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アントレプレナーとは?意味や語源、必要な心構え・スキルを解説

  • 起業・独立

アントレプレナーとは?

アントレプレナー

アントレプレナー(英語:Entrepreneur)とは、事業家や起業家を意味する言葉です。ビジネスシーンによっては、「アントレプリナー」や「アントルプルヌール」などと呼ばれるケースもあるため、合わせて把握しておきましょう。

単なる経営者とは異なり、アントレプレナーは「ゼロの状態から事業を起こす創業者」という意味合いが強く、オリジナリティ溢れるビジネスアイデアやテクノロジーなどを用いて、新たな市場を切り拓いている人物のことです。そこから転じて、「社会や市場で重要な役割を担っている人物」という意味合いも持っています。

アントレプレナーの語源と関連語

アントレプレナーの語源と関連語本章では、アントレプレナーの語源および関連語を順番に取り上げます。アントレプレナーについて正確に把握するためにも、語源や関連語をしっかりと理解しておきましょう。

アントレプレナーの語源

アントレプレナーの語源は、フランス語の「Entrepreneur」にあります。「Entrepreneur」は、英語で「Between(〜の間に)」を意味する接頭語「Entre(アントレ)」と、英語で「Taker(受取人)」を意味する名詞「Preneur(プレナー)」をつなげた言葉です。

上記を直訳すると「間を取り持つ者」となり、もともと仲買人や貿易商などの人物をさす言葉として使われていました。しかし、時代の移り変わりとともに英語でも使われるようになり、やがて事業家や起業家をさす言葉として世界中に広まったとされています。

アントレプレナーの関連語①:イントレプレナー

アントレプレナーと類似する言葉として、「イントレプレナー」が挙げられます。イントレプレナーとは社内起業家のことであり、「会社内で起業を行う人物」を意味する言葉です。

アントレプレナーとは異なり、イントレプレナーには、自身が所属している企業からサポートを受けつつ新たな事業を始める点に大きな特徴が見られます。この点はメリットに働くものの、時間や事業内容などさまざまな制約を受けながら事業を立ち上げなければならない点はデメリットです。また、社内での折衝も求められることから、イントレプレナーとして活動するには、アントレプレナー以上の調整力やリーダーシップを備えていることが望ましいです。

アントレプレナーの関連語②:ソーシャルアントレプレナー

ソーシャルアントレプレナーとは、形容詞「ソーシャル(社会的)」と名詞「アントレプレナー(事業家・起業家)」をつなげた言葉であり、社会企業家・社会起業家とも呼ばれています。

簡単にいうと、社会の変革を担う人物として、社会の課題を事業によって解決する事業家・起業家のことです。深刻かつ差し迫った社会課題に対して、ビジネスやマネジメントなどのスキルを応用しながら問題の解決・収益の確保を図っています。

ソーシャルアントレプレナーの主な事例としては、ムハマド・ユヌス氏のほか、ナイチンゲール、ロバート・オウエンなどの偉人も挙げられます。ムハマド・ユヌス氏は、貧しい人々のために「グラミン銀行」を創設し貧困撲滅に貢献したとして、2006年にノーベル平和賞を受賞した人物です。また、ナイチンゲールは現代看護の開発者として、ロバート・オウエンは生協活動の設立者として広く知られています。

アントレプレナーの関連語③:インフォプレナー

インフォプレナーとは、名詞「インフォメーション(情報)」と名詞「アントレプレナー」をつなげた言葉です。​​情報事業家・情報起業家とも呼ばれており、自身が抱える成功ノウハウやビジネスツールなどの情報商材をもとに起業活動を行う人物をさします。

ここでいう情報商材とは、インターネットを介して売買される情報のことであり、電子書籍・CD・DVDなども含まれます。​​なお、インフォプレナーは自身で情報商材を作り出す必要があるため、既存の情報商材を販売する「アフィリエイター」とは異なる存在です。

インフォプレナーの事例としては、与沢翼氏、菅野一勢氏、小玉歩氏などの人物が挙げられます。

アントレプレナーの関連語④:シニア・アントレプレナー

シニア・アントレプレナーとは、60歳前後のシニア世代に突入してから、新たに事業を立ち上げる事業家・起業家のことです。最近では、シニア世代になるまでの期間を企業人として長く勤め上げた会社員が、定年退職をきっかけに「豊富な人生経験を生かして社会貢献を行いたい」という思いを抱いて、新たに事業を起こすケースが増加しています。

また、労働人口が減少に転じている日本社会では、シニア・アントレプレナーの活動をサポートする動きが官民問わず拡大しています。シニア・アントレプレナーの主な事例としては、曽我弘氏のほか、カーネル・サンダースなどの偉人が挙げられます。曽我弘氏は、新日本製鐵を定年退職後にアメリカに渡り、シリコンバレーで「Spruce Technology」を起業し、開発したテクノロジーをApple社に売却した人物です。また、KFC(ケンタッキーフライドチキン)創業者のカーネルサンダースは、65歳で起業した人物として広く知られています。

アントレプレナーの関連語⑤:シリアルアントレプレナー

シリアルアントレプレナーとは、形容詞「シリアル(連続の)」と名詞「アントレプレナー」をつなげた言葉です。連続起業家とも呼ばれており、1つの会社を大きくしていくのではなく、新たな事業を次々に立ち上げて、事業の売却を繰り返している人物をさします。

具体的に説明すると、「起業した会社の経営が軌道に乗ったタイミングで売却して利益を得た後に、その利益を用いて新たな会社を設立して売却する」というサイクルを繰り返し行っているのです。また、仮に事業の立ち上げに失敗したとしても、それを糧に新たな事業を立ち上げ続けるのが、シリアルアントレプレナーの大きな特徴だといえます。

シリアルアントレプレナーの主な事例としては、家入一真氏、有安伸宏氏、イーロン・マスク氏などの人物が挙げられます。

アントレプレナーが今求められる背景

アントレプレナーは、優れた創造性やチャレンジ精神などをもとに、社会課題の解決やビジネスの仕組みの変革などを行う人物として位置づけられています。本章では、このようにアントレプレナーが求められている背景として、以下の4項目を取り上げます。

  • 日本経済の行き詰まり
  • 社会課題の顕在化
  • グローバル経済の発展
  • 顧客ニーズの多様化

それぞれの項目を順番に詳しく解説します。

日本経済の行き詰まり

経済情勢の移り変わりに伴い、これまで多くの日本企業が続けてきた終身雇用や年功序列などの制度が崩壊を始めています、最近では、経団連の中西宏明前会長やトヨタ自動車の豊田章男社長など日本経済界のリーダーたちが「終身雇用の維持は難しい」旨の発言をしたことで話題となりました。

また、昨今のビジネスシーンでは、より良い商品・サービスを生み出すだけでなく、スピード感のある開発が求められています。これを実現するには、さまざまな課題を解決しなければなりません。既存の企業においても、末永い存続を図るために新たなアイデアを用いながら進化を続けることが望ましいです。

こうした状況の中で、アントレプレナーのように、優れた創造性やチャレンジ精神をもとに日本経済の将来を切り開く存在が求められています。革新的なアイデアを出す起業家が求められている社会風潮において、アントレプレナーの重要性が今後ますます高まっていくと予想されているのです。

社会課題の顕在化

日本では、少子高齢化や環境問題などが深刻化しています。こうした問題を解決する手段として、最近ではソーシャルアントレプレナーによる社会的事業の取り組みが政府・地方自治体などから注目を集めているのです。

注目度が高まっている社会的事業の具体的な事例を挙げると、単身高齢者に空き家をリノベーションした住宅を提供するビジネスや、企業の後継者不在問題を解決するために後継者候補とのマッチングを図るサービスなどです。

ソーシャルアントレプレナーの手掛ける社会的事業は、一般的なビジネスと比べて難易度が高い傾向にあります。しかし、このようにハードルの高い事業領域にあえて挑戦し、リスクを覚悟しながらも社会課題の解決を図る姿勢は高く評価されているのです。

グローバル経済の発展

イノベーションによるIT技術の普及などに伴い、最近では多くの日本企業が海外市場に進出するなどグローバル経済の発展が目立っています。しかし、世界市場では経済状況や市場ニーズなどが急速に変化を続けており、これらに対応できる商品・サービスを開発・提供できなければ他企業との競争には勝てません。

こうした状況において日本企業が世界で活躍するためには、アントレプレナーの持つ優れた創造性やチャレンジ精神によって、変化を続ける市場環境に柔軟かつスピーディーに対応していくことが望ましいです。今後もグローバル経済の発展が進めば、常に社会の先端を見据えられるアントレプレナーの視点がより強く求められるものと予想されています。

顧客ニーズの多様化

現在はSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の普及が進んでおり、顧客は商品・サービスをあらかじめリサーチしてから購入するという傾向を強めています。また、口コミによって商品やサービスの評判を拡散する動きが日常化している状況です。

こうした傾向によって顧客の心理やニーズが流動化しているため、企業側ではこの動きに即座に対応しながら商品・サービスを開発・提供することが望ましいです。そこで、アントレプレナーの存在が大きく注目されているのです。

柔軟な発想と軽いフットワークを兼ね備えたアントレプレナーであれば、顧客の心理・ニーズが流動的であっても、しっかりとキャッチしてマーケティングに反映できます。また、SNSを用いて顧客の生の声を拾い上げて反映させるなど、アントレプレナーの持つ「新たな情報を取り入れ続ける姿勢」は重宝されています。

アントレプレナーに大切な5つの心構え

一般的に、アントレプレナーには、「アントレプレナーシップ」が必要とされています。アントレプレナーシップとは、新たなビジネスやサービスの開発などに対して高い意欲を持ち、リスクを取りながら積極的に挑戦する姿勢・発想・精神性のことです。

本章では、このアントレプレナーシップのもとになる心構えの代表的な例として、以下の5つを取り上げます。アントレプレナーやアントレプレナーシップについて理解を深めるための参考としてご活用ください。

  1. ゴールへの情熱
  2. 誠実さ
  3. 高い志
  4. 率先垂範(そっせんすいはん)
  5. 自信を持つ

①ゴールへの情熱

新たに事業を起こす際は、ネガティブな情報に接したり、リスクを取ることを迫られたりするなど、窮地に陥る機会が少なからず存在します。しかし、アントレプレナーとしての目的(ゴール)に到達するには、何が起こっても諦めずに耐えることが大切です。

これを実現するために、ゴールへの情熱が求められます。仮にゴールに対する情熱がなければ、困難に負けて挫折してしまいかねません。

そのため、まずは強い意志を持って事業を推進することが大切です。情熱をもとに何が起こっても諦めずに耐えることで、リーダーシップやネットワークの形成にもつながります。

②誠実さ

アントレプレナーは、「誠実な人」であることが望ましいとされています。ここでいう誠実さとは、「私利私欲がなく、人や物事に対して真心を持って、嘘をつかない真面目さ」のことです。

例えば、アントレプレナーに限られませんが、礼儀正しく接する姿勢を身につけることは大切です。なぜならば、商品やサービスを販売するには、さまざまな立場にある顧客の視点を持つことが大切であるためです。もしも目下の人に横柄な態度を示すような姿勢を取っていれば、他人の心の機微がわからずに、顧客の心を捉えた商品・サービスを売ることはできません。

また、感謝する心を持つことも大切です。事業の成功時に感謝の気持ちを伝えることで、より多くの人が応援するようになります。これにより、自身の活動をサポートしてくれるネットワークが形成されて、目的の達成に近づきます。

加えて、約束を守ることも大切です。たとえ相手側が忘れてしまうような小さなものであっても、約束をしたらしっかりと守りましょう。約束を守り続けることで、次第に相手からの信頼を得られます。一方で、約束を守れないと、相手からの信頼を失ってしまいます。事業のパートナーや協力者からの信頼を失ってしまえば、目標の達成から遠ざかるでしょう。

そのほか、アントレプレナーには、失敗と向き合う誠実さも大切です。事業の立ち上げには困難がつきものであり、ゴールへの情熱のみでは失敗してしまう場合もあります。しかし、たとえ失敗しても責任転嫁せずに、自身の失敗を認めることが大切です。失敗を生かしながら進んでいくことで、成功につなげられます。

③高い志

アントレプレナーが事業を立ち上げて推進していくには、優れた商品・サービスを開発・提供して顧客に満足感を与えることが大切です。これを成し遂げるには、目的を成し遂げるという高い志と、利益の確保だけではなく社会貢献を行うという使命感が重要です。

④率先垂範(そっせんすいはん)

アントレプレナーには、率先垂範することでチームのメンバーに見本を見せる姿勢も大切です。率先垂範とは、人の先に立って模範を示すことです。自身がリーダーのチームを組んで事業を立ち上げる場合、それぞれのメンバーの行動が事業の成否を大きく分けます。

メンバーからすると、リーダーから模範となる行動・考え方が提示されれば、ひとりひとりの成長の足がかりとなります。メンバーに成長のヒントを与えることで、リーダーへの信頼につながって強くまとまった組織を構築できます。これにより、チームの全体力が向上し、事業の推進につなげることが可能です。

⑤自信を持つ

アントレプレナーは、自信の事業活動について絶対的な自信を持つことが大切です。事業を立ち上げて推進していくうえで、リスクの高い選択肢を取らなければならない場面は少なからず存在します。こうした場面で的確な判断を行うには、絶対的な自信が大切です。

ここでいう自信とは、「自身が手掛ける事業が会社や顧客、社会に役立っている」と思える心のことです。自信を「偉そうな態度」と勘違いすれば、チーム内で孤立してしまうおそれがあるため注意しましょう。

アントレプレナーに必要な7つのスキル

アントレプレナーに必要な7つのスキル

アントレプレナーには、これまでに紹介した心構えをもとに、一般的に以下の具体的なスキルを備えていることが望ましいとされています。

  1. ビジネスモデルを生み出す発想力
  2. 人的ネットワークを広げるコミュニケーションスキル
  3. ビジネスを推進する交渉スキル
  4. PDCAを回すスキル
  5. マーケティングスキル
  6. プログラミングなどのITスキル
  7. メンバーを束ねるマネジメントスキル

もちろん、これだけあればいいということではありませんが、代表的な7つのスキルの内容を詳しく紹介しますので、それぞれ自身に備わっているかどうか確認してみてください。

①ビジネスモデルを生み出す発想力

一般的に、アントレプレナーは、ビジネスモデルを生み出すために、既存の枠組みに囚われない自由な発想力を備えていることが望ましいです。なぜなら、新規事業を立ち上げて既存事業との競争に勝利するためには、今ある価値観や常識とは異なるオリジナリティ溢れるアイデアや施策が重要視されているためです。

このようなアイデアや施策を打ち出すには、日常のあらゆる物事に注目し、ビジネスモデルに変換できないか模索することが望ましいです。つまり、常日頃から事業について考えて、自信が体験したことなどからビジネスモデルを生み出せないか検討するのです。

なお、ビジネスモデルを生み出す際は、データ分析をもとに仮説を出すことが求められるのが一般的ですが、仮説を出せないケースも想定されます。こうしたケースでは、数値などのデータから離れたうえで、自由にアイデアや解決法を模索する姿勢が大切です。

②人的ネットワークを広げるコミュニケーションスキル

事業を立ち上げて推進していく際、さまざまな問題に悩まされるおそれがあります。事業に関する問題を解決するうえで、アドバイスや意見を提供してくれる存在を抱えることは望ましいです。自身の事業をサポートしてくれる存在は人的なネットワークによって得られますが、これを広げるにはコミュニケーションスキルの習得が大切です。

ここでいうコミュニケーションスキルとは、「会話の速さ」「会話しやすい雰囲気づくり」「相手に好印象を与える言い方」「話の内容の組み立て」などに関するスキルのことです。

一般的に、上記のスキルを身につけるには、相手に好意的な印象を抱かせるよう努めてにコミュニケーションを行うと良いとされています。つまり、わかりやすく話そうとしたり、面白いことを言おうとしたりすることよりも、「相手に好意的な印象を抱いてもらうためにはどうすれば良いのか」を徹底的に考えながらコミュニケーションすることが大切です。

③ビジネスを推進する交渉スキル

アントレプレナーが備えていると望ましい交渉スキルは、自身の事業と利害関係にある人に対して、お互いが納得できるゴールを目指して話し合うためのスキルです。ビジネスシーンでは、取引先と契約を締結したり、チームメンバーの給与・残業などの規定を決めたりする際に交渉を行うのが一般的です。

交渉に際してスキルを身につけておけば、取引先との信頼関係を構築できたり、チーム内の調整をスムーズに進められたりするメリットがあります。これとは反対に、アントレプレナーに交渉スキルが備わっていないと、契約締結どころか取引先との関係性が悪化し、今後の取引に支障をきたすおそれがあります。また、チーム内での調整に失敗すれば、メンバーのモチベーション低下を招いて、最悪の場合には離職してしまいかねません。

交渉スキルを身につけるには、「ロジカルシンキングを磨く」「コミュニケーションスキルを向上させる」「研修を受講する」などの選択肢があります。ロジカルシンキングとは、筋道だった合理的な考え方のことです。ロジカルシンキングを磨くには、根拠をもとに情報源の正しさや数字・データの明確さなどを確認する姿勢を持つと良いでしょう。また、実践レベルで交渉スキルの習得を目指すには、研修の受講という手もあります。ロジカルシンキングの研修を受けることで、専門家から知識や方法を直接的に吸収できます。

④PDCAを回すスキル

アントレプレナーとして事業の立ち上げや推進を行っていくうえで、数多くの失敗に直面する可能性が高いです。一般的に、こうした失敗を繰り返さずに成功へとつなげていくには、PDCAを回すスキルが求められます。

PDCAとは 「Plan(計画)」「Do(実行)」「Check(評価)」「Action(改善)」の略であり、これら4つのプロセスを繰り返して業務を継続的に改善する方法のことです。PDCAのサイクルを回すことで、事業に関する失敗を繰り返しにくくなります。

単純に計画を立てて実行したのみでは、「成功か失敗」という結果しか残りません。しかし、PDCAの「評価」と「改善」のプロセスを加えると、「なぜ失敗したのか?」「より大きな成功を目指すにはどうすれば良いのか?」などの疑問を検証できるようになります。正しくPDCAを回すことができれば、失敗を減らせるだけでなく、事業の精度や企業の成長速度の向上にもつなげられます。

⑤マーケティングスキル

アントレプレナーとしてどれだけ素晴らしい商品・サービスを開発したとしても、顧客に認知されなければ購入してもらえず、存在していないも同然とみなされます。商品・サービスを顧客に購入してもらい、事業を継続していくためにも、マーケティング活動の推進が大切です。

マーケティング活動とは、顧客を集める仕組みづくりのことです。具体的にいうと、「どのような製品を、どのような価格・場所で、どのように販売するのか」「自身の商品・サービスは市場でどのようなポジションを取るのか」「どのような人に自社の商品・サービスを届けるのか」などの戦略を立てることです。

顧客を集める際にマーケティング活動をまったく行わないと、口コミや営業活動を行う従業員の能力に頼りきりになってしまう可能性があります。しかし、これでは効率が悪いうえに、多くのコストがかかってしまうのです。

マーケティング活動を行うには、4PやSTP分析などのマーケティング手法が用いられることが多いです。ただ、何よりもまず「どのようにしたら顧客にもっと喜んでもらえるか?」を徹底的に考えることです。そうして商品・サービスを開発・提供すると良いでしょう。これを実践し経験を積むことで、マーケティングスキルが肌感覚で身につきます。

⑥プログラミングなどのITスキル

スマートフォン、5G、ビッグデータ・IoT・人工知能(AI)などIT技術の普及・発展によって、ほとんどの産業において「IT」を避けることはできません。事業を立ち上げて推進するうえでIT技術の重要性は今後ますます高まるものと予想されているため、アントレプレナーとしてもこれらの技術を生み出す「プログラミング」のスキルを身につけておくことをおすすめします。

とはいえ、アントレプレナー自身が、必ずしもエンジニアに匹敵するほどの深いITスキルを身につける必要はありません。ただし、アントレプレナーとして活動するうえでエンジニアと協力しながら仕事を進めていくケースが増加しているため、彼らと円滑にコミュニケーションできるように、プログラミングに触れる経験は積んでおきましょう。

なお、エクセルやワード、メール、各種SNSの使い方など基本的なITスキルについては、業務の効率化につながるため身につけておくことをおすすめします。

⑦メンバーを束ねるマネジメントスキル

ここでいうマネジメントスキルとは、人望やリーダーシップともいい換えられます。たとえ、これまでに紹介した6つのスキルを持ち合わせていない場合でも、マネジメントスキルがあればスキルを持つ人をチームのメンバーに加えることができ、事業の立ち上げや推進につなげられる可能性があります。

また、マネジメントスキルは、立ち上げた事業が軌道に乗ってきた段階でも求められるスキルです。事業の立ち上げ当初は、同じ志を持ったメンバーのみで活動するため、業務の効率性は非常に高いです。しかし、事業拡大に伴い新たなメンバーを採用する段階になると、既存のメンバーとの間でモチベーションや考え方にギャップが生じてしまうおそれがあります。場合によっては、メンバー同士が対立して、事業をスムーズに推進できなくなる事態に発展しかねません。

こうした状況では、リーダーであるアントレプレナーに、メンバーを束ねるためのマネジメントスキルを備えていることが望ましいです。具体的にいうと、経営方針・計画・戦略の構築および共有のほか、メンバーのモチベーションを向上させる施策(例:インセンティブの付与)などに関するマネジメントスキルの習得が望ましいです。

マネジメントスキルに優れたアントレプレナーであれば、目標の実現および発展に大きく貢献できます。

アントレプレナーになるには

アントレプレナーになるには

本章では、アントレプレナーになる方法の代表的な例を紹介します。

アントレプレナーになるために資格は不要

アントレプレナーになるために資格の取得は基本的に不要ですが、業種によって資格が求められるケースもあります。

例えば、飲食店を立ち上げる際は、食品衛生責任者の資格が必要です(ケースによっては防火・防災管理者の資格も必要)。また、金融業界で事業を立ち上げる際は、証券の外務員やファイナンシャルプランナーなどの資格を取得しておくと役立つ可能性があります。

そのほか、アントレプレナーは、事業の予算や会計のチェックを求められるケースがあります。こうした業務をスムーズに行いたい場合、予算や会計に関する知識を習得しておくことが望ましいです。

アントレプレナーになる方法6選

実際にアントレプレナーになる、またはアントレプレナーを目指すにあたり役立つ手段・方法具体例として以下の6つを説明します。

  1. 起業する
  2. スタートアップに転職する
  3. MBAを取得
  4. 大学に入る
  5. プログラミングスクールで学ぶ
  6. インキュベーションプログラムを受ける

①起業する

これは、最も分かりやすくアントレプレナーになる方法です。起業する際の一般的な流れを説明すると、まず自身の性格・趣味・特技などの個性を把握したうえで、ビジネスアイデアを考えます。例えば、「不可能とされていることを可能にできるか」「今あるものをより良くできるか」「日常の問題や不満を解決できるか」などの観点をもとに検討すると、世の中に価値を提供できるようなビジネスアイデアを考えられます。

次に、ビジネスモデルを構築します。一般的に、アントレプレナーは、限りある資金・時間を用いて事業を成功させることが求められます。そこで、ビジネスモデルを構築すれば、自身のビジネスに制限をかけて投入する資金や時間を一点に集中させることが可能です。ビジネスモデルには、主に「物販モデル(作って販売する)」「卸売モデル(商品を仲介する)」「消耗品モデル(消耗品の販売で利益を出す)」「広告モデル(人を集めて広告で利益を出す)」「継続課金モデル(毎月の課金で利益を出す)」などが存在します。

その後は、起業に必要な資金の調達や手続きなどを進めます。起業は資本金1円でも可能です。ただし、これでは「口座開設できない」「増資できない」「社会的信用が低い」など、起業後にデメリットを被るおそれがあります。そのため、起業の前後でどれくらいの金額が必要となるのか計算したうえで、状況に応じて資金調達を行うことが望ましいです。

また、起業に必要な手続きは、起業方法(個人事業・会社設立など)によって異なります。例えば、個人事業主として起業する際の手続きは、開業後1カ月以内に、税務署に対して「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出するのみです(費用は不要)。

これに対して、会社を設立して起業する際は、公証人役場・法務局・税務署・年金事務所・労働基準監督署などでの手続きが求められます。このときには、資本金・定款認証の費用として5万円(紙に印刷した定款の場合は、4万円分の収入印紙も必要)・登録免許税(資本金の0.7%もしくは15万円のうち低い金額)などの費用が必要です。起業の手続きが終了すると、アントレプレナーとして事業を立ち上げたことになり、事業の成功に向けて活動をスタートさせられます。

②スタートアップに転職する

もしも社会人経験があるならば、スタートアップへの転職も選択肢の1つです。スタートアップとは、「革新的なアイデアや独自性をもとに新たな価値を生み出して、社会に影響を与える企業」のことであり、アントレプレナーによって立ち上げられているケースも多く見られます。

そのため、スタートアップに転職すれば、すでにアントレプレナーとして活動している人のもとで実践的なビジネスを学ぶことが可能です。もしも、すでに事業が軌道に乗っている段階ではなく、これから事業環境を整えていく段階にあるスタートアップへ転職した場合には、ゼロに近い状態から事業を軌道に乗せていく段階のノウハウを吸収できるため、将来のアントレプレナーとしての活動に生かすことができるでしょう。

③MBAを取得

社会人経験があり、起業前にスキルを身につけておきたいという方には、経営大学院や夜間大学に通ってMBAを取得する選択肢もあります。MBAとは、「Master of Business Administration」の頭文字を取った名称であり、経営学の大学院修士課程の修了時に授与される学位です。日本では、「経営学修士」「経営管理修士(専門職)」とも呼ばれています。

経営大学院や夜間大学では、ケーススタディを通じて実践的なビジネススキルを学習できます。ここでは、さまざまな企業の事例を用いてケーススタディを行えるため、理論のみでは得られない現実の問題解決に結びつけられるスキルを養えるのです。
また、分析力・洞察力・論理的思考力・戦略構築力など、経営者が備えていると望ましいスキルも養成できます。
さらに、ケーススタディに主体性を持って取り組むことで、アントレプレナーシップを養うことも可能です。

アントレプレナーは、アントレプレナーシップをはじめ、経営に関するさまざまなスキルを備えていることが望ましいとされています。これらのスキルを習得してから起業したい場合、経営大学院や夜間大学でMBAの習得を目指すのも良いでしょう。

④大学に入る

高校生以下であれば、大学に入りアントレプレナーシップの教育を受けるのも選択肢の1つです。アントレプレナーシップは、経営学・商学・ビジネス学・法学・経済学・総合政策学・教養学などの学科で学べます。

アントレプレナーシップ教育を導入している大学の代表例は、バブソン大学(アメリカ・マサチューセッツ州)です。バブソン大学は起業家教育に特化しており、アントレプレナーシップの分野で世界的に高い評価を得ています。トヨタ自動車の豊田章男社長は、バブソン大学の卒業生です。

具体的な教育内容を見ると、より実用的なアントレプレナーシップを学習させるためにすべての学生に起業を必修化し、教授陣は学生の起業に協力するという教育方針が掲げられています。

なお、最近では、日本の大学でもアントレプレナーの育成に力を入れ始めています。例えば、東京大学では、産学協創推進本部によって、本学の学生・ポスドク・研究者を対象に、起業やスタートアップ(ベンチャー)に関する講義・講座を提供しています。加えて、初期のスタートアップや将来スタートアップに携わる可能性のある学生の開発プロジェクトに対する支援や、卒業生も対象にした超初期の起業家向けの支援も行っています。

東京大学産学協創推進本部が提供する教育支援プログラムの一部概要を、以下の表にまとめました。

プログラム名 概要
東京大学アントレプレナー道場 企業やスタートアップ(ベンチャー)について初歩から体系的に学べるプログラム

※工学部共通科目「アントレプレナーシップI(S1)、II(S2)」と「アントレプレナーシップ・チャレンジ(ビジネスアイデア・コンテスト)」により構成されており、どのターム(および各タームの途中)からでも参加可能

アイデアを形にするモノづくり体験~ロボットから家電まで~(ものゼミ) 「モノづくりやプログラミングに興味があるものの、どこから手を着けて良いかわからない」人や、「初学者から中級者へのステップアップを目指したい」人が、コンセプト立案からモノづくり、プレゼンテーションまでを体験できる授業
東京大学 EDGE NEXTプログラム 東京大学/筑波大学/静岡大学/お茶の水女子大学の学部生・大学院生・ポスドク等の研究者・研究所の研究員、事業プロデューサーおよび企業研究開発者・事業開発者を対象として、多様な経験を持つメンバーがチームを作り、自身の研究成果をもとに事業化構想を練り上げるプログラム
本郷テックガレージ 東京大学の学生がサイドプロジェクトを行うための秘密基地として、学外に開発スペースを用意
Spring Founders Program/Summer Founders Program 東京大学の学生を対象として、長期休暇中に集中した技術プロジェクトや製品開発に対する支援を行うプログラム
FoundX これからスタートアップを始める東京大学の卒業生・研究者を対象として、シード期以前のチームや個人を支援するインセプションプログラムを提供
Todai To Texas 無名の東京大学関連のスタートアップを対象として、世界デビューの支援を目的に、世界有数のイノベーション・カンファレンス「South by Southwest(SXSW:サウス・バイ・サウスウエスト)」 のTrade Show(見本市)に出展するプロジェクト

また、武蔵野大学では、2021年4月にアントレプレナーシップ学部を創設し、起業家精神を持って新たな価値を創造できる実践的な能力を身につけた人材の育成を開始しています。

高校生以下であれば、これらの大学で必要な知識・スキルを習得したうえで、アントレプレナーを目指すことも1つの手です。

出典:Babson College
東京大学産学協創推進本部「アントレプレナーシップ教育/プロジェクト支援」
武蔵野大学 アントレプレナーシップ学部

⑤プログラミングスクールで学ぶ

プログラミングスクールで学ぶことで、ホームページやシステム開発など、プログラミングスキルが直接的に求められる事業を立ち上げやすくなります。なお、プログラミングなどのIT技術はほとんどすべての事業に結びついているため、IT分野での起業を考えていない場合でも、プログラミングスキルの習得は非常に有効です。

プログラミングスキルを習得しておけば、エンジニアに頼ることなく自分自身で起業のアイデアを具現化できます。また、将来的にアントレプレナーとしてエンジニアを雇用する際も、専門用語を交えながら彼らと対等な立場で話せるため、仕事内容に関して認識のズレが起こりにくく、高品質な商品・サービスづくりにつなげられます。

⑥インキュベーションプログラムを受ける

インキュベーションプログラムとは、起業および事業の創出を考えている人や企業を対象に、経営資源の提供を通じて包括的なサポートを行うプログラムのことです。

インキュベーションプログラムを受けることで、起業に関する資金・ノウハウ・場所などを提供してもらえます。これにより、起業・事業の創出までに立ちはだかるトラブル・課題を解決しながらアントレプレナーを目指すことが可能です。

日本では、ベンチャーキャピタルのほか、ソフトウェア開発会社・コンサルティング会社・大学などもインキュベーションプログラムを提供しています。

1stRoundもインキュベーションプログラムの1つであり、ベンチャーキャピタルから外部調達を行う前のチームあるいは設立3年以内のベンチャーが理想的な形で最初の資金調達(1stRound)を達成するための支援を行っています。東京大学・筑波大学・東京医科歯科大学・東京工業大学および東大IPC(東京大学協創プラットフォーム開発)が共催しており、毎年2回(6月&12月)各回約8件が採択されています。

採択されると、Non-Equity資金(最大1,000万円)のほか、クラウドリソースやオフィスなどの開発環境・キャピタリストと専門家による6カ月のハンズオンなどの無償提供を受けることが可能です。

2021年10月現在、第6回のエントリーを開始しており、応募前の事前相談にも対応しておりますので、不明点がある方はお気軽にお問い合わせください。

上記のほか、1stRoundでは、インキュベーションプログラムを受ける前の段階として、起業家教育を提供するプログラムの利用も提案しています。例えば、「FoundX Online Startup School」は、東大卒業生の起業家向けにサポートを提供している「FoundX」 による、どなたでも学べる無償のオンラインコースです。主に、スタートアップや新規事業の立ち上げに役立つ「スタートアップのパターン(類型)」について学べます。

登録不要の動画視聴により学習することも可能なので、お気軽にご利用ください。

まとめ

まとめ

アントレプレナーとは、事業家や起業家のことですが、「ゼロの状態から事業を起こす創業者」という意味合いが強く、オリジナリティ溢れるビジネスアイデアやテクノロジーなどを用いて新たな市場を切り拓く人物のことです。優れた創造性やチャレンジ精神をもとに、社会課題の解決やビジネスの仕組みの変革などを行う人物として、世間から注目されています。

アントレプレナーには、アントレプレナーシップをはじめとする心構えのほか、事業を立ち上げて推進していくための基本的なスキルを備えていることが望ましいです。とはいえ、アントレプレナーになるために特別な資格の取得は不要であり、さまざまな方法でアントレプレナーを目指すことが可能です。

最後に、アントレプレナーを目指す際に役立つポイントを紹介します。一般的に、アントレプレナーは、利益や資金繰りばかりを追求しない姿勢を身につけることが望ましいです。もちろん、事業を推進する際は利益や資金繰りなども考慮すべきですが、これらにこだわりすぎるあまり保守的に事業を行ってしまうと、アントレプレナーの特徴である創造性やチャレンジ精神を発揮した事業の推進が行えなくなる可能性があります。

また、アントレプレナーは、失敗を恐れずに事業を立ち上げる姿勢を持つことも望ましいです。アントレプレナーを目指す人の中には、憧れで事業を立ち上げた後にリスクを取った行動ができなかったり、失敗を恐れて保守的な活動しかできなかったりする人も少なからずいます。

しかしながら、はっきりした成功のビジョンを持っていない中、憧れで事業を立ち上げて万が一失敗してしまったとしても、ここで得られた教訓を活用すれば、次回さらに良いチャレンジにつなげることが可能です。したがって、失敗を恐れることなく、積極的に起業の機会を探すことをおすすめします。

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