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キャズム理論とは?キャズムが発生する理由、越えるための7つのポイント

  • マーケティング

キャズム理論とは?

キャズム理論とは?

キャズム理論とは、新たな製品が世に出た際に、その製品が市場に普及するために超える必要のある溝について説いた理論のことです。具体的にいうと、イノベーター理論におけるイノベーター・アーリーアダプターを「初期市場」、アーリーマジョリティからラガードまでを「メインストリーム市場」とし、これらの間にはキャズムと呼ばれる大きな溝(市場に製品を普及させる際に超えるべき障害)が存在しており、これを乗り超えることが市場を開拓するうえで重要だとする理論をさします。

イノベーター理論とは、キャズム理論の前提となる考え方であり、新たな製品の普及の過程を、これらを採用するタイミングの早い消費者から順番に、以下の5つのタイプに分類しています。

  • イノベーター(革新者、市場全体の2.5%)
  • アーリーアダプター(初期採用者、市場全体の13.5%)
  • アーリーマジョリティ(前期追随者、市場全体の34%)
  • レイトマジョリティ(後期追随者、市場全体の34%)
  • ラガード(遅滞者、市場全体の16%)

キャズム理論は、「商品普及の鍵はアーリーアダプターが握る」というエベレット・M・ロジャース教授の説に対して一石を投じる形で、マーケティング・コンサルタントのジェフリー・ムーア氏により提言されました。主に、製品の技術進化の激しい「ハイテク業界」で頻繁に取り上げられる理論であり、新規事業の立ち上げを成功させるポイントの1つと考えられています。

イノベーター理論については、以下の記事で詳しく解説しています。併せて読んでいただくと、キャズム理論に関する理解が深まりますので、ご一読ください。

イノベーター理論をわかりやすく解説!【事例あり】

キャズムが発生する理由

キャズムが生じる主な理由は、初期市場とメインストリーム市場の間で見られる、消費者の価値観の違いにあると考えられています。つまり、キャズム以前(初期市場)とキャズム以降(メインストリーム市場)では、消費者の購買に関する優先順位が異なるのです。

初期市場の消費者は、製品を採用するうえで「新しさ」を重視する傾向があります。情報感度が高く、新しい製品を積極的に採用する好奇心を持っており、誰も使っていない商品を採用し、他者に先んじることが彼らにとっての大きな魅力です。

これに対して、メインストリーム市場の消費者は、新しい製品の導入に慎重な姿勢を取っています。信頼して使用できる製品であるのか、他にこの製品を採用している消費者はいるのかなど、購買の際に安心感を求める傾向があるのです。

以上を踏まえて、いかにキャズムを超えて、初期市場からメインストリーム市場まで製品を普及させていくのか、攻略方法を検討することが大切であると考えられています。

キャズムを越えるための7つのポイント

キャズムを越えるための7つのポイント

本章では、実際にキャズムを越えるうえで役立つ施策の代表例として、以下の7つを取り上げます。

  1. 現状を整理
  2. ターゲットを絞り込む
  3. アーリーマジョリティ向けのアプローチ
  4. ユーザビリティを高める
  5. ホールプロダクトを用意
  6. 先進性を強調
  7. 口コミを広める

上記の施策について、具体的な内容を順番に解説します。

①現状を整理

キャズムを越えようとする場合、現在どういった状況にあるのか整理することから始めましょう。

イノベーター理論が分類する5つのタイプの消費者の特徴を把握したうえで、自社製品の普及過程について、初期市場もしくはメインストリーム市場のどの段階に位置するのかを確認することで、キャズムを意識した対策を検討しやすくなります。

②ターゲットを絞り込む

キャズムを越えるには、現状を整理したうえで、狭い市場にターゲットを絞り込むことが望ましいと考えられています。

いきなり人やお金が多く集まるような巨大な市場を対象とするのではなく、まずは「利用者が少なく、動くお金も小さいが、明らかに課題・問題がある」といったニッチだけれどニーズはハッキリしている狭い市場をターゲットにします。そこで徐々にシェアを伸ばし、その市場のNo.1になるという手法を採用すると良いでしょう。この方法には時間や根気が求められるものの、狭い市場からシェアを着実に拡大していくことで、将来的にキャズムを超えることにつなげられます。

なお、ターゲットの絞り込みに関して、ジェフリー・ムーア氏は、「複数の市場セグメント(グループ)を同時に追い求めてしまうと、キャズムを乗り越えられない」と述べています。キャズムを越えるには、1つの市場セグメントにターゲットを絞り込んだうえで、シェアの拡大を目指すことが望ましいです。

③アーリーマジョリティ向けのアプローチ

キャズムを越えるための対策の1つに、アーリーマジョリティ向けのアプローチも挙げられます。アーリーマジョリティーは初期市場からメインストリーム市場に到達する際の第一段階であり、このタイプの消費者に製品を普及させることが、キャズムを越えることにつながります。

アーリーマジョリティは、アーリーアダプターの口コミやレビューに影響を受ける傾向にあります。そのため、人気ブロガーやソーシャルメディア上のインフルエンサーなどに働きかけて、ブログコンテンツ・YouTube動画・SNSコンテンツ(例:Facebook、Twitter、Instagram)などを提供する戦略が効果的です。

このとき、「すでに流行が始まっていること」「製品を採用するメリット」「流行に乗り遅れることに対する恐怖感」などのポイントを意識して訴求を行うと、製品の普及につながります。

④ユーザビリティを高める

製品のユーザビリティ(使いやすさ)を改めて高めていく意識が、キャズムを超えるうえで大切になります。ユーザビリティを尊重し、さらに向上させていく施策が、キャズムを超えるきっかけとなるのです。

キャズムが存在する初期市場からメインストリーム市場への転換期では、安心感が製品の価値として重視されるようになります。消費者に安心感を与えるには、製品のユーザビリティを向上させて、「使っていてストレスがない」「簡単に使いこなせる」などの体験をしてもらうことが大切です。

例えば、ユーザーインタフェースの見直し・アンケートやインタビューによる改善点の把握などを行うことで、ユーザビリティの向上を図ると良いでしょう。

⑤ホールプロダクトを用意

前項の「ユーザビリティを高める」施策と関連して、「ホールプロダクトを用意する」施策も重要です。ホールプロダクトとは、日本語で「完全な製品」を意味します。

製品の機能で「顧客が企業の製品に対してお金を払うことで期待する機能」と「実際に企業が提供できる機能」との間には、ギャップが常に存在します。企業としては、顧客の満足度を向上させるために、補完サービスや補助製品を加えた、完全な製品(ホールプロダクト)を生み出すことが求められます。いわば、ホールプロダクトとは、顧客が求めているものの現在はまだ存在していない「幻想」に近い製品です。

ホールプロダクトは、以下の4つの要素で構成されます。

  • コアプロダクト(企業が提供する製品)
  • 期待プロダクト(製品に対する顧客の期待や要望から形成される製品)
  • 拡張プロダクト(顧客がその製品を購入した目的を満たすことのできる製品)
  • 理想プロダクト(あらゆる機能がそろい、すべての要望を満たせる製品)

当然ですが、初めの段階から期待・拡張・理想のプロダクトをすべてそろえた製品を顧客に提供することは不可能です。そのため、将来にかけてホールプロダクトをいかに構築し提供していくかを顧客に提示し、実際にその約束を果たしていくプロセスが重要であると考えられています。

⑥先進性を強調

キャズムを越えるにあたって、製品のリリース直後に力を注ぐべきポイントとして、先進性の強調が挙げられます。

初期市場(イノベーター・アーリーアダプター)では、モノの目新しさや最先端技術など先進性の高い製品や技術に多くの関心が集まりやすいです。この初期市場を攻略できれば、メインストリーム市場に向けて新たな製品の普及を拡大していくことにつなげられます。

⑦口コミを広める

キャズムを越えるうえで、メインストリーム市場(特に、第一段階であるアーリーマジョリティ)の攻略は必要不可欠です。メインストリーム市場の消費者は保守的で、「他に使用している人はいるのか」「製品を採用するメリットはあるのか」などを疑う傾向があり、新たな製品の採用に慎重な姿勢を取っています。

とはいえ、周囲の人の口コミに強く関心を持つ傾向にあることから、メインストリーム市場でどのように口コミを広めていくのかが、キャズムを越えるためのポイントの1つだといえます。

ただし、前述のとおり、アーリーマジョリティは「他者が使用しているかどうか」を判断材料の1つとして製品を採用することを決めるため、市場全体の16%というわずかな割合のイノベーターとアーリーアダプターの口コミのみでは、製品の採用に踏み出してくれない可能性があるのです。

そこで、キャズムを越えるためには、「口コミが少ない状況においてアーリーマジョリティに製品を使用してもらい、そこで得た口コミを他のアーリーマジョリティに広める」という手段を講じることが効果的です。これを実現するために取られる施策の例としては、アーリーマジョリティをさらに分解したうえで、「この消費者に価値を提供できれば、競合に勝てたり、口コミが広がったりする可能性がある」という領域を見つけ出し、そこにリソースを注いでアプローチを行うことです。

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