2025/12/26

「AIロボット×AIソフトウェア」事業で闊達自在にプロダクトを創出し、世界の発展に貢献

株式会社Jizai| 代表取締役CEO|石川 佑樹

2024年度の第11回1stRound支援先の一つである株式会社Jizai(ジザイ)は、メルカリグループで新規事業担当や生成AI担当役員を務めた石川佑樹氏が2024年6月に設立。「AI時代の最高の開発会社を創る」をビジョンとして、ソフトウェアとハードウェアの両面からAI技術の社会実装を進めようとしている。代表取締役CEOの石川氏に、事業の概要や起業に至った経緯、1stRoundで得たものなどを聞いた。

自社開発の「自律的に考え行動する汎用AIロボット」は、CESでも注目

―まず、Jizaiの事業について教えてください。

石川:「『先端技術研究』と『社会実装』を通して闊達自在な事業家・クリエイター集団を創り、プロダクトの提供によって世界の発展に貢献すること」をミッションとして、設立当初からAIのソフトウェア事業とハードウェア事業の両方を手がけています。
ソフトウェア事業では、現状の生成AIやLLMでビジネス成果を挙げられるタスクや要素技術を基盤プロダクト化し、これらを組み合わせて各業界にDXサービスを提供しています。特に教育や農業、医療・ヘルスケア、防災・セキュリティなど、日本として今取り組むべきドメインに注力しています。公開されている事例では、京都芸術大学とAIの研究開発で業務提携して、学生・教員・職員向けのAIツールやプロダクトをつくっています。たとえば1人1台の家庭教師AIサービス「Neighbuddy」を開発して、学生のノートや対話履歴から学習支援を行ったり、これを元に首掛け式のウェアラブルデバイスをつくる取り組みを行っています。

―AIハードウェア事業はどのようなものですか。

石川:注力しているのは自社開発のオリジナルAIロボットです。当社が目指すのは、OpenAIが追求している汎用AI(AGI)のように、何でもできる汎用AIロボットを創ってグローバルに提供していくこと。その第一歩として「Mi-Mo(ミーモ)」という、自律的に考え行動するAIロボットを創り、2025年1月のCESに出展して、海外市場での反響を確かめました。可愛すぎず無機質すぎず、温かみがあって室内に自然と溶け込むデザインを意識しています。目や耳、口、足の機能を備え、手を振ると振り返すなど、視覚・音声・動作を通じて生き物らしい反応を返すことができます。複数のAIモデルを組み合わせてあるので、お客様のニーズに合わせてカスタマイズが可能です。今後は誰でもMi-Moを動かすアプリを作れるプラットフォームの整備も見据えています。まずは、ハードウェアやロボットに興味を持つソフトウェアエンジニアの方々に注目していただき、遠くない未来に卓上サイズの小型モデルを一般家庭向けに提供していきたいですね。

―ソフトウェアとハードウェアの両方を手がけるのは、なぜですか。

石川:ハードウェアではイテレーションサイクルが長くなりがちなので、進化のめまぐるしいAIソフトウェア事業も合わせ持つことで、常に最先端の技術を社会実装していけるスピード感を保ちたいからです。
さらに私たちは、AIの延長線上にハードウェアやロボットがあると考えています。ソフトウェアで培った技術をハードウェアに取り込むことで、よりインパクトが大きくなり、そのハードウェアから得られるデータがまたAIの進化に役立つ。こうしてAIが進化する先にはハードウェアが不可分なことから、ハードウェアも直接手がけることにしました。
また、自分の持つアセットをどう活かせば海外でも通用するチャレンジができるかを考えたときに、ハードウェアなら日本発で可能性が大きいと感じています。CESでの反響が自信になりました。

1stRoundのハンズオン支援で、法律面でのサポートを使い倒し

―2024年6月にJizaiを設立されていますが、起業に至った経緯を教えてください。

石川:私自身、メルカリで生成AI担当役員として、eコマース全般においてAIをフル活用してきましたが、その変革をあらゆる領域や業界で行いたいと思ったのが起業のきっかけです。もともとメルカリでも子会社を立ち上げたり、在籍中に自分の遊び感覚で開発会社を作ったりと、起業への興味はありました。そしてAIのすさまじい進化を目の当たりにして、居ても立ってもいられなかったのが、このタイミングだったんです。

―1stRoundに応募されたのはなぜですか。

石川:まず、喫緊にオフィスが必要だったため、採択されれば最長2年まで「1stRound BASE 東大前 HiRAKU GATE」のコワーキングスペースが利用できるのが目的の一つでした。ロボットを扱うには物理的な場所が必須でしたので、非常に助かりました。
また、アカデミアとの連携や、業界を代表するような大手企業とのつながりも魅力でしたね。

―採択されて、実際に役立ったことを教えてください。

石川:ハンズオンでのバックオフィス関連のサポートが手厚かったのには、感謝しかありません。特に半年後のCES出展に向けてロボットのIPや商標登録など、リーガル面で矢継ぎ早に相談させていただきました。渡航費用が想定以上に膨らんで困ったときにも、東京都の補助金制度を紹介してくださるなど、親身に、本当に必要な支援をいただけました。
また、VCからの問合せなどをまとめていただいたり、広報面でメディアとつないでいただいたりと、私自身の人脈とは異なるカバレッジで広げてもらえたのも大きかったです。
そして、メンターの水本さんとの月1回のメンタリングで、フラットな意見をいただけたのも貴重でした。当社事業についてだけではなく、VCとしてディープテック領域に投資する際の視点や肌感覚なども聞けたので、今後の経営に活かせると思います。

AIで起業のあり方も変わり得る。やりたいことをしっかり見据えて

―資金調達はどのように考えていますか。

石川:1期目に、いわゆるエンジェルラウンドで個人投資家の方々から調達を行いました。ただそれは単純に資金のためというよりも、事業を進めていく上で一緒にやりたいと思える方にお声がけした形です。引き続き資金調達は考えていきますが、前例がなく理解されにくいかもしれない新基軸のプロダクトやサービスをさらに手がけていきたいので、マーケットと技術のフィジビリティを見て、大きく投資すべきと思ったタイミングで考えたいですね。

―最後に、起業を考える方へアドバイスをお願いします。

石川:起業というのは、誰かや何かに迫られてやるものではなく、自分自身に忠実に、やりたいようにやるのが一番だと思います。AIによって、これまでの資本主義のあり方やゲームのルールが変わろうとしています。そうなると、起業の形も激変する可能性があります。
だからこそ過去の知見や事例にとらわれず、自分がやりたいことを軸に進めていくべきでしょう。今は新しい型や形を模索するフェーズにあると思うので、当社もそれを探しながら、自分たちにとってベストなあり方を探していきます。
私たちのミッションを実現しようとすると、会社としても一定の規模感が必要になるので、仲間は順次増やしていきたいと考えています。AIを猛烈に活用しながら、それを社会にどう活かしていくかに取り組みたい人と、ぜひ一緒にチャレンジしたいと思います。

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