Live! #7 「東大IPC×TSUKUBA CONNÉCT◆大学発!ハードウェアベンチャー」ハイライトレポート

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株式会社Yanekara・HarvestX株式会社登壇|東大IPC DEEP TECH DIVE Live! #7 「東大IPC×TSUKUBA CONNÉCT◆大学発!ハードウェアベンチャー」ハイライトレポート

東大IPCのオンラインキャリアイベント「DEEP TECH DIVE LIVE!」第7回を2021年11月5日(金)に開催しました。このイベントは、キャリアコミュニティサービスDEEP TECH DIVEについて知っていただくために、東大IPCの支援するスタートアップ企業にご登壇いただき、業界の動向、起業エピソード、直近の募集職種などについてカジュアルにお話しいただくというものです。

今回は「TSUKUBA CONNÉCT×東大IPC アカデミア発ハードウェアベンチャー」をテーマに、「太陽光の普及」「食の安定化」という大きな社会課題に挑む株式会社Yanekaraの吉岡COO、HarvestX株式会社の市川CEOにご登場いただき、研究からビジネスを興した動機と道のり、そして目指す「社会貢献」について語っていただきました。こちらの記事では、特に盛り上がったパネルディスカッションの内容についてハイライトでお伝えします。

▼登壇者プロフィール(順不同)

株式会社Yanekara 代表取締役 COO 事業開発統括 吉岡大地氏

高校卒業後単身渡独し、フライブルク大学に正規入学。2018〜19年にはイギリスのウォーリック大学に1年間留学し、エネルギー政策について研究。その後、日本のエネルギー業界で複数のインターンを経験。ドイツ、イギリスを中心にヨーロッパと日本のエネルギー政策とビジネスに知見がある。2020年に株式会社Yanekaraを設立。

HarvestX株式会社 CEO 市川友貴氏

2020年、千葉工業大学情報工学科卒業。在学中に個人事業主として、農業用組み込み機器や植物工場のFA設計などを請け負う。その過程で植物工場の課題や可能性を認識し、 HarvestXプロジェクトの立ち上げ、「虫媒に代わるいちごの自動授粉ロボットシステムの開発」で未踏スーパークリエータに認定される。その後、東京大学本郷テックガレージで出会った服部氏、渡邉氏と共にHarvestX株式会社を設立(2020年8月)。

受粉・収穫作業をロボットに置き換えて、果菜類の植物工場の自動化を促進させる

受粉・収穫作業をロボットに置き換えて、果菜類の植物工場の自動化を促進させる

ーーまずは市川さんから、現在の事業について教えてください。

市川:HarvestXは、ミツバチや人間が行っている「受粉」および「収穫」など負担の大きい作業をロボットに置き換えて、果菜類の植物工場の自動化を促進させることを目的とする会社です。

もともと植物工場には、安定生産・無菌栽培・栽培場所に依存しない・自動化しやすいなどのメリットがあり、ロボットを導入するための環境が整っています。また、従来の植物工場ではレタス・バジルなどの葉物類を中心に栽培していましたが、最近ではLEDの性能向上などを受けて、イチゴ・トマトなどの果菜類を栽培する会社が増えているというのが主な動向です。

このように、現状として果菜類の植物工場が存在し栽培できている中で、我々の事業が必要とされる理由は、受粉を行う際に農園で一般的に採用されている方法である「ミツバチの放し飼い」と、植物工場との相性が良くない点にあります。この背景には、ミツバチが感じるストレスによる受粉精度の不安定化・ミツバチの短命化などが深く関係しています。

均等に受粉しなければ、商品価値のない果実ができてしまう

均等に受粉しなければ、商品価値のない果実ができてしまう

市川:受粉精度は果実の形状に直接影響を与えるため、商品価値のある果実を作るには、いかに均等かつ高精度に受粉を行えるかどうかがポイントです。

HarvestXのプロダクト

市川:こうした課題を抱える植物工場に向けて、HarvestXでは、自動で受粉や収穫を行えるロボットを作っています。画像(※上図)は、社内検証用のロボットです。花や果実の位置・受粉や収穫の可否などの状態を検出する「検出・分類ニューラルネットワーク」、検出した花や果実に対してアプローチを行う「制御システム・コンソール」、実際に受粉や収穫を行う「受粉・収穫アタッチメント」のハードウェアおよびソフトウェアを開発しています。なお、受粉を行う方法は古典的で、耳かきの先端のブラシのようなものを用いて、接触型の受粉を行っています。

ロボットによる完全自動栽培の確立、新たな食糧生産基盤の構築を成し遂げる

ロボットによる完全自動栽培の確立、新たな食糧生産基盤の構築を成し遂げる

市川:HarvestXの強みとしては、衛生面や稼働性の確保・受粉する間隔の制御などを実現できる点にあります。また、今後取り組む内容としては、収量予測精度の向上が挙げられます。既存のシステムでは、果実ができてから最終的に成熟するまでの予測モデルを立てます。一方、HarvestXでは、受粉を手掛けていることもあり、花の開花時期から受粉のタイミングまでの間もカバーできるため、収量予測の精度を高められると考えています。

現在、ロボットでの受粉・収穫に成功しており、コンビニさんや加工食品会社さんなどにお見せして試食いただき、「商品として使えるもの」と評価をいただいている段階にあります。今後は、受粉・収穫の精度を高めていくことが課題です。最終的にはロボットによる完全自動栽培の確立を目指しつつ、今後は「葉かき」や「病害・栄養障害対応」なども自動化し、新たな食糧生産基盤の構築を成し遂げたいと考えています。

Yanekaraの概要

Yanekaraの歩み

ーーありがとうございます。では、次に吉岡さん、お願いします。

吉岡:Yanekaraでは、電気自動車を蓄電池のように使うために必要な充放電システムを作っています。創業メンバーは、わたし吉岡と松藤の2名です。私はドイツの大学に進学し、ヨーロッパでエネルギーの政策・ビジネスを学びました。松藤は、東大の大学院でYanekara関連の研究を行っています。

我々の歩みを簡単に紹介すると、2019年元日にプロジェクトを開始し、当初はまさにYanekaraという名前にもあるように、東大の屋根の上でプロトタイプを作っていました。初期に作っていたのは、屋根の上に太陽光パネルを置き、近くに電動自転車のバッテリーを並べ、その電池に充電をうまく割り振って制御するという小さなプロトタイプです。その後は技術を応用し、電気自動車の充放電を成功させています。

また、2021年9月にはシードの資金調達をさせていただき、現在はこれまでに作ってきたプロトタイプを実用化すべく、実車を用いた実験を進めている段階にあります。

調整力の脱炭素化

吉岡:地球に住み続けるために、Yanekaraでは再生可能エネルギーの普及を目指しています。再生可能エネルギーには太陽光や風力などが挙げられますが、いずれも常に発電を行うことができず、発電量がブレてしまいます。電力システムは常に需要量と供給量が一致しないと周波数が乱れて停電が起こってしまうため、再生可能エネルギーがブレてしまう部分をバックアップするための電源(調整力)が必要です。

これまで、調整力はガス火力などの火力発電が担っていましたが、今後カーボンニュートラルを目指していく中、調整力も脱炭素化させていく必要があると考えています。

そこで我々は、これから普及が見込まれる電気自動車に着目し、内部にある巨大な蓄電池を活用して調整力を作り出すための技術を開発しています。

Yanekaraのビジネススキーム

吉岡:具体的に、我々が開発しているシステムは、「独自開発の充放電器」と「充放電器を分制御するクラウド」の2つです。

このうち、「独自開発の充放電器」には、1基で最大4台まで電気自動車を管理できる特徴があります。既存の充放電器は1台100万円と高価であるうえ、1基で1台までしか制御できませんでしたが、我々のプロダクトでは単純に1台あたりの初期費用を抑えられます。また、屋根の上に太陽光パネルを置き、そこから電気自動車に電力を供給できるというシステムも作っています。これにより、建物とモビリティのエネルギー需要をまとめて脱炭素化できるうえ、災害時でも最低限は電気とモビリティを自給自足できます。

また、「充放電器を群制御するクラウド」では、充放電器の先につながる数千台・数万台の電気自動車を同時的に制御することで、仮想的に巨大な蓄電池のように機能させて調整力を生み出し、再生可能エネルギーの普及を進めていきます。

開発したプロダクトは、まず大学およびその周辺の自治体に広げ、最終的には商用車全般を扱っている事業者さんに販売し、大きな市場に出ていきたいと考えています。

吉岡:ちょうど1年前には、福岡県八女市でパートナー企業さんと実証実験を行いました。その頃には、手組みで作った基盤でした。これでは量産ができず、さまざまな不具合も発生したため、その後はこれらの点を改良するための開発を進めてきて、今後は再チャレンジとして実車を用いた充放電の試験を進めていきます。

興味を持ったきっかけは、アメコミ映画

ーーハードウェア・ものづくりに興味を持ったきっかけがあれば教えてください。

市川:中学2年生くらいの頃ですかね。興味を持ったきっかけは、好きだったアメコミ映画でした。その後、実際にものづくりを始めて、学校の授業で使ったマイコンカーや発電機などの分解や改造を行いました。その中で不明な部分が出てきたときは、書籍を読んで知識を得ていました。

吉岡:ハードウェアのものづくりに触れたきっかけは、「本郷テックガレージ」でした。後に共同創業者となる松藤と共に利用し、市川さんともこの場で出会いました。そこで、ものづくりを行っている人を近くで感じて、熱量がすごく素敵だなと。自分には到底できないことをサラッとやってのける人達を見る中で、「この人達を支える側になりたいな」と思いました。ここでの経験から、彼らと一緒に起業したいと考えて、「自分は、彼らが開発に集中できる環境をつくる」という役割を担う中で、ものづくりに貢献したいと感じましたね。

ビジネスと研究の双方に集中する大変さ・面白さ

ーー今回「アカデミア発のベンチャー」をテーマに掲げさせていただきましたが、研究からビジネスを始めていく大変さ・面白さなど、感じることがあればお聞かせください。

市川:やはり正直なところ、大変な部分はたくさんある、ということを伝えておきたいですね。企業として利益を出すというビジネス面のことを考えながら、研究を計画どおりに進めて技術として成果を出す必要があるという、この両面に集中しなければならない難しさがあります。

ただ、自分たちが作っているプロダクトを必要とするユーザーがすぐ近くにいたので、ヒアリングする中でモチベーションにつながりやすかったのは良かったです。自分たちの技術やプロダクトが役に立つことを肌で実感できる、という面白さがありますね。

吉岡:エネルギー業界には規制やルールなどが多くあって、これをくぐり抜けたうえで安定した品質のハードウェアを作らなければならない、という難しさはあると思います。研究レベルであれば許される範囲でも、ビジネスでは法規制をくぐり抜けながら行っていく必要があって非常に大変だなと。

とはいえ、難しいからこそ誰も手を付けていない部分は確実にあって、これに挑戦するのがスタートアップの醍醐味であり必要性なのかな、と感じます。現場があり、ユーザーがいて、困っている課題があり、それを直接見て聞いて、これに対し解決策としてプロダクトをユーザーと共に作っていく、というプロセスはとても楽しいですね。

「とりあえず何か一緒にやろう!」と伝えたら、2つ返事でOK

ーー本日の参加者の中には将来的に起業を考えている方もいらっしゃるかと思いますので、お二人の起業の経緯について聞かせてください。

吉岡:我々にとって、節目は2つありましたね。1つ目は、登記を行った2020年の6月29日。2つ目は、学生のとき、Yanekaraプロジェクトという研究開発を立ち上げた2019年の元旦です。起業の経緯としては、2019年の元旦の方がより節目といえるかと思います。

研究開発プロジェクトを立ち上げたきっかけは、イギリスの大学に留学中、講義の課題として読んだレポートにありました。そこで、2030年までに気候変動に対して行った取り組みが、2050年の気温上昇の幅に影響を与えることを知り、何かアクションを起こしたいと思い、松藤に電話をかけて「今は何もアイデアはないけど、何か一緒にやろう!」と伝えたところ、2つ返事でOKしてくれたので、そのままYanekaraのプロジェクトが始まりました。

市川:もともと昨年、学生として研究開発プロジェクトを手掛けているときには、起業するつもりはなかったんですよね。私としては、まず植物工場の会社を知りたくて、アメリカの会社からオファーをいただいていて、本来であれば今頃はニューヨークにいたかもしれません(笑)。

しかし、卒業のタイミングで新型コロナウイルスによるパンデミックが起こり、ビザの発行が停止してしまいまして。そんな状況でも、リモートで話を聞いたり、仕事を行ったりしてしましたが、渡米できない歯がゆさを感じていましたね。

いつ渡米できるかわからない中で、日本で働いているよりも、自分が起業して行ったほうが速いのではないかと思ったのがきっかけですね。

加えて、1stRoundなど東大の起業支援を受けられる環境があったことです。「これなら起業の成功確率が高いだろう」と思えました。

身の回りのハードウェアって、とてもすごい

ーービジネスが進むにつれて、不安に思うことはありますでしょうか?

市川:投資契約書や税務面での手続きですね。初めてなので何から着手すれば良いのかわかりませんでした。ただ、起業支援の先生方など周囲に詳しい人がいたおかげで、何とか助かりました。

吉岡:パソコン・スマホ・カメラなど、身の回りのハードウェアがバグを起こさずにちゃんと作動していることって、とてもすごいことなんだなと強く感じますね。過去の開発実験で、パートナー企業さんに買っていただいた電気自動車を壊してしまったことで怖さを感じました。

こうしたアクシデントもあって、安全性の高いハードウェアを作れるのか、向き合っていかなければならない課題として捉えています。今後は、経験のある人材に参加してもらいながら、ハードウェアの品質を向上させていかなければならないと痛感していますね。

ーー本日はどうもありがとうございました。

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