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TAM、SAM、SOMとは?意味や活用シーン、計算方法を具体例を交えて解説

  • ファイナンス

TAM、SAM、SOMとは?

TAM、SAM、SOMの違い

TAM・SAM・SOMという3つの言葉は、いずれもスタートアップや新規事業を立ち上げる企業などにとって役立つ指標です。

いずれも「市場において自社の事業が生み出すと想定される利益」を把握するために用いられる指標であり、活用することで新たな市場・事業の全体像および成長可能性などを客観的な数値で見積もることが可能です。

ここからは、TAM・SAM・SOMそれぞれの概要を順番に詳しく解説します。

TAM

TAMとは、Total Addressable Marketの頭文字を取った略称であり、日本語で「ある事業が獲得できる可能性のある全体の市場規模」を意味する言葉です。言い換えると「企業が新規に立ち上げた事業によってリーチできる顧客層の最大の大きさ・需要の大きさ」のことで、多くの場合「年間で市場全体で支払われる金額の総額」をさします。

また、TAMは、算出する際に100%の市場シェアが達成されたと仮定した場合の架空の数値が用いられることから、「マーケットの想定規模」とも呼ばれています。なお、TAMには、自社の直接的な競合でなくとも同じ市場を分かつ商品・サービスなども含まれます。

TAMは、企業が事業を立ち上げる際、そのサービス内容を必要とする顧客が最大でどれほど存在するのかを把握するために用いられるケースが多いです。企業はTAMの数値を目安としながら事業・市場を拡大させることで、顧客層を増やしていきます。

ここからは、TAMを公表している企業の一例として、freee(法人・個人事業主向けに、事務管理を効率化するためのSaaS型クラウドサービスを開発・運営するフィンテック企業)を取り上げます。freeeでは、「freee会計」「freee人事労務」という2つのサービスにおいて1.2兆円のTAMを推計しています(内訳は「freee会計」にて約6,500億円、「freee人事労務」にて5,500億円)。このTAMの金額は、以下の計算式を用いて算出されています。

  • 日本の従業員規模別全潜在ユーザー企業数(個人事業主および、従業員が1,000名未満の法人の合計)×freeeの課金体系

参考:freee「事業計画及び成長可能性に関する説明資料」2021年12月

SAM

SAMとは、Serviceable Available Marketの頭文字を取った略称であり、日本語で「ある事業が獲得しうる最大の市場規模」を意味する言葉です。言い換えると、「TAMのうち、実際に顧客としてアプローチできるターゲット層」をさします。

TAMではターゲットとなりうる層全体を設定しましたが、その中には事業の競合相手や企業側が提供するサービス内容にマッチングしないターゲット層も存在するため、実際には特定の事業で市場全体を確保することは難しいです。

そのため、TAMで設定した市場規模を踏まえて、SAMでは自社の事業の特徴や設定したターゲットの性質などを考慮したうえで、実際にアプローチできる市場規模を算出することが大切です。

SOM

SOMとは、Serviceable Obtainable Marketの頭文字を取った略称であり、日本語で「ある事業が実際にアプローチできる顧客の市場規模」を意味する言葉です。TAM・SAMと比較して最も現実的な指標であり、そのまま売上目標として扱われることもあります。

SOMを算出する際は、企業の営業活動・努力(例:自社の営業人員はどれほどいるか、現在取り得る営業・マーケティング手段はどのようなものか など)によって事業に触れる可能性のある顧客数はどれほど存在するのかを検討します。

なお、SOMはShare of Marketの略称として用いられることもあります。 Share of Marketとは、実際に自社が獲得できている利益を意味する言葉です。売上高やGMVなどを表しており、PMやPenetrated Marketなどと呼ばれることもあります。

TAM、SAM、SOMの活用シーン

本章では、TAM・SAM・SOMが活用されるシーンとして、代表的な2つをピックアップし紹介します。

企業が新規事業を開始する際

TAM・SAM・SOMは、企業が新規事業を立ち上げる際、事業の対象となる市場の大きさを把握する目的で活用されることがあります。

上記の目的のもとでTAM・SAM・SOMを活用すると、「新規参入を図っている市場がどれほどの規模を持っているのか」「立ち上げた新規事業によってどれほどの収益の獲得を狙えるのか」などを把握することが可能です。

これとは反対に、新規事業を立ち上げる企業がTAM・SAM・SOMなどの指標を活用しなかった場合、新規事業に見込まれる利益を誤って把握してしまい、事業自体に失敗する可能性が高まります。そのため、新規事業の立ち上げを成功させるうえで、TAM・SAM・SOMは重要な指標です。

投資家が投資を行う際

TAM・SAM・SOMは、投資家が新規事業や企業などに対して投資を行う際の判断材料としても活用されています。なぜなら、これらの指標を用いることで、経営者と投資家との間で新規事業における市場規模や見込まれる利益などに関して、認識のズレが生じるのを防げるためです。

実際にスタートアップが投資家に新規事業に関する説明を行う際は、これら3つの指標を用いながら市場の魅力を説明するのが一般的です。

また、投資家がTAM・SAM・SOMを活用すれば、投資を検討している事業がアプローチできる市場規模を想定しやすくなります。これにより、事業への投資により得られるリターンを予測しやすくなり、結果的に投資の判断をしやすくなるのです。

以上のことから、事業や企業に対する投資を成功させたい投資家だけでなく、新規事業を立ち上げるために投資家から資金調達を行いたいと考えている企業にとっても、TAM・SAM・SOMは非常に重要な指標であるといえます。

TAM・SAM・SOMの計算方法

TAM・SAM・SOMの計算方法

本章では、TAM・SAM・SOMの計算方法として、代表的な「トップダウン」と「ボトムアップ」をピックアップし解説します。

トップダウン(TAMを計算)

参入を図る市場全体から事業のターゲット層ではない市場を排除し、自社の事業に対する需要を分析・計算する方法のことです。マクロな視点から考える方法であり、主としてTAMを計算する際に用いられます。

この方法を用いる際は、専門の機関(例:民間のリサーチ会社、工業統計など)が公表している調査結果を合計し、これに自社の事業によって獲得したい割合を組み合わせることでTAMを計算するのが一般的です。

また、TAMを直接的に表す統計データが存在しない場合に、「◯◯市場の60%」といった推計によってTAMを算出する方法もトップダウンと呼ばれています。

注意点

トップダウンの計算方法を用いる際、専門の機関が公表している調査結果を用いますが、それが数年前以上など過去の調査結果であった場合、実用的なデータとして用いることが難しいです。より正確な数値を算出するためには、比較的新しいデータを用いることが望ましいです。

また、調査を実施した機関によって、調査カテゴリーの分類の仕方や用語のニュアンスなどが異なっていることもあるため、あらかじめ調査方法を十分に把握したうえでデータを用いなければなりません。

ボトムアップ(SAM、SOMを計算)

顧客1人1人のデータから、自社の事業に対する需要の大きさを分析・計算する方法のことです。ミクロな視点から考える方法であり、主としてSAMやSOMを計算する際に用いられます。

ボトムアップでは、トップダウンのように専門の調査機関が公表する既存のデータを用いるのではなく、実際に自社が顧客に対してアンケート調査を行うことでデータを収集するのが一般的です。

注意点

まず、顧客に対するアンケート調査時に曖昧な質問をしないことが大切です。例えば、「服を何枚買いますか?」といった質問のように、人によって解釈方法が異なるおそれのある質問をすると、正確なデータを収集できません。そのため、「1年間(あるいは1カ月間)で、仕事用の服(あるいは普段着)を何枚買いますか?」というように、誰が見ても同じ解釈ができるような質問内容を準備するよう注意を払う必要があります。

また、アンケート調査の実施規模が大きすぎないかチェックすることも大切です。最初から大規模なアンケート調査を行うと、質問内容に偏りが生じたり、もともと聞きたかった質問を取り入れ忘れてしまったりすることがあります。

こうした場合でも、アンケート調査は1度行うと、同じ人にもう1度答えてもらうのは難しいです。このことから、アンケート調査を効率的に行うためにも、対象者の属性をある程度定めて、小規模な調査から進めていくことが望ましいといえます。

TAM、SAM、SOMの具体例

Airbnbの事例

最後に、TAM・SAM・SOMを示した企業の具体的な事例として、空き家シェアリングサービスの「Airbnb(エアビーアンドビー)」を紹介します。上記の画像は、Airbnbが2008年のプレゼンテーションにて発表したTAM・SAM・SOMのイメージです。それぞれの指標の概要を以下にまとめました。

  • TAM:世界中の宿泊市場規模(予約による宿泊)→20億ドル以上
  • SAM:格安ホテルかつオンライン予約の市場規模→5億6,000万ドル
  • SOM:Airbnbの市場シェア→8,400万ドル

SAMを見ると、格安ホテルをオンライン予約で利用している顧客をターゲットとしていることが分かり、これらの指標を用いて「自社のサービスが普及すれば、巨大な宿泊予約市場をひっくり返すほどの劇的な成長が見込まれる」ことを投資家にアピールしています。

画像出典:Airbnb Pitch Deck From 2008

まとめ

TAM・SAM・SOMは、スタートアップや新規事業を立ち上げる企業などにとって役立つ指標です。

TAMとは「ある事業が獲得できる可能性のある全体の市場規模」、SAMとは「ある事業が獲得しうる最大の市場規模」、そしてSOMとは「ある事業が実際にアプローチできる顧客の市場規模」を意味します。

TAM・SAM・SOMは、企業が新規事業を開始する際や投資家が投資を行う際などに活用されています。事業や企業に対する投資を成功させたい投資家だけでなく、新規事業を立ち上げるために投資家から資金調達を行いたいと考えている企業にとっても、TAM・SAM・SOMは非常に重要な指標です。

これら3つの指標のうち、TAMを計算したい場合はトップダウン、SAM・SOMを計算したい場合はボトムアップの方法を用いるのが一般的です。それぞれの方法によって異なる注意点があるため、事前に把握したうえで計算を行いましょう。

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