東大IPC

KJ法とは?メリットやデメリット、やり方・手順を解説

  • フレームワーク

KJ法とは?

KJ法とは?

KJ法とは、断片的な情報・アイデアを効率的に整理する目的で用いられる手法です。一般的に、KJ法では、カード状の紙(付箋)に1つ1つの情報を記し、そのカードを並べ変えたりグルーピング(グループ化)したりすることで、情報を整理していきます。

KJ法の考え方は、1967年、文化人類学者である川喜田 二郎氏が著書『発想法』において、「効果的な研究・研修方法である」と紹介したことで広く知られるようになりました。なお、KJ法の名称は、川喜田 二郎氏のイニシャルに由来しています。

もともとKJ法は、文化人類学のフィールドワークによって得た膨大な情報を効率的に整理する目的で生み出されました。しかし、実際に使用される中で、本質的問題の特定や新たなアイデアの創出など、発想法としても優れた効果を持つ手法であることがわかっています。

KJ法の前に行うブレインストーミングとは?

KJ法を用いる際は、前提として、整理の対象となる情報・アイデアを洗い出しておかなければなりません。このときに使われる代表的な手法がブレインストーミングです。

ブレインストーミングとは、1950年頃にアメリカで考案されたアイデア発想法です。情報・アイデアを網羅的に抽出できることから、多種多様な情報・データを効率良く整理できるKJ法と非常に相性が良いと考えられています。そのため、KJ法とブレインストーミングはセットで用いられることが多いです。

ブレインストーミングのやり方と進め方

ブレインストーミングは、10人以下のグループ、あるいは個人で実施するのが原則です。まずは解決すべき問題(テーマ)を設定したうえで、メンバーを集めます。併せて、ホワイトボード・カード(付箋)・筆記用具(ペン)などの備品もそろえておきます。

ブレインストーミングの参加メンバーには、なるべく立場・性格の異なる人を集めることが望ましいです。なぜなら、問題解決を目指すうえで、多角的な意見を集めることが効果的であるためです。その後は、以下の内容を決めましょう。

  • ファシリテーター(進行役):スムーズな進行および、ルール(詳しくは後述の「成功するための4つのルール」にて解説)の順守をサポートする役割
  • 制限時間:全体で20〜30分程度が適切

以上の準備が整ったら、制限時間を意識しながらブレインストーミングを進めていきます。ブレインストーミングは、下記の2つのプロセスに分けて行うのが一般的です。

  • アイデアを発想・量産する作業(5~10分程度)
  • 量産してきたアイデアをまとめる作業(15〜20分程度)

※上記2つのプロセスの詳細は、後述する「KJ法のやり方・手順」の章の「ステップ①・②」で解説しています。

ブレインストーミングに慣れていない人の場合、制限時間を意識せずに取り組んでしまいやすいですが、多くの時間をかけると各メンバーの集中力が切れてしまうおそれがあります。

十分な効果を期待するためにも、ブレインストーミングは適切な制限時間のもとで行うことを心がけましょう。もしも制限時間を延ばすならば、途中で休憩を行うことが大切です。

成功するための4つのルール

ブレインストーミングの成功につなげるためには、参加するメンバーそれぞれが以下の4つのルールを守ることが大切です。

自由に発言する

ブレインストーミングの目的は、とにかく多くのアイデアを出すことです。そのため、発言前から「他にもっと良いアイデアがあるかもしれない」「このアイデアを出して他の人から悪く思われないか心配」などと悩まずに、活発に発言することが大切です。

幅広い角度からアイデアを出し合うことで、これまで考え付かなかったアイデアが生まれることもあります。

アイデアを批判しない、判断や決断もしない

前述した「自由な発言」を各メンバーに促すためには、アイデアの批判および判断・決断を控えることも大切だといえます。

なぜなら、アイデアの批判・判断・決断は、自由な発想が出せない雰囲気をつくったり、参加者を萎縮させたりすることにつながるためです。ブレインストーミングの成功を目指す際は、いかなる意見でも歓迎する空気を作ることが望ましいです。

アイデアを組み合わせる

アイデアがある程度出てきた段階で、既存のアイデアと組み合わせて問題解決を図れないか検討することが大切です。

既存のアイデアに関連付けて新たなアイデアを発想したり、アイデア同士を組み合わせたりすることで、実現不可能と考えられていたアイデアが発展し、実現につながる可能性があります。

質より量を重視する

前述した「アイデアの組み合わせ」を行う際は、多くのアイデアを出しておくことが望ましいです。そのため、アイデアの質(例:実現可能性、筋の良さ)ではなく量を意識して、積極的に発言しましょう。

以上、KJ法の前に行うブレインストーミングの概要および、具体的な方法や実施時のルールを紹介しました。ここまでの情報を押さえてブレインストーミングを行い、KJ法の実施につなげましょう。

ここからは、KJ法のメリットやデメリット、手順、注意点について解説します。

KJ法のメリット

KJ法のメリット

本章では、KJ法を実施するメリットとして代表的なものを、6つピックアップし解説します。

アイデアを可視化できる

頭の中にあるアイデア・意見を整理し、目に見える形で言語化できます。これにより、メンバー間で情報を共有しやすくなるうえに、各メンバーの中でアイデアのイメージが湧きやすくなる点もメリットです。

論理的に情報整理ができる

KJ法は、手順(詳しくは後述の「KJ法のやり方・手順」の章で解説)そのものが論理的視点にもとづいて考案されているため、論理的に情報を整理できます。

少数意見を活用することができる

もともと共同作業やグループワークなどにおいて、少数意見は多数意見によって抑圧されてしまうケースが多いです。この傾向は、グループやチームの規模・作業規模が拡大するほどに顕著です。

一見すると、多数意見のみに焦点を絞って話し合いを行うことは効率的であるように感じられますが、必ずしもそうとは言い切れません。なぜなら、共同作業やグループワークなどの早期段階で除外された少数意見の中に、本質的問題を特定したり新たなアイデアを創出したりするためのヒントが隠れていることがあるためです。

KJ法では、提案時に共感者の少なかった少数意見についても、その他の意見と同様に1枚のカードとして取り扱います。このようにして残された少数意見は、その後のステップにおいて、多くの情報やヒントをもたらしてくれる可能性があるのです。

以上のことから、参加メンバー全員に少数意見の重要性を正しく理解させたうえでKJ法を実施すれば、少数意見を最大限に活用できます。

課題や問題点を洗い出せる

KJ法を通じて、論理的に情報を整理し、参加メンバーから出たアイデア・意見を要素別に分けることで、課題や問題点などをわかりやすく洗い出せます。

ここで洗い出した課題・問題点については、図解化や文章化のステップ(詳しくは「KJ法のやり方・手順」の章で解説)を踏むことで、本質的問題の特定・新たなアイデアの創出など、より踏み込んだ分析・発見に発展させることが可能です。

情報を共有しやすい

KJ法は、複数人での作業をスムーズに進行するための潤滑剤としての役割も果たします。

もともとKJ法に対しては、「脳内で行える作業をわざわざ紙を用いて行うために非効率的である」といった否定的意見も存在します。しかし、KJ法において非効率性が問題となるのは、あくまでも個人で完結する業務を対象とする場合に限ります。

複数人で共同作業やグループワークを行う場合、メンバーの1人がどれほど優れた問題解決策を思い浮かべていたとしても、他のメンバーにそのイメージを正しく共有できていないと、発案者が目指していたゴールには辿り着けず、想定どおりの成果を得られません。

そのため、複数人での作業を成功させるには、情報共有や意識合わせなどのプロセスが非常に大切です。とはいえ、これらのプロセスに多くの時間を割いてしまえば、効率が悪くなりかねません。

しかし、KJ法では、そのプロセス内でアウトプットを視覚的にまとめられ、情報共有や意識合わせなどを無駄なく自然に行えるため、流れが滞ることなく複数人での作業を進められます。

気軽に実施できる

最大のメリットは、気軽さにあると考えられています。KJ法では特別な環境・道具を必要とせず、紙とペンさえ準備できれば人・時間・場所を選ばずに実施可能です。このことから、汎用性と自由度の高い発想法だといえます。

KJ法のデメリット、問題点

さまざまなメリットを紹介しましたが、KJ法にはデメリットも少なからず存在します。ここでは、代表的なメリットを2つピックアップして解説します。

準備やアイデア整理に手間がかかる

KJ法では、カード(付箋)・場所の準備や参加者集めに加えて、参加メンバーから出たアイデア・意見を書き出してまとめる作業が求められます。作業自体の難易度は非常に低いものの、これらの作業には多くの手間・時間がかかるため注意が必要です。

なお、多くのアイデアを得るためには、さまざまなコミュニティから参加者を集めることが望ましいですが、このケースでは参加者を集めるためにより多くの手間がかかりやすいです。

参加者によってアイデアが変わる

KJ法およびブレインストーミングを通じて抽出されるアイデアは、グループや参加者1人1人の特性に大きく依存します。そのため、参加者の構成次第で、マイノリティ(社会的少数派)の発言力が低下したり、アイデア・意見が偏ったりするおそれがあるのです。

こうした状況を防ぐには、KJ法およびブレインストーミングを実施する前に、参加者の力関係を調整し、1人1人の発想の柔軟性を高めておくことが望ましいです。

これにより、すべての参加者が、周囲の顔色を伺うことなく、自身の価値観や感覚を重視した発言を行えるようになります。また、既出の情報や意見による先入観・固定概念などに囚われることなく、各参加者が多角的かつ俯瞰的な分析・提案を行えるようになるのです。

KJ法のやり方・手順

本章では、KJ法を用いる際のやり方・手順の一例を、以下の4ステップに分けて取り上げます。

  1. アイデアを書き出す
  2. アイデアをグルーピング
  3. 関係性を図解化
  4. 文章化(叙述化)

それぞれのステップを順番に解説します。

ステップ①アイデアを書き出す

ステップ①アイデアを書き出す

まずは、1枚のカード(付箋)に1つのアイデアを書き出す形で、ラベルをなるべく多く作ります。

アイデアを書き出したラベルは、大きな用紙や机の上など広いスペースに並べていきます。なお、並べる順番・位置を気にする必要はありません。

アイデアを発想する際は、前述したブレインストーミングの手法(10人以下のグループあるいは個人でアイデアを発想・量産する手法)を用いることが望ましいです。

ステップ②アイデアをグルーピング

ステップ②アイデアをグルーピング

次に、前ステップで書き出したラベルをまとめるためにグルーピングし、タイトルを付けていきます。ここでは、以下の順番で作業を行うのが一般的です。

  1. 小グループの作成
  2. 大グループの作成

この順番で行う理由は、大グループを作成した後で小さくカテゴライズすると、アイデアを適切に解釈できなくなるおそれがあるためです。それぞれのプロセスを順番に解説します。

小グループの作成

まずは、内容が類似しているラベル同士をグルーピングします。2〜3つほどのラベルで1つの「小グループ」を作ったら、カード(付箋)を用いて、そのグループにタイトルを付けます。

このときには、グループを構成するラベルと異なる色のカードを用いる、もしくはペンの色を変えることで、タイトルとラベルを区別しやすくなります。

大グループの作成

10以上の小グループを作った場合、関連性の高いグループ同士でさらにまとめて「大グループ」を作り、新たにタイトルを付けます。

ステップ③関係性を図解化

ステップ③関係性を図解化

続いて、グループ同士の関係性をわかりやすくするために、矢印・記号を用いて図解化します。KJ法の目的は「情報を整理したうえで、関係性を見出しながら、理論を構築したり、新たなアイデアを創出したりすること」であるため、図解化は重要なステップとして位置付けられています。

具体的な手順としては、まずグルーピングされたラベルを、関連性(例:因果関係、類似、対立など)の高いと思われるグループに近づけることで、配置し直します。その後、グルーピングされたラベルを広げて、相関関係を図解化します。このときに用いられるフレームワークの一例は、以下のとおりです。

  • ツリー型:論理構造を表す際
  • サテライト型:相互依存的な関係を表す
  • フロー型:時系列や因果関係を表す
  • サイクル型:循環的な流れを表す

なお、図解化する際は、大きなグループから順番に行っていくと、関係性をまとめやすいです。また、以下のような矢印を使い分けると、見た目でわかりやすくなります。

  • 因果関係:→
  • 類似:ー
  • 対立:←→
  • 関係性の強さ(弱い・強い):→・➡️、←→・⇠⇢

ステップ④文章化(叙述化)

最後に、図解化したラベルを参考に文章化します。これにより、新たなアイデアの創出につながります。文章化する際は、重要度が高いと思われる情報・アイデアから順番に行うと、スムーズに進みやすいです。

なお、文章化のプロセスでは、各メンバーが無意識に補足を付け足すことがあります。この補足が新たな発見につながることもあるため、複数のチームに分けて文章化を行うと、これまでになかったアイデアが生まれる可能性が高まります。

KJ法を実施する際の注意点

最後に、KJ法をスムーズに進めるうえで押さえておきたい注意点の代表例として、3つをピックアップし解説します。

参加者全員の同意を得ながら進める

グルーピングや図解化などのプロセスを行う際、参加者のいずれか1人の考えのみで進めてしまうと、先入観による偏りが生じてしまいかねません。

これらのプロセスでは、できる限り多様な意見を取り入れつつ、参加者全員が納得できるまで議論を行うことで、より高精度な情報整理につなげられます。

無理やりグループ化しない

グルーピングの際、いかなるグループにも所属しないような「独立したアイデア」がある場合があります。このときは、無理にグルーピングせずに、ラベルとしてそのまま残しておくことが大切です。

いかなるグループにも属さないアイデアは、斬新なアイデアである可能性があります。斬新なアイデアから新たな発見が生まれることもあるため、価値のあるアイデアとして独立させておくことが望ましいです。

文章化まで行う

グルーピングや図解化のプロセスを済ませることで、何となく情報を整理できたような気になってしまうことがありますが、ここで終わらせてしまうと新たな価値を生み出せません。

図解化することで関係性を見極めたうえで、文章化によりアウトプットすることで、はじめて新たなアイデアや解決策の創出につなげられます。

ここまでKJ法について解説してきましたが、KJ法以外にもアイデア出しを助けるテクニックや手法があります。それらについて以下記事で解説しておりますので、違う方法を探りたい方はぜひご一読ください。

アイデア出しを助けるテクニックと手法を紹介

まとめ

KJ法とは、断片的な情報・アイデアを効率的に整理する目的で用いられる手法です。カード状の紙に個々の情報を記し、そのカードを並べ変えたりグループ化したりすることで、情報の整理を行います。

KJ法を用いることで、以下のようなメリットが期待できます。

  • アイデアを可視化できる
  • 論理的に情報整理ができる
  • 少数意見を活用することができる
  • 課題や問題点を洗い出せる
  • 情報を共有しやすい
  • 気軽に実施できる

その一方で、「準備やアイデア整理に手間がかかる」「参加者によってアイデアが変わる」などのデメリットが発生し問題となることもあるため、実施は慎重に検討しましょう。

一般的に、KJ法を用いる際は、以下の手順で進めていきます。

  1. アイデアを書き出す
  2. アイデアをグルーピング
  3. 関係性を図解化
  4. 文章化(叙述化)

これらのプロセスをスムーズに進めていくためには、以下のポイントを実践することが望ましいです。

  • 参加者全員の同意を得ながら進める
  • 無理やりグループ化しない
  • 文章化まで行う

上記のポイントを把握しておき、アイデアをまとめたいときや問題の本質を発見したいときなどに、KJ法の採用を検討しましょう。

DEEPTECH DIVE

本記事を執筆している東京大学協創プラットフォーム開発株式会社(東大IPC)は、東京大学の100%出資の下、投資、起業支援、キャリアパス支援の3つの活動を通じ、東京大学周辺のイノベーションエコシステム拡大を担う会社です。投資事業においては総額500億円規模のファンドを運営し、ディープテック系スタートアップを中心に約40社へ投資を行っています。

キャリアパス支援では創業期~成熟期まで、大学関連のテクノロジーシーズを持つスタートアップへの転職や副業に関心のある方とのマッチングを支援しており、独自のマッチングプラットフォーム「DEEPTECH DIVEを運営しています。

DEEPTECH DIVEにご登録頂くと、東大IPC支援先スタートアップの求人募集情報を閲覧でき、またスタートアップから魅力的なオファーを受け取ることができます。ご登録は無料で、簡単なプロフィールを入力頂くことでご利用頂けます。

今すぐにキャリアチェンジをお考えでない方でも、東大IPC社員へのカジュアル相談は大歓迎です!もしご興味のある方は是非、マッチングプラットフォーム「DEEPTECH DIVEにご登録ください。

Back
  1stRound(起業支援プログラム)詳細はこちら!