東大IPC

マーケットインかプロダクトアウトか|意味・違いを理解し選ばれる商品開発を

  • マーケティング

マーケットインとは

マーケットインとは

マーケットインとは、市場(顧客)の立場に寄り添いながら、市場が必要とするモノを提供していく姿勢をさします。言い換えれば、あらかじめ市場のニーズを調査したうえで、これに沿った製品を開発・提供していこうという考え方です。

市場が本当に求めているモノを開発し、提供することを重視している点に特徴があります。

メリット

マーケットインを取り入れるメリットの代表例として、3つをピックアップして紹介します。

顧客が必要とする製品を提供できる

ターゲットとする顧客のニーズを事前に念入りに調査するため、顧客が実際に必要とするモノを把握し、自社製品の開発・提供に反映できます。

これにより、自社に対する顧客の期待度・信頼度の向上が期待できるだけでなく、自社製品を再び購入したいと思ってくれるリピーターの顧客を獲得できる可能性もあります。

売上を予測しやすい

市場のニーズを把握したうえで製品の開発・提供を行うため、売上を予測しやすいです。製品の開発段階から、ある程度の売上予測を立てられるため、自社の今後の事業計画を作成するうえでも役立ちます。

また、市場調査の結果にもとづいてターゲットとなる顧客の層・ボリュームを予測できるため、顧客の性質に沿った的確なマーケティング活動の実施にもつなげられます。

開発目標を設定しやすい

「顧客が必要とするモノ」が、そのまま製品開発の目標となるケースが多く、場合によっては、具体的な数値目標を設定できることもあります。

具体例として、顧客が求めるモノが安い牛丼だったケースを想定すると、「どのような味が顧客に好まれるか」「どれほどの金額で販売すれば顧客に納得してもらえるか」などを調査し、これを開発目標に掲げることで、開発をスムーズに進められます。

デメリット

マーケットインを取り入れた場合に問題となりやすいデメリットの代表例として、3つ取り上げて解説します。

必ずしも爆発的な売上が得られるとは限らない

マーケットインでは、顧客が必要とする製品の提供を最重要課題に設定します。そのため、ある程度の売上は期待できるものの、斬新な製品・画期的な製品として世の中に大きなブームを巻き起こすほどの爆発的な売上が見込める商品の開発は行いにくくなるのです。

とはいえ、たとえ爆発的な売上を得られなくとも、市場のニーズに合致した製品を持ち継続的な売上を確保しておくことは、企業および事業の成長にとって重要だといえます。

他社に類似製品を開発されるリスクがある

マーケットインによって、市場のニーズがあるうえに独自の技術を必要としない製品を開発した場合、他社が類似の製品を開発して自社製品の競合となるリスクが想定されます。

場合によっては、自社製品にある弱点を克服した改良製品を他社に販売されて、自社よりも多くの売上を獲得されてしまうこともあります。これを防ぐためには、製品の開発後も継続的に市場の調査・分析を行い、さらに市場のニーズに沿った製品に改良していくことが大切です。

自社のイメージが揺れ動くおそれがある

マーケットインの考え方のもとで、自社の強みや技術力を発揮せずに市場のニーズを優先した結果として、これまでの自社のイメージとは異なる製品を開発・提供してしまうケースが想定されます。

これは新規顧客を開拓するうえでは有効な施策といえるものの、自社のイメージが揺れ動くことで、これまで抱えていたリピーターの顧客を逃してしまうおそれがあります。

プロダクトアウトとは

マーケットインの対義語であり、企業が作りたいモノや、企業の方針に合致するモノなどを重視しながら製品の開発・提供を行う考え方のことです。

市場のニーズよりも売り手である企業側の考えに重きが置かれており、「作り手が良いと思う製品を開発する」「良い製品であれば売れる」といった考え方がベースにある姿勢だといえます。

メリット

プロダクトアウトを取り入れる代表的なメリットとして、3つをピックアップして紹介します。

自社の技術力や強みを存分に発揮できる

プロダクトアウトの基本的な方針は、自社が作りたい製品を開発・提供することです。ここでいう「作りたい製品」とは、例えば、自社独自のアイディア・技術・強みを活用して開発する製品をさします。

こうした方針のもとでは、他社に真似できない製品を開発できる可能性が高く、他社との差別化や自社のアピールなどにつなげられます。

また、場合によっては、顧客に対して「この製品といえば、この企業」というイメージを与えられて、自社のイメージ強化にもつなげられるため、ブランディング戦略としても効果的だといえます。

これまでにない製品を開発できれば大ヒットする可能性がある

プロダクトアウトでは、これまで市場に存在しなかった製品の開発を企画することがあります。

これまで市場に存在しなかった製品は売上予測を立てられないものの、もしも世の中の大勢の人に注目されて大評判となれば、爆発的な売上が得られる可能性もゼロではありません。

市場調査・新部門立ち上げなどのコストを削減できる

自社がすでに有している強み・技術などを製品開発に活用するため、市場調査にかかるコスト(これを手掛ける部門の立ち上げコストも含む)を相対的に軽減出来る可能性があります。

人的・金銭的・時間的なコストを軽減することが出来れば、その分、経営資源を有効活用することが出来ます。

デメリット

プロダクトアウトの性質上、市場が必要とする製品を開発・提供できない可能性が十分に考えられます。この場合、売上が発生しなかったり、伸び悩んだりするおそれがあります。

一般的に製品の企画・開発・提供には膨大なコストがかかるため、製品が売れなかった場合には深刻な損失を被りかねません。

なお、製品が売れない場合には、原因の分析を行うことが想定されます。具体的には、製品のニーズや販売方法の課題点などを調査するケースが多いですが、こうしたプロセスにも多くの費用・時間が発生します。

マーケットインとプロダクトアウトの違い

マーケットインとプロダクトアウトの違い

ここまでの解説を踏まえて、両者の違いについてまとめると、マーケットインでは「売れるモノを作る」という考え方が根幹にあるのに対して、プロダクトアウトでは「良いモノであれば売れる」という考え方が根幹にある点に大きな相違点が見られます。

また、マーケティング(自社の製品が売れる仕組みを作ること)との関係性から両者の相違点を考えると、マーケットインの方がプロダクトアウトよりもマーケティングの考え方に沿っているといえます。

マーケットインかプロダクトアウトか

両者の考え方は、二元論的に「どちらが優れていて、どちらが間違っている」と一概に断定すべきではありません。

中には、現代においては、技術力にこだわるプロダクトアウトは時代遅れで、市場の調査に重きを置くマーケットインを必要と考える意見もあります。しかし、その一方で、自動車会社フォード・モーターの創業者ヘンリー・フォードや、Appleの設立者スティーブ・ジョブズなどは、マーケットインに対して反対意見を持っていたのです。

ヘンリー・フォードは、自動車がまだ一部の富裕層のみが所有できる高額商品で、馬が主な移動手段であった時代に、「T型フォード」という一般所得層でも所有できる自動車を販売し、自動車の普及・大衆化を促進し、生活そのものを変革しました。そのヘンリー・フォードが残したとされる格言に、「もし顧客に、彼らの望むものを聞いていたら、彼らは『もっと速い馬が欲しい』と答えていただろう。」があります。

T型フォードの普及以前のアメリカでは、前述の通り馬が一般大衆の主な移動手段であり、そもそも自動車のことを知らない人に対して「何が欲しい?」と尋ねても、「自動車」という回答が返ってくることは想像できません。マーケットインでは顧客が欲するモノの理解が大切であるものの、ヘンリー・フォードのエピソードからは「人は自分の欲しいモノを本当にはわかっていない」という、マーケットインの課題点が見えます。

また、スティーブ・ジョブズの残した言葉に、「ある人たちは『顧客の望むものを与えよ』と言うが、それは私のやり方ではない。私たちの仕事は、顧客が望むよりも先に彼らがこれから望むであろうものを理解することなのです。」があります。この言葉どおり、スティーブ・ジョブズは「iPhone」という、当時は誰も見たことのない画期的な携帯電話を開発しました。

2人のエピソードからは、マーケットインやプロダクトアウトに囚われることなく、顧客がまだ気付いていないような、想像を超える製品の開発を目指す姿勢が大切であることがわかります。実際、これまでに大ヒットを記録した画期的な製品のほとんどは、顧客の想像を超えるモノでした。

マーケットイン・プロダクトアウトに縛られない選ばれる商品開発を

マーケットイン・プロダクトアウトに縛られない選ばれる商品開発を

マーケットイン・プロダクトアウトはともに大切な考え方ですが、最も重要なのは「結果的に、他社ではなく自社の製品が顧客に選ばれること」を意識することだといえます。

これを結果的に実現できるならば、マーケットイン・プロダクトアウトのいずれを採用してもあまり大きな問題にはなりません。裏を返せば、「自社の製品を選んでもらうための差別化をどのようにして図るか」という視点を欠いている状態では、マーケットイン・プロダクトアウトの導入の仕方についてこだわったとしても、大きな成果を上げることは困難です。

マーケットイン・プロダクトアウトに縛られず、選ばれる商品開発を行うことが大切です。

Back
  1stRound(起業支援プログラム)詳細はこちら!