東大IPC

持続的イノベーションとは?破壊的イノベーションとの違いも事例付きで解説

  • マーケティング

持続的イノベーションとは

持続的イノベーションとは

持続的イノベーション(英語:Sustaining Innovation)とは、企業が市場(顧客)のニーズを満たす目的のもと、自社の製品(これを生み出す際に必要なプロセス全般も含む)に関する性能の向上を図るために行うイノベーションをさします。簡単にいうと、顧客の満足のために、現在すでに存在している製品に起こす革新のことです。なお、Sustainは、「維持する」「保つ」を意味する英語です。

ハーバード・ビジネススクールのクレイトン・M・クリステンセン教授(Clayton M. Christensen)によって提唱されたもので、「破壊的イノベーション」の対となる概念として知られています。

製品が顧客に受け入れられて市場が形成されると、その市場に参入した企業の間で性能・品質などを高める競争が始まると考えられています。この競争では、次世代の製品を市場に投入するたびに製品を高度化しないと他社に顧客を奪われるおそれがあるため、市場での生き残りを図る企業は投資を継続して行い、競合他社に先駆けて新たな技術(より価値の高い製品を生み出す際に必要なプロセス全般)の開発および製品化を目指すのが一般的です。

多種多様な業界で取り組まれる技術進歩のほとんどは持続的な性質を持ち、その中には漸進的な技術改良もあれば、抜本的な技術革新もあります。いずれの場合であっても、持続的イノベーションは市場における既存の顧客が持つ価値基準に沿う形で行われるもので、企業側からすれば「既存の顧客に見放されずに、生き残るためのイノベーション」だといえます。

破壊的イノベーションの詳細は、以下の記事で詳しく解説しています。

破壊的イノベーションとは?必要な理由や種類、事例

持続的イノベーションの事例

本章では、持続的イノベーションの典型例として、3つの分野を取り上げて紹介します。

魔法瓶

タイガー魔法瓶の電気ポットは、魔法瓶の持続的イノベーションにより生まれた製品です。

当初の魔法瓶は保温・保冷の機能のみが搭載されたシンプルな製品でしたが、タイガー魔法瓶は水を沸かす機能・タイマー・温度設定・省電力などの機能を追加した電気ポットを製品化し、顧客により大きな価値をもたらしています。

自動車

自動車分野における主な持続的イノベーションとして、自動車のモデルチェンジによる低燃費化・高性能化などが挙げられます。

特に、トヨタの「プリウス」に代表される、エンジンやモーターなど2つ以上の動力源を備えたハイブリッド車の製品化は、顧客に燃費の大幅な向上という価値をもたらしました。

電球

電球分野における持続的イノベーションの典型例として、LED電球(LED照明)が挙げられます。

LED電球は従来の電球と比較すると値段が高い一方で、耐用年数が長い点や電気料金が安い点などに魅力があることから、製品化されると多くの顧客がLED電球に乗り換えました。

持続的イノベーションと破壊的イノベーションの違い

持続的イノベーションと破壊的イノベーションの違い

持続的イノベーションと破壊的イノベーションは、対の概念として捉えられています。

破壊的イノベーションとは、既存の市場で求められている価値を低下させつつ、新しい価値基準を市場にもたらすイノベーションのことです。これに対して、持続的イノベーションは、​​現在の市場で求められている価値を向上させるイノベーションをさします。

上記の点を踏まえると、破壊的イノベーションは、持続的イノベーションとは異なり、業界の流れや構造を根本的に変化させると考えられています。

ここからは、前述した魔法瓶や自動車などの持続的イノベーションの事例を交えて、破壊的イノベーションの典型例を紹介します。

ティファールの破壊的イノベーション

魔法瓶の持続的イノベーションにおける典型例とされる電気ポットは、湯沸かし温度を1度単位で設定できる機能や電子モニターの搭載、豊富なカラーバリエーション展開などを通じて、既存の製品を改良しながら顧客に価値を提供してきました。

これに対して、T-fal(ティファール)は、湯沸かし機能のみを搭載した電気ケトルを製品化し、破壊的イノベーションを起こしました。

ティファールの電気ケトルは、単純に湯沸かし機能に特化しており、電気ポットのような温度選定や保温の機能は搭載されていません。その代わりに、そのときに欲しい量の水を素早く沸かせる点・価格が安い点・電気代を節約できる点・衛生的である点などに魅力があり、それまで主流だった電気ポットの市場を破壊しました。

テスラの破壊的イノベーション

ハイブリッド車は、既存の自動車にも搭載されているエンジンを併存していることから、あくまでも持続的イノベーションの範囲に留まる技術革新だといえます。

これに対して、アメリカのテスラは、従来の自動車の根幹ともいえるエンジンを完全に取り除いたコンセプトのもとで電気自動車(EV)を製品化し、破壊的イノベーションを起こしています。

テスラは、EV事業を通じて、顧客に対して静粛性や燃費効率などの価値をもたらしただけでなく、EVそのものが抱える課題である「充電の不安・航続距離・割高感・メンテナンス」などの解決も行っており、これまでガソリン車やハイブリッド車などが主流だった自動車業界の流れを根本的に変えつつあります。

さらに、テスラは、ダイムラーやトヨタなど、その国を代表する自動車メーカーにEV技術を共有し、競合他社のEV市場参入の促進や各国の公共充電ステーションの拡大なども図っています。

このような施策により自動車業界で破壊的イノベーションを起こしたテスラは、世界で最も販売されているEVメーカーとして、業界トップの地位を確立しています。

まとめ

持続的イノベーションとは、顧客の満足のために、現在すでに存在している製品に起こす革新のことです。市場における既存の顧客が持つ価値基準に沿う形で行われるため、既存の顧客に見放されずに生き残るためのイノベーションともいえます。

持続的イノベーションと破壊的イノベーションの違いは、「業界の流れや構造を根本的に変化させるかどうか」という点にあると考えられています。

なお、破壊的イノベーションが持続的イノベーションよりも優れているわけではない点は留意しておきましょう。実際、企業が製品の開発について弛まぬ努力と改善を行った結果として持続的イノベーションが起こり、顧客に利便性をもたらす製品が数多く生まれています。

Back
  1stRound(起業支援プログラム)詳細はこちら!