2021/12/29

バーンレートとは?種類、計算方法などスタートアップで重要な指標を解説

バーンレートの種類

バーンレートの種類

バーンレート(Burn Rate)とは、「会社経営に際して、1ヶ月あたりに消費されるコスト」を意味し、月次で把握するマイナスのキャッシュフローのことです。資金燃焼率や現金燃焼率などと呼ばれることもあり、ベンチャーやスタートアップの分野を中心に広く用いられています。

バーンレートは、「グロスバーンレート」「ネットバーンレート」の2種類に分かれます。一般的には「ネットバーンレート」が使用される機会が多いものの、企業のキャッシュフローを検討する際に認識の齟齬が生じないよう、それぞれの特徴を把握し区別できるようにしましょう。

グロスバーンレート

グロスバーンレート(Gross Burn Rate)とは、1ヶ月あたりのコストの合計額を意味します。計算式にすると以下の通りです。

  • 総コスト÷期間

具体例を挙げると、半年間で3,000万円のコストを消費している企業の場合、グロスバーンレートは500万円と算出されます。

ネットバーンレート

ネットバーンレート(Net Burn Rate)とは、実際にかかったコストの合計額(グロスバーンレート)から収入(売上)を差し引いた額を意味します。計算式にすると以下の通りです。

  • 総コスト÷期間-売上

主として、企業に資金の余力がどれほどあるのかを見積もる際に使用される指標です。

具体的にいうと、「企業から今月どれほどのキャッシュが減少したのか」「どれほどの割合・速さでキャッシュが減少しているのか」などを表現する際、ネットバーンレートを省略し、「バーンレート」として用いられるケースが多く見られます。つまり、「バーンレート」の言葉が用いられる場合、ネットバーンレートを指すケースが一般的です。

コストの分類

バーンレートを計算する際に用いるコストとは、断続的に発生する支出のことであり、主に以下の分類が存在します。

  • 固定費:オフィスの賃貸・維持費用、人件費(給与、手当、賞与)、コンピュータ・OA機器の使用料など
  • 変動費:原材料や商品の仕入れ費、調査費、営業取引諸費用など

固定費とは、製品の開発や提供・営業活動などに関わらず、一定に生じる費用です。これに対して、変動費とは、生産量や販売量に応じて変動する費用をさします。

変動費は生産量や販売量に比例して増加しますが、これを上回る売上を出せていれば、基本的に問題視されることはありません。その一方で、固定費は、売上を全く出せていない状況であっても支払いが求められるコストです。そのため、利益が少ない状況下で固定費に多くの金額を割いてしまうと、赤字状態に陥ります。

以上の点を踏まえると、ベンチャーやスタートアップにおけるコストを削減したい場合は、固定費として支払う金額を少なくすることが望ましいです。固定費(人件費と家賃)の考え方については、後述します。

なお、固定費や変動費などとは異なり、1回きりの支出(例:スポットでの弁護士費用)については、バーンレートを計算する際の支出費目には含まないのが一般的です。

バーンレートの計算方法

バーンレートの計算方法

バーンレートは、1ヶ月あたりの平均コストを意味するため、「これまでに消費したコスト÷期間(月数)」の計算式で求められます。

グロスバーンレートを求める際は、「1ヶ月で消費したコストの合計額」を算出します。これに対して、ネットバーンレートの場合は、収入を加味することで「1ヶ月で実質的に消費したコスト」を算出します。その際に用いられる計算式は、「1ヶ月で消費したコストの合計額−1ヶ月で発生した収入額」です。

具体的な計算例

ここでは、具体的なケースを用いてバーンレートの計算例を紹介します。

1つ目は、2ヶ月間で200万円のコストを消費し、50万円の売上が発生したケースです。このケースにおけるグロスバーンレートは「200万円÷2ヶ月=100万円」、ネットバーンレートは「200万円÷2ヶ月−50万円=50万円」と算出されます。

2つ目は、1,500万円の資金からスタートし、8ヶ月経過後に700万円残っていたケースです。このケースにおけるネットバーンレートは「800万円÷8ヶ月=100万円」と算出されます。

また、ネットバーンレートの考え方を用いれば、企業運営に必要な資金を割り出すことが可能です。例えば、ネットバーンレートが200万円発生している企業の場合、1年間に必要な資金は「200万円✕12ヶ月=2,400万円」と算出されます。

バーンレートを使って計算する「ランウェイ」

バーンレートを使って計算する「ランウェイ」

スタートアップにおいて事業計画や資本政策を検討する際、バーンレートのほかに、ランウェイの概念を使用する場合があります。ビジネスにおけるランウェイ(Runway)とは、「企業がキャッシュ不足に陥るまでの残存期間(月数)」を意味する言葉であり、資金繰り改善の目安を把握するための指標として用いられます。

ランウェイの計算式は、以下の通りです。

  • 残りの資金÷ネットバーンレート

例えば、残りの資金が1,000万円、ネットバーンレートが200万円という企業の場合、ランウェイは「1,000万円÷200万円=5ヶ月」と算出されます。

つまり、上記の企業は、あと5ヶ月で資金が底をついてしまうため、それまでに資金調達や経営戦略の見直しなどを行う必要があります。このように、ランウェイを把握すれば経営の立て直しを図る必要性を実感できることから、残された期間でさまざまな対策(​​コストの削減、収益の向上、追加の資金調達など)を検討することにつなげられます。

このとき、ランウェイが短い企業ほど迅速な対応が求められるため、日常的な分析および検討が大切です。

ランウェイについて詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。

ランウェイとは?ビジネスにおける意味【図解あり】

バーンレートを抑えるための人件費と家賃

バーンレートを抑えるための人件費と家賃

バーンレートを抑えるためには、人件費と家賃という2つのコストに関して注意を払うことが有効だと考えられています。それぞれのコストにおける注意点を順番に紹介します。

人件費

特にベンチャーやスタートアップなどのバーンレートを考える際、人件費の大きさが目立つ場合があります。バーンレートを抑えるうえで、人件費の削減は有効策です。とりわけスタートアップの初期段階では、人件費を抑えるために従業員を採用し過ぎないよう注意すると良いでしょう。

ただし、人件費は事業に携わるスペシャリストの育成や社員のモチベーションなどにも関わる要素であることから、むやみに削減すれば負のスパイラルに陥ってしまうおそれがあり、結果として事業の失敗につながりかねません。こうした事情を踏まえて、人件費は削減の必要性を慎重に検討する必要があります。

家賃

また、家賃負担も、バーンレートの抑制につなげられるコストの1つとして考えられています。多くの場合、オフィスのグレードを身の丈以上に高めたり、人気の高いエリアにオフィスを置いたりすると、家賃の負担が大きくなり事業への投資割合が低下します。そのため、成長前の段階では家賃を低く設定しつつ、新規事業に投資を行う企業が多く見られます。そのほか、オフィスを持たずに家賃コストの消費を回避する企業も少なくありません。

一般的に、人件費や家賃などのコストについては、会社の成長に伴って金額を上昇させていくようにし、成長前の段階から華美なコスト構造を採用するのは避けることが望ましいと考えられています。

まとめ

バーンレートとは、「会社経営に際して、1ヶ月あたりに消費されるコスト」を意味し、月次で把握するマイナスのキャッシュフローのことです。グロスバーンレートとネットバーンレートの2種類が存在するものの、一般的にバーンレートの言葉を用いる場合、「実際にかかったコストの合計額から収入を差し引いた額」をさすケースが多いです。

バーンレートは、「これまでに消費したコスト÷期間(月数)」の計算式で求められます。ネットバーンレートの場合は収入を加味するため、「1ヶ月で消費したコストの合計額−1ヶ月で発生した収入額」で算出できます。

また、バーンレートの考え方を用いれば、ランウェイの算出も可能です。ランウェイを把握すれば経営の立て直しを図る必要性を実感でき、残された期間でさまざまな対策を検討することにつなげられます。

バーンレートを抑えるには、支出に占める割合が特に大きい人件費と家賃という2つのコストに関して注意を払うことが有効です。これらのコストは、会社の成長に伴って金額を上昇させていき、成長前の段階から華美なコスト構造を採用するのは避けることが望ましいと考えられています。

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