不動産仕入れとは?営業で成果を出すコツと課題、最新ツールを解説
不動産営業で成果を出すためには、「不動産仕入れ」の理解と実践が不可欠です。顧客への提案や販売成約の前に「いかに優良な物件を仕入れられるか」が勝負を分ける重要な要素です。
特に近年は市場の競争が激化し、情報のスピードと精度が問われる時代です。仕入れ力の有無が、営業個人や会社全体の業績を大きく左右するといっても過言ではありません。
本記事では、株式会社WHEREの代表である阿久津岳生氏に御協力を頂き、不動産仕入れの基本や成果を出すためのコツ、現場での課題、最新の業務支援ツールについてもわかりやすく解説します。「成果につながる営業活動」を実現したい方々は、ぜひ参考にしてください。
【目次】
不動産仕入れとは?

不動産仕入れとは、土地や建物を購入して、自社での開発・再販・運用などにつなげる業務のことです。
業界によっては、仲介会社が売主から媒介契約を取得する際に「物件を仕入れる」と表現する場合もあります。
ただし本記事では、自社が主体となってどの物件を、どの条件で仕入れるかを見極め、戦略的に判断する業務を「不動産仕入れ」として定義しています。
仲介のように買い手と売り手をマッチングする立場ではなく、自社が主体となって物件を取得し、その後の活用に直接つなげる点が大きな特徴です。
このような不動産仕入れ業務は、不動産デベロッパーや買取再販業者などにとって、事業の出発点であり、成否を左右する重要な工程です。
不動産仕入れの業務は、マンションや戸建て、商業施設を手がける不動産デベロッパーをはじめ、中古物件のリノベーションや再販を行う事業者にとって収益を生み出す出発点です。
仕入れの良し悪しが、その後の開発コストや販売価格、最終的な利益率に直結するため、非常に重要な工程とされています。
実際、「良い物件を安く仕入れることができれば、多少販売に時間がかかっても利益が確保できるが、仕入れ価格が高ければ、売れ行きが良くても利益は出にくい」といった現場の声もあります。
こうした背景から、「仕入れがすべて」と言われるほど、事業の成否を左右する中核的な役割を担っているのです。
不動産仕入れの特徴
不動産仕入れは、以下のようなスキルや知識が求められるのが特徴です。
| スキルや知識 | 詳細 |
|---|---|
| 高い戦略性 | ただ物件を探して購入するのではなく、将来的な開発や収益化の可能性を見据え、「どのエリアで、どの物件を、いくらで仕入れるか」を的確に判断する力が必要です。市場の動向や需要を読み取る「目利き力」が問われます。 |
| 関係構築力 | 売主には法人オーナーや相続人、地主など多様な立場の方々が多く、単なる価格交渉だけでなく丁寧なコミュニケーションを通じた信頼関係の構築が欠かせません。長期的な視点での対応も重要です。 |
| 広範な専門知識 | 不動産仕入れを行う際は、用途地域や容積率、建築制限などの法的条件を理解していることはもちろん、エリアの将来性や開発ポテンシャルなど、不動産市場全体に関する知識も必要となります。 |
| 現地調査力 | 地形や接道状況、周辺施設の有無といった要素は、現地を訪れないと見えてこない場合も多いです。Googleマップや登記簿だけでは判断できない「現場ならではの感覚」が、仕入れの質を左右します。 |
不動産仕入れ営業に必要なスキルについては、後の章でも詳しく解説しています。
現場経験者に聞く!不動産仕入れのリアルと課題
「地図と電話帳を使い、1日200件もの電話をかけていた。」
そう語るのは、不動産仕入れ支援SaaS「WHERE(ウェア)」を提供している株式会社WHEREの阿久津岳生氏です。このエピソードは現場の営業活動がいかに非効率で属人的だったかを物語っており、不動産仕入れにおける本質的な課題を浮き彫りにしています。
不動産仕入れの業務をより体系的に理解するためには、まず「仲介」や「買取」との違いを明確に整理しておくことが重要です。
仲介や買取営業との違い
不動産仕入れは、仲介業や買取営業とは目的や手法が大きく異なります。
仲介との違い
不動産仲介業は、市場に出ている物件を「買いたい人」と「売りたい人」の間に立ち、円滑に取引が進むよう調整する役割です。これに対して、不動産仕入れは「まだ市場に出ていない物件を自ら探し出し、交渉のうえで取得する」という、より能動的かつ戦略的な活動です。
買取営業との違い
買取営業も物件を買い取る点は共通していますが、対象となるのは一般的にすでに売り出されている物件です。
一方、不動産仕入れは「未公開物件」を中心に取り扱うため、情報を先取りして市場に出る前にアプローチする開拓型の要素が強いのが特徴です。
「情報の非対称性」を生かすビジネス
仲介や買取営業は、基本的に公開された情報をもとに他社と競合します。
不動産仕入れは、未公開物件の発掘や提案型の営業を通じて、他社よりも早く情報にアクセスできる体制を整えることで、差別化につなげやすいのが特徴です。特に、物件情報がまだ広く出回っていない段階で売主にアプローチできることは、提案の自由度や交渉の柔軟性という点で優位に働くことがあります。
どのような業種・企業で行われているか
不動産仕入れは、以下のようにさまざまな業種・企業で採用されており、その目的や手法も多岐にわたります。
| 業種・企業 | 詳細 |
|---|---|
| 不動産デベロッパー | 分譲マンションや戸建て、商業施設、物流施設などを開発するために、将来的な用途を見越して土地を取得します。 |
| 建売住宅事業者 | 住宅地として活用できる土地を仕入れ、自社で設計・建築を行い、完成後に販売します。 |
| 買取再販業者 | 中古住宅や中古マンションなどを安く買い取り、リフォームやリノベーションを施した上で再販売する事業モデルです。 |
| サブリース・不動産ファンド | 安定した家賃収入や資産運用益を目的に、収益物件を長期保有前提で買い付けるケースが多く見られます。 |
| 仲介会社・金融系企業 | 近年は自社ブランドでの商品化を目指したり、投資家向け物件を確保したりするために、仕入れを強化する仲介業者や金融系企業も増加傾向にあります。 |
| 地域密着型の中小企業 | 戸建てや小規模なテナントビルを対象に、地元に根ざしたネットワークと情報力を活かした仕入れ活動を展開する企業もプレイヤーとして存在します。 |
※なお、開発を前提とした更地や古家付き土地の取得を専門とする業務は「用地仕入れ」と呼ばれています。不動産仕入れが幅広い用途や物件タイプに対応するのに対し、用地仕入れは特に新築開発を前提とした土地取得に特化している点が特徴です。
用地仕入れについては、以下の記事で詳しく解説していますので併せてご覧ください。
不動産仕入れ営業の流れと求められるスキル

本章では、不動産仕入れ営業を進めていく際の流れと、求められるスキルについて順番に解説します。
営業の基本ステップ(物件探索〜現地調査〜契約)
不動産仕入れの営業活動は、大まかに以下の流れで進められます。それぞれのプロセスが成果に直結するため、スピード感と丁寧さの両立が求められます。
| ステップ | 詳細 |
|---|---|
| 1. 情報収集 | 不動産仕入れの第一歩は、対象となる物件の情報を集めることから始まります。地図での調査や実際の街歩き、管理会社との情報交換、法務局での登記簿取得などが主な手段です。近年はSNSやGoogleマップを活用して、効率的に候補地を見つける方法も一般的になっています。 |
| 2. 対象物件の選定 | 収集した情報をもとに、開発条件や土地の形状、接道状況、建ぺい率や容積率などを精査し、自社の事業戦略や活用目的に適した物件かどうかを見極めます。立地や周辺環境も含めた多角的な視点が重要です。 |
| 3. 売主との交渉・提案 | 売主が個人か法人か、相続案件か事業譲渡かなど、背景に応じた交渉スタイルを工夫する必要があります。単なる価格交渉にとどまらず、売却後の土地活用提案や安心感を与える説明が信頼獲得のカギです。 |
| 4. 契約・決済 | 交渉がまとまれば、契約条件の調整、重要事項説明書の作成、登記申請、決済手続きといった法的対応が必要です。売主や司法書士、金融機関など多くの関係者と連携しながら、スムーズな引渡しを実現することが求められます。 |
仕入れ営業に求められるスキル
不動産仕入れの営業は、「営業力」だけでなく「企画力」「法務知識」「開発視点」といった複数の専門性が求められる高度な業務です。中でも、以下のようなスキルは成果に直結しやすく、非常に重要です。
| スキル | 詳細 |
|---|---|
| 目利き力 | どの物件が将来的に価値を生むかを見極める力が不可欠です。立地や市場動向、開発ポテンシャルなどを多角的に判断する力が求められます。 |
| ヒアリング力・交渉力 | 売主の背景やニーズを丁寧にくみ取り、双方にとって納得感のある「Win-Win」の提案ができるかどうかが成約に直結します。 |
| 法令・制度への理解 | 市街化調整区域や建築制限など、土地活用に影響を与える法規制への知識が必要です。制度に即した提案ができることが、信頼構築にもつながります。 |
| 継続力・粘り強さ | 不動産仕入れ営業は短期間で成果が出るとは限りません。むしろ、長期的な関係づくりやタイミングを見極めた対応が重要です。地道な努力を継続できる姿勢が成功のカギです。 |
不動産仕入れ営業で成果を出すコツ7選
成果を上げている不動産仕入れの担当者に共通しているのは、「勘や経験だけに頼るのではなく、誰がやっても成果につながる、再現性のある行動を実践していること」です。
以下、現場で確かな成果を出すために重要な7つの実践ポイントをご紹介します。
1. 明確なターゲット設計
不動産仕入れ営業の成果は、実際に動き出す前の「ターゲット設定」によって大きく左右されます。「どのエリアで、どのような用途の土地を、どの条件で狙うのか」が明確でないまま行動しても、成果につながらず、労力が無駄になる可能性が高くなります。
例えば、アパート建設用の土地を探しているにもかかわらず、戸建て向けの狭小地ばかりにアプローチしていては、成果の効率は大きく下がってしまいます。
自社の商品や事業モデルとの相性を踏まえた上で、狙うべきエリアや土地の規模や形状、周辺環境といった条件を具体的に絞り込むことが、効率的な仕入れ活動の第一歩です。
2. 日常的なネットワーク形成
不動産仕入れに関する情報は、一般に公開される前、水面下で動いていることがほとんどです。そのため、成果を上げている営業担当者は、日頃から情報の提供元と信頼関係を築くことに力を入れています。
具体的には、不動産仲介会社や管理会社をはじめ、司法書士、土地家屋調査士、弁護士、税理士、金融機関の担当者などと定期的に情報交換を行い、訪問やあいさつ回りを欠かしません。
「最近はこのエリアで、こういった土地を探しています」と具体的なニーズを伝えておくことで、情報提供者とのタイミングが合った際に、未公開の案件を紹介してもらえる確率が高まります。
3. 粘り強い再訪問(1年越しもある)
一度断られたからといって、すぐに諦める必要はありません。不動産の売却タイミングは、相続や事業承継、引っ越し、急な資金需要など、予測できない事情で突然訪れるケースがあるからです。
成果を出している営業担当者は、そうした「いつか」に備えて、定期的に資料を送付したり、エリアの市況情報を共有したりと、継続的な関係づくりに努めています。
実際、半年〜1年後に再度連絡が入り、成約に至るケースも珍しくありません。大切なのは、「いざ売却しよう」となったときに、真っ先に思い出してもらえる存在になることです。そのための工夫と継続が、成果につながります。
4. CRMやGISなどツール活用による再現性向上
不動産仕入れの営業は、どうしても属人的になりやすく、特定の担当者しか案件の進捗状況を把握していないという課題が生じがちです。そのような状態では、引き継ぎがうまくいかず、チーム全体でのスケール展開も難しくなります。
成果を上げている営業チームでは、こうした課題を解消するために、CRM(顧客管理ツール)やGIS(地図情報システム)といったITツールを積極的に活用しています。
「誰が、いつ、どのような対応をしたのか」「次にどのようなアクションが必要なのか」といった情報が可視化・共有されていることが大きな特徴です。
これにより、情報の漏れや再訪問の抜け漏れを防ぎ、営業プロセスの見える化と共有が進むことで、チーム全体で再現性のある動き方を模索しやすくなります。組織的な営業体制を構築するうえで、こうしたツール活用は重要な要素のひとつといえるでしょう。
5. 競合が少ないニッチ戦略
都心部の整形地や更地といった、いわゆる「条件の良い土地」は大手企業も注目しており、価格競争が激しくなりがちです。その結果、利幅も小さくなり、収益性が限られてしまうケースが多くあります。
一方で、他社が敬遠しやすい「難あり物件」であっても、自社の設計力や施工ノウハウを活かすことで、活用の余地が見いだせる場合があります。こうした一見ネックのある土地に可能性を見出すことが、差別化された仕入れ戦略につながることもあります。
自社の設計力や施工技術、柔軟な対応力を強みに、こうした一見ネックのある土地を仕入れ対象にすることで、競合と争わずに優良物件を確保する「差別化された仕入れ戦略」が可能になります。隠れた価値に目を向ける視点が、仕入れ力の差を生みます。
6. 士業との連携で紹介ルート獲得
税理士や弁護士、司法書士といった士業の専門家は、相続や離婚、事業譲渡といった不動産売却につながる相談を顧客から最初に受けることが多い存在です。
こうした専門家と信頼関係を築いておくことで、「あの方なら安心して任せられます」と、不動産案件を紹介してもらえるパートナー関係が生まれやすくなります。
重要なのは、営業的な売り込みをするのではなく、「顧客にとって有益な情報を提供できる存在」として、認識してもらうことです。例えば、最新の法改正情報や不動産市況の動向など、士業の実務にも役立つ情報を提供することで、互いにメリットのあるWin-Winの関係が築けるでしょう。
7. 営業というより「相談相手」になる姿勢
土地を売却する側にとって、不動産仕入れ営業は単なる「買い手」ではなく、「信頼して任せられる相手かどうか」を見極める重要な存在です。
そのため、単に価格を提示するだけではなく、土地の有効活用の提案や将来的な活用ビジョンの共有、相続や税務のアドバイスなどを通じて、売主にとって頼れる相談相手となることが大切です。
営業成果ばかりを優先せず、相手の立場に寄り添った対応を積み重ねることで信頼が生まれ、結果的に紹介や再度の依頼といった継続的なつながりにも発展していきます。
不動産仕入れの最新ツール
近年の不動産仕入れ業務は、従来の手作業に頼るスタイルから、ツールを活用した仕組み化へと大きく移行しています。限られた人員や時間のなかで安定して成果を出すためには、業務の効率化と再現性の確保が不可欠です。
そのためにも、現場に合ったツールを適切に導入・活用することが、これからの仕入れ営業において重要なポイントとなります。
業務支援ツールの分類と活用ポイント
業務支援ツールは、不動産仕入れ営業の効率化と再現性向上に欠かせない存在です。以下に、代表的なツールと活用ポイントをまとめました。
| ツール分類 | 主な機能と使い方例 |
|---|---|
| CRM(営業支援ツール) | 商談の取りこぼし防止、社内での情報共有を円滑化。 顧客との接触履歴、交渉の進捗管理、再訪問のタイミング通知などに使われます。 |
| GIS・地図分析系 | エリア選定や開発適地の判断を迅速化。 地価、建ぺい率、容積率、ハザード情報などの可視化に使わます。 |
| 登記取得サービス | 現地調査や交渉前の事前確認を迅速化。 オンラインでの所有者情報や地番の取得、登記事項証明書(旧:登記簿謄本)のPDF出力などに使わます。 |
上記のツールを状況に応じて組み合わせて活用することで、従来の「勘と経験」に頼る営業スタイルから脱却し、誰でも再現できる業務体制を築くことが可能になります。
こうした複数のツールの中でも特に注目されているのが、「仕入れ活動が一部の経験者に依存しがち」という属人化の課題をテクノロジーで解消するSaaSサービス「WHERE」です。
注目の新サービス:不動産仕入れ支援SaaS「WHERE」

不動産仕入れの現場では、地図や登記情報をもとに現地を調査し、所有者を探し出して連絡を取るといった、属人的で非効率な業務が今なお続いています。
不動産スタートアップの株式会社WHEREが開発した不動産仕入れ支援SaaS「WHERE(ウェア)」は、そうした業務プロセスを一気通貫で効率化するツールです。
衛星データと公的情報を組み合わせ、仕入れ候補地の抽出から所有者特定・アプローチまでをデジタル化。営業担当者の経験や勘に頼る時代から、テクノロジーによる再現可能な営業体制への転換を促します。
株式会社WHEREの代表である阿久津岳生氏は、「良い土地を仕入れたいものの、能動的に効率良く情報収集ができない」という現場課題に対し、「WHEREを使うことで自ら積極的に仕入れに動けるようになる」と語っています。
属人的だった仕入れ活動が「攻めの営業」に変わり、「大きな価値の創出に成功している」といいます。
福岡地所では、WHERE導入により半年で10億円超の案件を複数獲得し、12億円規模の成約も実現しています。また、能登半島地震ではNEDOと連携し、衛星データで地権者を特定。復旧支援や買い取り提案に活用されました。
WHEREの開発の背景や導入事例、今後の展望については、開発者・投資家へのインタビュー記事で詳しくご紹介しています。ぜひ合わせてご覧ください。
不動産仕入れ支援SaaS「WHERE」の詳細は、株式会社WHERE公式サイトからご確認いただけます。
