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上場(IPO)とは?条件や方法、メリット・デメリットを分かりやすく解説

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上場(IPO)とは?

上場(IPO)とは?

上場(IPO:Initial Public Offering)とは、株式会社が自社の株式を、証券取引所(市場)を通じて誰でも自由に売買できるようにすることです。別名、株式公開とも呼ばれています。

もともと株式会社では、上場しているかどうかに関わらず、株式を発行しています。このうち、上場していない企業は「未上場企業」と呼ばれており、上場に関する審査を通過することで「上場企業」になれるという仕組みです。

なお、未上場企業と似た特徴を持つ企業に「非公開会社」がありますが、こちらは「株式譲渡制限を設けている企業」のことであり、すべての未上場企業が非公開会社に該当するとは限らない点に注意しましょう。

また、日本国内の証券取引所としては、東京証券取引所(東証)・名古屋証券取引所(名証)・札幌証券取引所(札証)・福岡証券取引所(福証)が挙げられます。

※大阪取引所(旧:大阪証券取引所)は、かつて東京証券取引所・名古屋証券取引所と並んで「三大取引所」と称されていましたが、現在株式の現物取引をしていません。

上場する条件とは?

上場する条件とは?

上場するには会社の株式を証券取引所(市場)に登録しなければならず、これには厳しい条件を満たす必要があります。

なぜ上場には厳しい条件が必要なのでしょう?仮に、株式の上場に厳しい条件が設けられていなかった場合、すぐに倒産してしまったり、業績や財務内容に虚偽があったりするような企業も上場してしまうケースが想定されます。

そうすると、投資家が安心して株式を売買できなくなってしまう恐れがあることから、証券取引所によって厳しい基準・審査が設けられているのです。

上場するための条件は、株式市場の種類によって異なります。代表的な株式市場における上場の条件は、下表のとおりです。

項目(抜粋) 東証一部 東証二部 マザーズ JASDAQ
株主数 800人以上 400人以上 150人以上 400人以上
流通株式数 2万単位以上 2,000单位以上 1,000单位以上 2,000単位以上
流通株式時価総額 100億円以上 10億円以上 5億円以上 10億円以上
流通株式数
(上場株券等の比率)
35%以上 25%以上 25%以上 25%以上
時価総額 250億円以上

上記のほか、売上や利益の額・株主数・流通時価総額といった定量的な要件がない株式市場として、「TOKYO PRO Market」があります。

TOKYO PRO Marketにおいて上場するためには、株価や業況などの形式要件ではなく、実質基準要件(上場適格性要件)を満たす必要があります。

具体的には、「市場の評価を害さないか」「公正かつ忠実な事業か」「コーポレート・ガバナンス体制は整っているか」「企業情報や適切な情報開示ができているか」「反社会的勢力はきちんと排除されているか」という5つの要件が設けられており、これらの基準を満たしているかどうかが審査されます。

出典:日本取引所グループ「上場審査基準」

上場のメリット6選

上場のメリット6選

上場することで生じる主なメリットは、以下の6つです。

  1. 資金調達力の向上
  2. 社会的信用力の向上
  3. 従業員の士気向上
  4. 人材獲得力の向上
  5. 管理体制・ガバナンスの強化による透明性の向上
  6. 創業者利益の確保

それぞれのメリットを順番に詳しく紹介します。

①資金調達力の向上

上場すると、さまざま形で株式市場から資金調達を行えるようになります。これにより、自己資本が充実することで財務体質が強化されれば、新設備の導入・優秀な従業員の獲得・新規事業の立ち上げなどを通じて企業の成長スピードの向上を目指すことが可能です。

②社会的信用力の向上

日本企業は400万社ほど存在し、このうち上場企業は3,800社程度と言われています。つまり、上場はこの約0.1%に選ばれることに他ならず、会社の社会的信用力を向上させられる可能性があります。これに伴い、金融機関の信頼性も向上すれば、結果的に資金調達力の向上にもつながります。

③従業員の士気向上

上場により企業の知名度や社会的信用力が向上すれば、従業員に「日本企業のうち0.1%しかない上場企業で働いている身」という意識を与えられる可能性があります。また、上場により資金調達力が向上し、企業の成長が促進されれば、従業員に大きなやりがいを与えられる可能性があります。

さらに、上場により企業の社会的信用力が向上すれば、そこで働く従業員の信用力も向上するのが一般的です。これにより、住宅ローンやクレジットカードなどの契約を結びやすくなる可能性もあります。そのほか、企業の成長に伴い、売上や利益が増加すれば、従業員の給料やボーナスの増額につなげられます。こうした理由から、上場には、従業員の士気を向上させる効果が期待できるのです。

④人材獲得力の向上

上場すると、株式市況欄や新聞・雑誌・Webコンテンツなどによる報道を通じて、企業の知名度が向上する可能性があります。また、上場は信用力の向上にもつながることから、採用活動において優秀な人材を獲得しやすくなります。

⑤管理体制・ガバナンスの強化による透明性の向上

上場を図る企業に求められる準備の1つに、上場企業としてふさわしい内部管理体制の構築が挙げられます。これにより、組織が属人的経営から組織的運営に転換されることで、企業の急成長にも耐えられる組織基盤の構築につながります。

また、内部管理体制の構築は透明性の向上にもつながることから、監査法人からの信用獲得も期待できます。

⑥創業者利益の確保

創業者からすると、上場に伴い株式を売却することで、投下した資本を回収し創業者利益を確保できます。また、株式が証券取引所において流通し、公正な株価が形成されることで、株式の換金性が増して、創業者をはじめとする株主の財産形成につながります。

「〇〇スタートアップが上場」というようなニュースや情報を目にする機会が増えています。その「スタートアップ」について以下記事で解説しており、なぜ彼らが上場を目指すのか知っておくと、上場することのメリットにどれほどの価値があるかがわかるようになります。ぜひご一読ください。

スタートアップとは?ベンチャーとの違いを解説【図解あり】

上場のデメリット5選

上場のデメリット5選

上場することで生じる主なデメリットは、以下の5つです。

  1. 敵対的買収をされるリスクが生じる
  2. 上場の維持コストが発生
  3. 情報を開示する必要がある
  4. 情報開示体制が必要になる
  5. 株主対応が必要になる

それぞれのデメリットを順番に詳しく紹介します。

①敵対的買収をされるリスクが生じる

上場すると、株式市場で誰でも自由に自社の株式を売買できるようになるため、敵対的買収のリスクが生じます。そのため、経営の乗っ取りを目的とする株式の買収に対してどのような対策を講じるのか、上場前の段階から検討しておくと良いでしょう。

日本では敵対的買収の件数は少なく、目立った事例は見られないものの、最近ではグローバル化が進んでおり、将来的に敵対的買収が増加する可能性はゼロではありません。とりわけ高い成長を見込む企業では、早めに買収防衛対策を講じておくとより良いです。

②上場の維持コストが発生

上場後は、以下のような費用を継続的に支払う必要があります。

費用の種類(費用の支払先) 金額の目安
年間上場料(証券取引所) 50万円〜450万円程度
監査報酬(監査法人) 800万円~2,000万円程度
株式事務代行手数料
(株主名簿管理人である信託銀行)
300万円〜400万円程度

そのほか、上場を維持するうえで、適時開示体制を確立するためのコストや、株主総会の運営やIRに関するコストなども継続的に発生します。

③情報を開示する必要がある

上場すると、これまで対外的に公開する必要のなかった情報(企業の体制・費用など)を公開する義務(ディスクロージャー)を負うため、ライバル企業に自社の状況を知られることになります。

④情報開示体制が必要になる

上場企業では、有価証券報告書・四半期報告書を発行する義務を負うとともに、四半期ごとに決算短信を発表するなど、投資家に対して情報を適時かつ適切に公表する「適時開示」の実施が求められます。

また、こうした適時開示を行うには、その体制を構築し確立する必要があることから、人件費・労力・対応できる従業員の人材育成コストなどが発生します。

⑤株主対応が必要になる

上場企業では、経営者の独断で事業を運営することはできず、不特定多数の株主の思いを汲み取る必要があります。具体的には、会社法の定めにより、株主総会を1年に1度開催することが義務付けられており、会場費のほか、株主の招集通知および同封する事業報告書・計算書類等の印刷費、郵送費、人件費などのコストが発生します。

また、今後も継続して投資してもらうためには株主向けのIR活動を行うことが望ましく、そのために人材が必要になったり、場合によってはIRコンサルティング会社に支払う報酬費用などが発生します。

さらに、昨今ではアクティビスト(もの言う株主)の存在により、コーポレートガバナンスへの対応が厳しく追及されるケースが増加しています。以前と比べて、取締役会の機能発揮、ダイバーシティの確保、サステナビリティ(持続可能性)への対応など、株主対応に関して検討が求められる事項は格段に増えている状況です。

上場の方法

上場の方法

上場は、以下の流れに沿って行うケースが一般的です。

  • 上場のスケジュール把握と準備
  • 形式要件をクリアする
  • 実質基準要件をクリアする

それぞれの方法について順番に紹介します。

上場のスケジュール把握と準備

まずは、上場に向けたスケジュールを把握し、これに合わせて準備を開始します。上場を図る際、以下のようなスケジュールで手続きを進めるのが一般的です。

  1. 上場の検討
  2. 上場のプロジェクトチームの設置
  3. 社内体制の強化
  4. 監査法人・主幹事証券会社の選定および依頼
  5. IRの作成
  6. 事前審査・最終審査
  7. 証券取引所・日本証券業協会への上場申請
  8. 上場

上記のスケジュールおよびこれに伴う準備を簡単に説明すると、はじめに上場の実施を検討した後、プロジェクトチームを設置します。このときには、プロジェクトリーダーの決定・チームメンバーの補充のほか、事業計画の策定や見直しなどを通じて上場の準備を行うことが望ましいです。

次に、上場にふさわしい企業となるよう、社内体制を強化します。具体的には、組織・業務フローの構築および、会計処理方針・原価計算制度・在庫管理システム・予算管理・月次決算制度・内部監査体制の確立、社内規程の整備などを行うのが一般的です。

続いて、監査法人・主幹事証券会社の選定および依頼を行った後、株主・投資家に企業活動を深く理解してもらい良好な関係を築くためにIR活動を行うという流れです。

ここまでの準備が順調に進んでいると判断されると、主幹事証券会社によって事前審査が行われます。事前審査では、後に紹介する「形式要件」と「実質基準要件」を踏まえて、上場準備の進捗の把握・改善事項の有無と改善対応・スケジュールの確認などが行われるほか、最終審査までに講じるべき改善事項が指摘される場合もあります。

上記の事前審査が終了し、直前期(上場期の1期前)の決算が確定した時点で、主幹事証券会社から業績の動向や当期業績に問題がないと判断されると、最終審査に進みます。最終審査では、上場企業としての体制整備や業績などに問題がないか確認されるほか、経営者・監査役・会計士との面談なども行われます。

そして、最終審査まで終了し、主幹事証券会社内部の審査が行われ、上場の推薦を行う決定が下されると、証券取引所および日本証券業協会に対する上場申請に進みます。これにより、取引所審査が行われ、合否判断によって上場が承認・決定されます。

なお、上場の準備を行う際は、上場要件の一部である「監査法人による上場直前2期間の会計監査」と「経営管理体制の運用」を満たすためにかかる期間を把握しておくと良いです。

1つ目の会計監査については、上場直前の2期間分が求められるうえに、遡及監査(過去に遡って監査を行うこと)が認められていません。さらに、最近では人手不足などにより、大手監査法人を中心に監査契約を締結してもらいにくい問題が生じていることから、監査を受嘱してもらうためにも早期のタイミングから上場に向けた準備に取り組むと良いでしょう。

2つ目の経営管理体制の運用については、上場会社としてふさわしい管理体制が構築され、その体制が最低でも1年間運用されていることが求められます。

これら2つの要件を満たすためにかかる期間に加えて、取引所審査にかかる期間も考慮すると、上場の実現には最低でも3年前後の準備期間が必要です。

形式要件をクリアする

取引所審査では、はじめに形式要件をクリアしているか確認されます。形式要件とは、株主数・時価総額・利益の額など、上場申請を行う企業に求められる要件のことです。本記事の大項目「上場する条件とは?」に掲載した表が形式要件にあたります。

実質基準要件をクリアする

上場する際は、形式要件だけでなく実質基準要件もクリアする必要があります。実質基準要件とは、上場申請を行った企業が上場にふさわしい内容を備えているかどうか審査を行うための要件です。

実質基準要件は形式要件のように数値で測れるものではなく、あくまでも質に関する部分に関して調べることに重点が置かれています。具体的にいうと、提出された上場申請書類をもとに、証券取引所によって質問や実地調査などが行われます。例えば、経営者に対して「経営理念」や「上場した際の株主への対応方針(IR活動の取り組み方針など)」のヒアリングが行われたり、本社や自社工場において事業内容・実態の確認が行われたりします。

まとめ

上場(IPO)とは、株式会社が自社の株式を、証券取引所(市場)を通じて誰でも自由に売買できるようにすることです。上場するためには会社の株式を証券取引所に登録しなければならず、そのためには厳しい条件を満たす必要があります。なお、上場するための条件は、株式市場の種類によって異なる点を把握しておきましょう。

上場すると、資金調達力・社会的信用力・従業員の士気が向上するなどのメリットが期待できます。その一方で、敵対的買収のリスクが生じたり、上場の維持コストが発生したりする点はデメリットとして考えられています。

上場を図る場合、まずは手続きのスケジュールを把握し、これに合わせて準備を済ませたうえで、形式要件および実質基準要件のクリアを目指すことが望ましいです。

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