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スタートアップにミッション・ビジョンは必要!作り方、事例

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スタートアップにおけるミッション・ビジョンとは

ミッション・ビジョン・バリュー

ミッション(Mission)とは使命・存在意義を示し、ビジョン(Vision)とは未来像のことを示します。

現在のビジネスシーンにおいてミッション・ビジョンは、スタートアップが資金調達の実施を通じて成長していくうえで必要不可欠とされる、社内外に向けたコミットメント(責任、約束)を意味するのが一般的です。なお、企業の経営方針を構成する要素としては、ミッション・ビジョンのほかに、バリュー(Value:価値観・行動基準)とカルチャー(Culture:企業文化)が含まれる場合もあります。

​​基本的に、スタートアップがミッション・ビジョンを作る適切なタイミングは、「PMF(Product Market Fit:製品が特定の市場において適合している状態)の達成後」であると考えられています。

なぜなら、スタートアップのミッション・ビジョンは、PMFの達成を通じて身に付けた「顧客に対する企業独自の価値提案」にもとづいて作るべきだと考えられているためです。仮にPMFの達成前にミッション・ビジョンを作り込んでしまうと、作り手側(企業)の発想や思い込みが介入してしまい、顧客の声との間にズレが生じ、後から作り直さなければならなくなるおそれがあります。

PMFの具体的な内容や達成までの手順は以下の記事で解説していますので、併せてご確認いただくと、スタートアップのミッション・ビジョンを作るうえで役立ちます。

PMF(プロダクトマーケットフィット)とは?達成までの手順を解説

スタートアップにミッション・ビジョンが必要な理由

スタートアップにミッション・ビジョンが必要とされる代表的な理由は、以下の3つです。

  1. 考えをまとめる指針
  2. カルチャーフィットする人材の採用
  3. 従業員のエンゲージメントを高める

それぞれの項目を順番に詳しく解説します。

①考えをまとめる指針

スタートアップが自社の事業を成長させていく際、時が経つにつれて会社の方向性が不明瞭になり、結果として意思決定の質やスピードが落ちたり、顧客に対する製品の提案価値が弱くなったりすることがあります。

こうした状況において、PMFにより獲得した「顧客に対する企業独自の価値提案」にもとづいてミッション・ビジョンを言語化しておけば、「顧客に与えられる自社の価値」「自社の存在意義」などの観点から、顧客の声と合致した形で、自社の方向性をまとめられます。

これにより、意思決定の質・スピードの向上や、顧客に対して提案する製品の価値向上につなげられます。

②カルチャーフィットする人材の採用

人材の採用が加速する時期に採用候補者に対してミッション・ビジョンを伝えられれば、企業の魅力を効果的にアピールできるだけでなく、カルチャーフィットによる採用の見極めを行う際にも役立つ可能性があります。

③従業員のエンゲージメントを高める

スタートアップの規模が拡大して中間管理職(例:マネージャー)を配置するようになると、「取締役・メンバーのみ」の2段階構造の文鎮型組織から「取締役・マネージャー・メンバー」という3段階構造のピラミッド型組織への移行が進みます。これに伴い、従業員の規模も20名〜50名程度まで拡大するケースも多いです。

このようにスタートアップの規模が拡大すると、経営陣から従業員に対して個人間で直接コミュニケーションを取る機会が減少し、創業者の考えが従業員に対して十分に伝わらなくなるおそれがあります。

上記の事態に陥ると、従業員のエンゲージメント(組織に対する愛着心)が低下し、仕事に対する意欲の低下や優秀な人材の流出などを招きかねません。

しかし、ミッション・ビジョンを明文化して社内に浸透させることで、社内の共通言語が生まれて、従業員との間で企業が目指す方向性のすり合わせをスムーズかつ容易に行えるようになり、エンゲージメントの向上につなげられます。

ここまでスタートアップにおいてミッション・ビジョンは必要である理由を解説してきましたが、そもそもスタートアップがどのような組織であるのかを確認・再確認すると、より理解が深まります。ぜひ、ご一読ください。

スタートアップとは?ベンチャーとの違いを解説【図解あり】

スタートアップにおけるミッション・ビジョンの作り方

スタートアップにおけるミッション・ビジョンの作り方

本章では、スタートアップにおけるミッション・ビジョンの作成方法の例として、6つの手順に分けて紹介します。

作成チームを構築する

前提として、ミッション・ビジョンの作り方および作成チームの構築方法に正解はありません。とはいえ、作成チームの人数が多すぎると手間やコスト(例:人件費)が膨大になり、人数が少なすぎると作成した後で組織への浸透がスムーズに進まないおそれがあります。

チーム人数の1つの目安は、CEOを含めた取締役および執行役員(3名〜6名程度)に加えて、人事や経営企画などミッション・ビジョンの作成を担当するスタッフ(1名〜2名程度)の合計4名〜8名程度です。

CEOだけでなく他の経営幹部を作成チームに参加させることで、作成後の組織への浸透スピードを早められます。また、最大8名程度の規模であれば、「議論において発散ばかりが行われて収束できない」というリスクを最小限に抑えることが可能です。

軸となる文献を決める

チームを構築したら、ミッション・ビジョンを作る際に参考とする文献を決めます。ここでいう文献とは、ミッション・ビジョンなどの組織論に関して解説された書籍のことです。例えば『ビジョナリーカンパニー』や『THE VISION あの企業が世界で急成長を遂げる理由』などが該当します。

参考文献が決まると、ミッション・ビジョンの作成目的や定義の考え方などをチームのメンバー間で共有しやすくなります。

参考文献の候補となる書籍は数多く存在するため、さまざまな書籍を吟味したうえでCEOやプロジェクト推進担当のスタッフが最も適していると感じたものを選ぶと良いでしょう。

枠組みを選ぶ

MVV

ミッション・ビジョンをはじめとする経営方針の代表的な枠組みは、上図で示した4パターンです。基本形はMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)であるものの、枠組み選びには正解がないため、このプロセスに長い時間をかけるのではなく、チームのメンバーと話し合ったうえで自社に最も適していると感じるものを選びましょう。ここからは、MVVの枠組みを採用するケースを想定し、バリューも含めた作成方法を紹介します。

MVVの内容を検討する

MVVの内容を検討する際、はじめから綺麗なコピー(言葉、文章)にまとめる必要はなく、まずはぞれぞれの概念や要約をチーム内で話し合って決めると良いです。その後、決定した内容と、その考え方に至った経緯を議事録に残しておき、最終段階でコピーに落とし込みましょう。

このとき、社内にコピーライティングを行える人材がいなければ、外部のコピーライターに依頼することもおすすめします。コピーライターのスキルや実働時間によりますが、概念や要約が定まっていれば数万円〜数十万円程度で依頼できるケースが多いです。

MVVをストーリーとしてつなげる

MVVを作る際に陥りやすい問題として、「ミッション・ビジョン・バリューのつながりを考慮せずに、個別に独立した概念として捉えてしまう」点が挙げられます。

MVVを作る際に大切なことは、「ミッションを果たすために会社としてあるべきビジョンを目指し、これを実現するために従業員全員がバリューを持つ」というような、つながりをストーリーとして伝えられるようにすることです。

仮にMVVがストーリーとしてつながっていないと、従業員からすれば「どのようなミッションを果たすために、バリューを持つ必要があるのかわからずに共感できない」という事態に陥ってしまい、エンゲージメントを向上させられないおそれがあります。

また、採用候補者に対してMVVを連動したストーリーとして伝えられれば、筋の通った会社として好印象を持ってもらいやすいため、MVVをストーリーとしてつなげることを意識しましょう。

MVVを従業員に浸透させる

MVVが完成したら、最後に従業員に浸透させます。ミッション・ビジョンの浸透は、「それぞれの内容を従業員が理解・共感し、業務遂行の動機付けや目線を上げる契機となっている」という観点から浸透度合いを測ることが可能です。

その一方で、バリューについては、「従業員が理解・共感したうえで、バリューに沿った行動・判断を行っている」ことがわかって、はじめて浸透したといえます。そのため、バリューを浸透させるには、従業員に対する説明だけでなく、作成後の運用方法も重要です。

具体的な施策としては、従業員に能動的にバリューを使用させるために評価制度と紐付けることが有効です。このケースでは、バリューを価値観・マインドベースではなく行動ベースで明文化しておくことで、さらに従業員に浸透しやすくなります。

なお、「作成チームの人数が多すぎると手間・コストが膨大になる」と前述しましたが、MVVの浸透を見据えると、MVVづくりに全ての従業員を巻き込むことも不適切な選択肢とはいえません。

例えば、ワークショップやアンケートの実施を通じて、従業員からMVVのキーワードのアイデアを出してもらったり、コピーライターが作成したMVV候補案に投票してもらったりする施策は、MVVを組織に深く染み渡らせるうえで効果的です。

従業員からすると、MVVの完成形を突然伝えられるよりも、完成までのプロセスに関与できた方が愛着が湧きやすくなるため、MVVを作る段階から徐々に巻き込んでいくことも検討しましょう。

スタートアップにおけるミッション・ビジョンの事例6選

最後に、スタートアップにおけるミッション・ビジョンの事例として、東大IPCの投資先から6社をピックアップし紹介します。

ウェルスナビ

ウェルスナビは、全自動の資産運用サービス「WealthNavi」を提供するスタートアップです。WealthNaviでは、長期・積立・分散を誰でも手軽に行えます。

ウェルスナビのミッションは『働く世代に豊かさを』、ビジョンは『「ものづくり」する金融機関』です。

参考:ウェルスナビ株式会社

コネクテッドロボティクス

コネクテッドロボティクスは、食産業向けロボットサービスの研究開発および販売を手掛けるスタートアップです。これまでに、食品盛付/検品ロボット・そばロボット・ソフトクリームロボットなど、さまざまな調理ロボットシステムを実現してきました。

コネクテッドロボティクスのミッションは『ロボットによって飲食業界の労働環境を変える』、ビジョンは『調理をロボットで革新する』です。

参考:コネクテッドロボティクス株式会社

アーバンエックステクノロジーズ

アーバンエックステクノロジーズは、都市空間のリアルタイム・デジタルツイン(現実世界の環境をIoTなどで収集しデジタル空間上で再現するもの)を構築し、スマートな都市経営の実現を目指すスタートアップです。

スマホ・ドライブレコーダー・IoTセンサー・テレマティクスなど、手軽に収集可能なデータのみから安く・早く都市空間全体のデジタルツインを再構築することを目指しています。

アーバンエックステクノロジーズのミッションは『都市インフラをアップデートし、すべての人の生活を豊かに。』、ビジョンは『低廉迅速な都市のデジタルツイン構築による課題解決』です。

参考:株式会社アーバンエックステクノロジーズ

アイデミー

アイデミーは、以下の事業を手掛けているスタートアップです。

AIを中心とするDX人材育成のためのeラーニングプラットフォーム「Aidemy Business」の提供
Python特化型オンラインプログラミングスクール「Aidemy Premium」の提供
プロジェクトの企画から運用までを一気通貫で支援する“プロジェクト伴走型”支援サービス「Modeloy」の提供

アイデミーのミッションは『先端技術を、経済実装する。』、バリューは『Client First すべてはお客様のために』『Scientific Mindset 科学者たれ』『One Aidemy 信頼と尊敬』です。

※アイデミーでは、覚えやすさを重視する目的で、ビジョンを削り、ミッションとバリューの2つを策定しています。

参考:株式会社アイデミー

Telexistence

Telexistenceは、2017年に、ロボットが活用可能なあらゆる領域において、ロボットの設計・製造・オペレーションを行うことを目的に設立されました。2020年7月には、小売業界向け遠隔操作ロボット「Model-T」を発表し、「ローソン Model-T 東京ポートシティ竹芝店」に導入しています。

Telexistenceのミッションは『すべての惑星上のすべての人々に、ロボット革命の恩恵を授ける』、ビジョンは『世界に存在する全ての物理的な物体を、我々の「手」でひとつ残らず把持する』です。

参考:Telexistence Inc.

BionicM

BionicMは、ロボットと人間を融合するモビリティデバイスの研究および開発、ロボティック義足の研究開発および事業化などを手掛けているスタートアップです。モビリティにおいてロボット技術と人間の身体を融合させる技術を利用することで、新たなイノベーションを起こすことを目指しています。

BionicMのミッションは『Powering Mobility for All すべての人々のモビリティにパワーを』、ビジョンは『人々がよりスマートに、楽にどこでも移動できるソリューションと その関連サービスを提供するモビリティカンパニーを目指す。』です。

参考:BionicM株式会社

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