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アイデア出しを助けるテクニックと手法を紹介

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アイデア出しは才能?

アイデア出し

一般的に、アイデア出しの作業には、才能が求められるというイメージがあります。しかし、実際にアイデア出しを成功させるうえで求められるのは、才能ではなくテクニックだとされています。

そこで本記事では、アイデア出しを行う際に役立つ代表的なテクニック・手法を中心に紹介します。

アイデアとは

まずは、アイデアの定義を把握しておきましょう。アメリカ合衆国の実業家であるジェームス・W・ヤング氏は、著書『アイデアのつくり方』において、「アイデアとは、既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない」と述べています。

言い換えると、アイデア出しでは、まだ誰も見たことがないモノを創り出すのではなく、誰もが知っているモノをいかにして組み合わせるかが重視されています。また、アイデア出しのテクニックは、「物事の関連性を見つけ出すテクニック」と同義であるともいえます。

これらを整理すると、アイデア出しとは、「異なる物事同士の関連性をうまく見つけ出し、新しい組み合わせを創り出す作業」に他ならないといえます。

アイデア出しはテクニックで磨ける

一般論として、「アイデア出しの作業は、才能に依存する行為である」と考える意見もあります。しかし、実際にアイデア出しを行ってみると、才能は必要ではないことがわかります。

アイデアを出し、それを形にしていく際は、「アイデアをうまくまとめて、他者に伝える作業」が大切ですが、この作業は才能ではなくテクニックによって支えられています。

つまり、良いアイデアは、「アイデアの出し方、まとめ方、伝え方」というようなテクニック・手法を磨くことで生まれるのです。そこで次章以降は、アイデア出しを行ううえで役立つ代表的な手法を紹介します。

アイデア出しが一人でできる手法7選

本章では、一人でもできるアイデア出しの手法として、代表的な7種類をピックアップして紹介します。

①マンダラート

マンダラート

これは、9(3×3)マスの中心にメインテーマ(主題)を記し、それを取り囲むように配置される残りのマスにそのテーマから思い浮かぶ言葉(関連語句)を書き出していく手法です。

この手法では、連想からアイデアを引き出していくことが重視されており、「引き出された言葉に対して、新たなマンダラートを作成し、徐々にアイデアの裾野が広がっていく」点に特徴があります。

メインテーマの周囲に記した関連語句を中心としたシートを新たに作成し、さらにその周りに関連語句を記入していくことを繰り返すと、9マスのシートを合計9つ作成でき、メインテーマを含めた81個のアイデア出しを行えます。

②希望点列挙法、欠点列挙法

希望点列挙法とは、「こうすればより良くなる」というアイデアをなるべく多く書き出し、その中から現実味のあるものを抽出したうえで磨き上げていく手法です。「列挙されたアイデアを実現するためには、どうすればよいだろうか」という視点で、改善策を検討していきます。

そのうえで、「アイデアを実現するためには、具体的にどうすればよいだろうか」という視点で、改善策を検討していきます。

これに対して、欠点列挙法とは、「この点に不満を持っている」という欠点を列挙し、そこから問題解決につながるようなアイデアを抽出していくという手法であり、希望点列挙法と対極の関係にあります。

なお、いずれの手法でも、「テーマに沿って思いついたアイデアを積極的に出していく点」「そこから有用なものを抽出していく点」は共通しています。

③なぜなぜ分析

なぜなぜ分析

ある事象に対して複数回の「なぜ?」を問い、アイデアを掘り下げていく手法です。トヨタ自動車の元副社長によって編み出された手法で、ミスの根本原因を把握するための分析手法として知られています。

なぜなぜ分析では、事象が起きた原因だけでなく、さらにその原因に対しても「なぜ?」を繰り返し問い続けていきます。これにより、直接的な原因に加えて、その背後にある根本的な原因も抽出できるのです。

上図の「不良品を購入した顧客からクレームが届いた」という事象が起きたケースを想定すると、事象に対して「なぜ」を繰り返し、根本的な原因を突き詰めていくことで、「マニュアルのレイアウトを見直す」「作業に不慣れなスタッフでもヌケ・モレが起こらない重要項目をチェックリスト化する」などの対策を講じることにつなげられます。

④エクスカーション法

エクスカーション法

「あるモノの特徴」と「アイデア出しを行いたいテーマ」を掛け合わせることで、アイデアを連想していく手法です。テーマとは異なるモノの特徴を思い浮かべることで眠っていた情報を呼び覚まし、テーマと掛け合わせることで新たな組み合わせを構築できます。

エクスカーション法では、ひとまず「実際に使えるか使えないか」は考えず、とにかく思いつく限りアイデア出しを行うのがポイントです。つまり、アイデアを検討する余裕がないスピードでアイデアを書き出します。これにより、常識に囚われない自由なアイデア出しが行えるのです。

エクスカーション法は、「場所エクスカーション」「動物エクスカーション」「職業エクスカーション」の3種類に大別されます。ここからは、場所エクスカーションの基本的な方法を紹介します。

場所エクスカーションの方法

場所エクスカーションの方法

場所エクスカーションを行う際の基本的な手順は、以下のとおりです。

  1. アイデア出しを行うテーマを定める(例:新しいスマートフォンケース)
  2. 場所の中から、あるモノを選ぶ(例:富士山)
  3. あるモノを書き出す(例:日本一高い、世界から観光客が訪れるなど)
  4. 「あるモノの特徴」を「テーマの特徴」に置き換える(例:日本一高級、お土産にできるなど)
  5. アイデアの完成

⑤NM法

アイデア出しを行いたいテーマに関して、すでに世の中に存在する類比(異なる2つ以上の事象に間に存在する、何らかの同一性のこと)の例を探し出し、その特徴から発想していく手法です。類比を見つけるために、類比技法とも呼ばれています。

創造工学研究所の元所長で評論家の中山 正和氏によって考案された手法であり、中山氏の英語のイニシャルをとってNM法と名付けられました。

これまで、類比によって生まれたアイデアは数多いです。具体例を挙げると、マジックテープの構造は、「オナモミ」という植物の実がヒントとなり生まれたと考えられています

NM法には、以下の5種類が存在します。

  • NM-H型:画期的な発明をするために着想と発想を行う方法
  • NM-T型:雑多な情報からテーマに関するヒントを得る方法
  • NM-S型:過去・現在・未来という時系列の中でアイデアを実用化する方法
  • NM-A型:書き出したアイデアをグルーピングし、新たなアイデアを得る方法
  • NM-D型:仮説を立て、データで証明するようにアイデア出しを行う方法

ここからは、上記の中で最も一般的に使用されている「NM-H型」の方法を、以下の手順に沿って紹介します。

  1. テーマのキーワードを考える
  2. キーワードと似ているモノを見つける
  3. 似ているモノの特徴・背景を洗い出す
  4. テーマと似ているモノをつなげる
  5. アイデアのクオリティを高める

テーマのキーワードを考える

まずは、アイデア出しを行いたいテーマに関するキーワードを考えます。例えば、新しいスマートフォンケースのアイデア出しを行う場合、キーワードの主な候補は「守る」「持ち運ぶ」「取り付ける」「取り外す」などです。

キーワードと似ているモノを見つける

次に、すでに世の中に存在するキーワードに似ているモノ(類比)を見つけます。ここでは、連想ゲームのように「◯◯といえば何?」と自身に問いかけることで、類比を見つけやすくなります。また、類比は自然現象や生き物などから探すと見つかりやすく、テーマから離れるほどに画期的なアイデアが生まれやすいと考えられています。

具体例を挙げると、「守る」というキーワードを選んだ場合、「世の中にある、守るモノといえば何?」と問いかけることで「扇風機(暑さから身を守る)」「靴(歩く衝撃から足を守る)」などが類比として考えられます。

似ているモノの特徴・背景を洗い出す

その後、見つけた類比の特徴や背景を洗い出すことで、アイデアを広げていきます。例えば、「靴は、足を覆い包むことで衝撃から守っている」といった具合です。

テーマと似ているモノをつなげる

続いて、「類比するモノの仕組みは、アイデア出しを行いたいテーマに対してどのように役立つか」を考えます。例えば、靴のようにクッション性に優れた素材で覆えば、スマートフォンへの衝撃をより防げるようになるかもしれません。

アイデアのクオリティを高める

最後に、アイデアを具体的・現実的にするために、煮詰めていくプロセスです。ここでは、アイデア同士を組み合わせ、予想外のアイデアを生み出すことも図っていきます。

例えば、「扇風機」と「靴」を組み合わせると、「冷房ファンが付いた、耐衝撃機能のあるスマートフォンケース」といったアイデアが思い浮かびます。このようにして、新たなアイデアを生み出してみるのも良いでしょう。

⑥オズボーンのチェックリスト

これは、アイデアが思い浮かばないときに発想する切り口として利用できるチェックリストです。アメリカの実業家であるアレックス・F・オズボーン氏が考案したことから、その名称が付けられました。

全部で9つの項目があり、アイデアのテーマ・対象を決めたうえで、チェックリストの各項目についてアイデアを出していきます。9項目の内訳は、以下のとおりです。

  • 転用(例:他に使い道はないか?他に活躍できる分野・領域はないか?)
  • 応用(例:他の業種・分野からアイデアを借りられないか?)
  • 変更(例:形・機能を変えてみたらどうか?)
  • 拡大(例:時間・頻度・高さ・長さ・強さなどを拡大してみたらどうか?)
  • 縮小(例:携帯化できるか?短くできるか?軽くできるか?省略できるか?)
  • 代用(例:他のもので代用できないか?)
  • 置換(例:要素・パターン・配列・ペース・スケジュールなどを変えられないか?)
  • 逆転(例:マイナスをプラスにできないか?役割を逆にできないか?)
  • 結合(例:組み合わせてみたらどうか? 目的や考えを結合できないか? )

上記の9項目の視点をもとに、仮説を立てていきます。「応用」の項目を例に挙げると、これまで「コウモリの超音波から自動車のセンシング技術を発案する」「蓮の葉の撥水性からレインコートを編み出す」などのアイデア出しが行われてきました。

⑦逆張り思考法

自身の中で常識となっている物事について、あえて逆の思考・行動を選択した場合にどうなるかをイメージする手法です。「一般的な思考で行き詰まりを感じているとき」「固定観念を排して、画期的なアイデアを出したいとき」などに効果を発揮します。

逆張り思考法では、まず「固定観念や先入観」を書き出します。例えば、新しい鍋料理店を開くケースを想定すると、主な固定概念は「鍋料理は複数人で食べるもので、1人では注文しない」です。

次にその「固定観念や先入観」を逆張りします。自分の常識を取り払い、できるだけ自由で、物事の根源に迫りながら、逆張りをすると良いでしょう。上記のケースでの逆張りの例は、「1人でも鍋を食べたっていい」です。

最後に逆張りを具体化します。ここでは、多様な発想・珍しさ・新しさを重視し、「ありえない!」とついつい思ってしまう心を一度封印してください。上記のケースでいうと、「カウンター席のみの鍋料理店」が具体化の例です。

逆張り思考法のみで必ずしも有意義なアイデア出しを行えるとは限りませんが、「頭を休める」「いつもと違う頭の使い方をする」という意味で、アイデアを生み出す奥の手として活用を検討してみるのも良いでしょう。

アイデア出しを複数で行う手法4選

アイデア出しを複数で行う手法4選

次に、複数人でアイデア出しを行う際に役立つ手法として、代表的な4種類をピックアップして紹介します。

①ブレインストーミング

1950年頃にアメリカで考案された手法で、一般的に10人以下のグループあるいは個人でアイデア出しを行う際に用います。1人でも行える手法ですが、より多くのアイデアを出すためには、複数人で行うことが望ましいです。

ブレインストーミングの実施にあたっては、いくつかのルールが存在しますが、中でも重要なのは「自由な発言を妨げないこと」です。ブレインストーミングの主な目的は、とにかく多くのアイデアを出すことです。なので、参加者それぞれが自由な発言を行うことが望ましく、その発言に対して他の参加者が批判・否定・判断・決断をしてはいけません。

なお、ブレインストーミングは、アイデアを網羅的に抽出できることから、後述するKJ法(多種多様なアイデアを効率的に整理できる手法)と非常に相性が良く、これら2つの手法をセットで用いるケースも多く見られます。

②KJ法

アイデア出しを行い、そこで得られた情報を効率的に整理するために用いられる手法です。1967年、文化人類学者の川喜田 二郎氏が自著で紹介したことをきっかけに、知られるようになりました。

KJ法では、1枚1枚のカード(付箋)に思いつくままにアイデアを書き出していき、それを並べ替えたり、グループ化したりすることで、情報を整理していきます。

KJ法もブレインストーミングと同様に1人でもできますが、アイデアに偏りが出る可能性があるため、複数人で行うことが望ましいと考えられています。

なお、KJ法について詳しく知りたい方は、以下の記事で解説しています。併せてお読みいただくことで、KJ法およびその前段階で活用できる「ブレインストーミング」の理解も深められるため、有意義なアイデア出しを行いたい方は、ぜひご確認ください。

KJ法とは?メリットやデメリット、やり方・手順を解説

③シックスハット法

参加者が6種類の視点の中から担う役割を選び、議論することでアイデア出しを行う手法です。水平思考(問題解決のために既成の理論や概念に囚われずアイデアを生み出す方法)を提唱したエドワード・デ・ボノ氏により考案されました。

この手法では、6種類の役割が設定されていることから、すべての視点をもとに議論を行うためには最低でも6人の参加者を確保する必要があります。

それぞれの参加者が担う視点(役割)は、以下の6つです。

  • 客観的・中立的な視点
  • 消極的・批判的な視点
  • 積極的・希望的な視点
  • 革新的・創造的な視点
  • 感情的・直感的な視点
  • 分析的・俯瞰的な視点

シックスハットという名称から、本来はそれぞれの役割を担う参加者が異なる色の帽子を被って行うものです。とはいえ、実際にはそこまで用意する必要はなく、カード・ネームプレートなどで「自分が立っている視点」を周囲に明示できれば、議論をスムーズに進められます。

このように、各参加者には事前に役割が与えられ、自分が本来持っているものとは異なる視点で議論に参加する場合もあることから、これまで気がつかなかったアイデアが生まれる可能性があります。

④アイデアしりとり

おもちゃクリエーター・アイデア発想ファシリテーターとして知られる高橋 晋平氏によって考案されたもので、単語の語尾から始まる言葉をつなげていくことでアイデア出しを行う手法です。複数人のグループで、「アイデア出しを行いたいテーマ」に関する言葉のみでしりとりをします。

ゲーム感覚で楽しめて脳の活性化につながるうえに、「勝ち負け」があるため他者よりも面白い言葉を投げかけたいという意識が働くことから、アイデア出しを行ううえで良い効果が得られる可能性があります。

ここまでアイデア出しのテクニックと手法を紹介してきましたが、「いいアイデア」とはどのようなものでしょうか?以下記事でスタートアップ向けに解説しているの、さらに深めたい方はぜひご一読ください。

いいアイデアとは?見つけ方と併せてスタートアップ向けに解説

まとめ

本記事では、アイデア出しを助けるテクニックや手法の中から、代表的なものを11種類ピックアップして紹介しました。「一人でできるもの」と「複数人で行うもの」の両方を紹介しましたので、状況に応じて活用を検討しながら、有意義なアイデア出しを行ってください。

参考:ジェームス W.ヤング・竹内 均 (解説)・今井 茂雄 (翻訳)「アイデアのつくり方」CCCメディアハウス、1988年

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