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ベスティングとは?ストックオプションで大事な条項について解説

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ベスティングとは

ベスティングとは

べスティング(英語:Vesting)とは、一定期間の経過によって権利を確定させる契約条件(条項)のことです。​​企業が役員や従業員などに対してストックオプションを付与するシーンでは、「一定期間が経過するまで、ストックオプションの権利を行使できない」とする条項を指すのが一般的です。

なお、ストックオプションの付与に際して用いられるべスティングは、大まかに以下2つのパターンに分かれます。

  • 権利付与後、行使できない一定の期間を経て権利行使が認められるパターン
  • 権利付与後、一定の期間ごとに権利行使が認められる株式の割合が増えていくパターン

そのほか、一定期間の経過前に役職員が会社を退職したケースにおいて、「その時点で未確定部分のストックオプションを以降一切行使できない」とする条項もべスティングに該当します。

ベスティングを設ける理由

べスティングを設ける主な理由としては、「ストックオプションの権利行使後における人材離脱を防げる」点が挙げられます。

上記の理由でべスティングを活用する場合、ストックオプションの権利を行使できるようになるタイミングを段階的に設定すると良いです。

具体例としては、ある企業が1人の役職員に対して100株のストックオプションを付与する際、企業が上場したタイミングで「100株のうち20株だけ権利行使できる」とし、それから1年勤続したタイミングごとに「20株ずつ権利行使できる」としておくことで、 5年勤続したタイミングですべての権利を行使できるようにするケースが挙げられます。

上記のようにべスティング条項を設定することで、企業の成長に貢献してほしい期間(例:マザーズ上場から東証一部上場まで)において、ストックオプションにより利益を獲得した役職員の流出を防ぐ効果が期待できます。

ストックオプションについては以下記事で詳細に解説しています。ベスティングの設定を検討するためには、ストックオプションに対する理解が不可欠です。ぜひご一読いただき、理解を深めてください。

ストックオプションとは?仕組みとメリット/デメリット【事例あり】

ベスティングの例

ベスティングの例

業種・状況によって役職員に貢献してほしい期間は異なっており、これに伴いべスティング条項で権利を行使できるまでの期間設定も変動します。

例えば、研究開発型の企業であれば、事業が成長するまでに多くの時間がかかりやすく、べスティング条項で設定する期間が長くなる傾向にあります。これに対して、ソフトウェア開発業(例:SaaS事業)を手掛ける企業では、成長にそれほど長い時間がかからない傾向にあるため、べスティング条項で設定する期間が短くなりやすいです。

とはいえ、ストックオプションの付与から1年ごとに20%ずつ権利行使を認めていき、5年が経過したタイミングで100%の行使を認めるというケースが一般的です(下表を参照)。

期間の経過 権利を行使できる割合
ストックオプション付与から1年経過まで 0%
1年経過後から2年経過まで 20%
2年経過後から3年経過まで 40%
3年経過後から4年経過まで 60%
4年経過後から5年経過まで 80%
5年経過後 100%

上記で取り上げた例では、ストックオプションの付与から1年経過するまでの間は権利行使できる割合が0%であることから、「1年間のクリフ(崖)、4年間のべスティング」と表現する場合もあります。

ベスティングを設定する際の注意点

べスティングの設定は、慎重に検討することが望ましいです。なぜなら、以下のようなリスクが発生するおそれがあるためです。

  • 100%子会社化によるM&Aの弊害となるリスク
  • ベスティングが終わるまで怠ける文化が生まれるリスク

ここからは、それぞれのリスクの概要と対策について順番に解説します。

100%子会社化によるM&Aの弊害となるリスク

M&Aとは企業の合併・買収をさし、企業を買う「買収先企業」と企業を売る「売却先企業」があります。

その上で例えば、AさんとBさんが共同創業したC社があり、Bさんがべスティング条項を遵守して株式を取得した後にC社を離れ、D社に転職。その後、C社がD社を買収(100%子会社化)するという場合、Bさんの反対によって失敗してしまう可能性があります。

なぜなら、100%子会社化を前提とするM&Aを実施するには、売却側企業の株主全員の同意が必要となるためです。また、場合によっては、C社の株主であるBさんに株主総会の招集通知を発送したことが原因となり、D社に情報が漏洩するおそれもあります。

こうした事態を防ぐためには、ベスティング条項と併せて事前に創業株主間契約に合意しておくことが望ましいです。創業株主間契約とは、創業期から企業に携わっている役職員(創業株主)が会社を離れる際に、残った創業株主でその人物が保有する株式を買い取れるよう定めた契約のことです。

そのほか、離職した創業株主に対して、会社に残った創業株主と同じ条件で自社に株式を譲渡することを請求できる権利(ドラッグアロング)を設定しておくことも効果的です。

※上記2点については、ベスティング条項の設定時に限らず、株式を付与する際には設定しておくことが望ましいです。

ベスティングが終わるまで怠ける文化が生まれるリスク

べスティングを設定すると、モチベーションが高くない役職員であってもストックオプションを手放したくないという思いから、一定期間が経過するまでモチベーションが低い状態のまま企業に留まるといったことが発生するおそれがあります。こうして、ベスティングの期間が終わるまで怠ける文化が生まれてしまうと、業績もさることながら会社の雰囲気にも悪影響を及ぼしかねません。

こうした文化を生まないためには、ストックオプション付与対象者に対して「継続的に成果を出していないならば、ストックオプションの権利を行使できない可能性がある」ことを常日頃から伝えておくことが望ましいです。

また、マネージャーとチームスタッフの間で頻繁に成果の振り返りや双方向のフィードバックを行わせ、ストックオプション付与対象者のパフォーマンスが何らかの変化(例:チームの再編、マネジメント層の変化、従業員の解雇など)をもたらす、パフォーマンスを主軸とする文化を生み出すことも効果的です。

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