2023/8/22

ロボット単独での自由なビル・エリア内移動環境を標準化し、普及を推進

株式会社Octa Robotics|CEO 鍋嶌厚太氏 COO 前川幸士氏

2021年度に開催された第6回1stRound採択企業の一つである株式会社Octa Roboticsは2021年5月に設立。「ロボットをあたりまえのインフラに」をパーパスとして、ロボット単体でのビル内フロア間・エリア間移動を可能にする独自のLCIサービスなどを開発、提供している。2022年10月には1億円の資金調達を行った同社CEOの鍋嶌厚太氏とCOOの前川幸士氏に、事業の独自性と起業から現在に至るプロセス、1stRoundのメリットについて聞いた。

 

自律型ロボットのフロア間・エリア間移動を可能にし、費用対効果を向上

 

―まず、Octa Roboticsの事業について教えてください。

 

鍋嶌:最初のサービスとして、ロボットをエレベーターや自動ドアなどの建物設備と連携させ、ロボット単体でフロア間やエリア間の移動を可能にするインターフェースサービス「LCI」を開発、提供しています。現在実用化されているロボットはほとんどが車輪式なので、何も対策をしないままでは、フロアやエリアに閉じ込められてしまうのが課題でした。ロボットは、LCIを経由して建物設備と連携することで、建物内を自由に移動できるようになります。これによって、ロボット1台あたりの活躍範囲が広がるのです。

 

前川:当社では「ロボットと社会をつなぐハブとなり、新しい社会基盤を創る」というビジョンのもと、ミッションを3つ掲げています。1つ目は、先ほどお話したLCIサービス。2つ目は、そうしたインフラが整ったときにエッジで動く移動ロボットを最適化して提供するMRSプロジェクト。そして3つ目は、この2事業によりロボットと移動環境の標準化を推進していくということです。これらを進めることで人手不足という構造的な社会課題の解決を目指しています。

 

―標準化の推進は、具体的にはどのように進められているのですか。

 

前川:今まさにロボットと建物設備がつながっていくタイミングで、そのインターフェースの仕様が、現在進行系で作られているところです。そこで当社では経済産業省と連携し、鍋嶌がISO(国際標準化機構)/TC299(ロボティクス)/WG4(サービスロボットの性能)の委員長を務めるなど、国際標準化を主導することで、サービスだけでなく、ルールづくりも     同時に進めているところです。

 

―LCIサービスの市場規模を教えてください。

 

前川:サービスロボットの種類も、当初想定していた清掃や警備だけでなく、案内や搬送など、多様になっています。私たちのお客様という意味では、施設オーナーや施設管理会社に設備投資としてご検討いただくケースが多く、大手不動産デベロッパー数社とはすでに取引をいただいています。また、これからのビルはロボットフレンドリーが設計の前提条件となってきており、スーパーゼネコンや大手設計会社とも商談をして、設計段階からLCIが組み込まれることが増えました。

 

市場規模は、オフィスビルや病院、駅、空港、商業施設、ホテルなど対象となるビル数が国内で2万5000棟以上あり、LCIがサブスクリプションモデルで年間利用料が48万円ですので、約120億円を見込んでいます。

 

―ロボット開発事業は、すでに始められているのですか。

 

前川:2022年度から開発を行っており、すでに売上も上がっています。LCIがサブスクで積み上がっていく売上構造ですので、今のところ売上比率はロボットのほうが大きくなっています。

 

サービスロボットの「標準化」という大命題に、顧客候補も賛同

 

 

―LCIサービスを開発された経緯を教えてください。

 

前川:共同創業者である私たち2人は、もともと同じ会社の同僚でした。鍋嶌はロボット作りと標準化のスペシャリストで、同社のサービスロボットをお客様に展開する立場の私と一緒に仕事をしていた時期がありました。当時から私たちは、労働人口減少にあたり代替労働力としてサービスロボットに大きな期待を寄せており、先進的な不動産デベロッパーなどと実証実験を始めていたのです。

 

そして機能と価格が見合ってきたところで普及させようとしたのですが、清掃や警備の自律型ロボットはエレベーターやセキュリティゲートが障壁となり、一定のフロアやエリアでの活動に限られてしまうことが問題となりました。費用対効果を考えれば1台であまねく稼動できるのが望ましいため、建物設備と連携するためのインターフェースが必要になります。     しかし、設備側やロボット側のオプションで展開すると、組み合わせるたびにカスタマイズが必要になり、コストがかかります。そこでマルチベンダー方式でどのロボットや設備でも対応できるように開発したのが、当社のLCIなのです。

 

―そもそも起業に至った背景を教えてください。

 

鍋嶌:起業する前、お互いに別の会社にいましたが、ちょうど2人とも、それまでの仕事が一段落したタイミングがあり、次は何か一緒にやろうと話していました。その頃に、サービスロボットとエレベーターの標準通信プロトコルができそうだと分かったのですが、そのままだと誰も使わないのが世の常です。これを事業としてドライブする母体があれば、と話していて、ならば自分たちで起業して手がけようとなったのです。それが2020年12月のことで、2021年5月に会社を設立しました。

 

前川:お互いにサービスロボットの普及には、業界をあげての標準化が欠かせないと痛感していたのです。その強い思いとともに、技術的にも当社が最先端を走っているので、起業して標準化を進めるとなったときに、ユーザー企業となる大手のお客様に軒並み共感頂き、立ち上がったばかりのスタートアップながら信用していただけました。ですから、ある意味で非常に運が良かったといえます。お客様自身がすでに課題を感じている状況があったので、標準化を進めて一気にサービスロボットを普及させるための「同志」になってくれたのです。

 

「1stRound採択企業」ブランドが、ビジネスや実証実験の実現に貢献

 

―1stRoundに2021年10月に採択されましたが、参加された経緯を教えてください。

 

鍋嶌:もともとFoundXのFounders Programに入っており、次のステップとして1stRoundを勧められ、エントリーしました。

 

前川:FoundXについては、創業期にオフィスと作業スペースが提供され、メンタリングも受けられるというので、当初参加させてもらいました。間近にいる他の起業家やOBとのつながりもあり、頼もしかったですね。スタートアップとしての悩み事にもその都度応えてくれ、立ち上がりをサポートしてもらえました。その先の存在として、1stRoundへのエントリーが自然なことだったのです。

 

―そうしてチャレンジした1stRoundは、どうでしたか。

 

前川:1stRoundは、採択に向けたプレゼンテーションでもサポート企業が多数おられ、そうした場で評価してもらえるかを試せる、良い機会だったと思います。我々は、事業自体には自信がありますが、外部に向けてプレゼンテーションを行ったときにどのような反応がいただけるのかは未知だったので、すごく興味がありました。

 

鍋嶌:当社が見込んでいる顧客候補となるような企業が、サポート企業に名を連ねられていたので、どう評価されるかの試金石であり、後に実証実験をさせてもらうきっかけにもなりました。これは我々スタートアップ側の立場にとってもプラスですが、大手企業側にとっても社内で実証実験プロジェクトへの投資を決める際に、「1stRoundの採択企業」だというので話を通しやすかったそうです。

 

また、資金提供もありがたかったです。創業期はキャッシュフローも余裕がないので活動資金として非常に貴重でした。

 

―サポート企業が投資判断する際の指標になるということですね。

 

前川:昨今は大学発ベンチャーが注目されていますが、中でも東大IPCのブランドは非常に大きいと実感しています。ですから、まず名前を挙げていただき、さらに採択までされたことで、当社も非常に注目度が上がりました。問い合わせが増えたり、ご挨拶も快く受け入れてもらえて、ビジネスがとてもやりやすくなりました。

 

鍋嶌:実際に、1stRoundに採択されたというニュースリリースが配信されると、VCなど投資家から連絡があったりしましたので、その影響は大きかったですね。

 

共同創業者の2人で、視座の高い夢と足元のビジネスのバランスを取る

 

 

―1stRoundのメンタリングやアドバイスで役に立ったことはありましたか。

 

鍋嶌:資本政策ですね。当社の事業が投資家からどう受け止められるのかを、フェアな目線でアドバイスしてもらえたのが大きかったです。それができるのは他にはいません。実際、東大IPCが投資するかどうかは別問題として、フラットかつ親身に相談に乗ってもらえたので、自分たちの考えを整理することができました。

 

前川:そのアドバイスは貴重でしたね。資本政策というのは経験値によるところが大きく、初めての起業ではイメージが湧かないものです。そこを、経験豊富なスタッフの方々に聞けるので非常に勉強になりました。

 

―実際、2022年8月に資金調達されていますが、1stRoundは資本政策について、どのように役立ったのでしょうか。

 

鍋嶌:株式で、しかもリスクの高めなスタートアップに投資する人たちの相場観であったり、どういうことに価値を感じやすいかという話が聞けたことですね。本で読むよりも、やはり自分ごととして相談し、議論できる相手というのは、普通は見つからないでしょう。

 

前川:最初の資金調達でも大変役立ちました。VCによっても考え方が異なるので、そうしたニュアンスなども参考にさせてもらいましたし、面談での感触や印象について気をつけるべきことなども学びました。

 

―最後に、起業を考える方へアドバイスをお願いします。

 

鍋嶌:アイデアについて技術的な実現性に自信があれば、     起業も選択肢に考えるべきだと思います。そして起業すると決めたら、資金のことを考えてください。やりたいことに向けて事業を続けるためにも、初期のキャッシュフローをしっかり考えておいた方がよいです。

 

前川:スタートアップといえども、やはりビジネスなので、先の夢を描くだけでなく、まず足下で小さいことでもビジネスをきちんと積み上げていくことをしないと、あっという間に終わらざるを得なくなってしまいます。そこは未来と今をバランスよく考えてほしいですね。

 

とはいえ、今はとても起業しやすい時代だと思うんです。東大IPCのようなサポーティブな環境があり、VCでも起業コンサルタントでも、さまざまな助けが得られます。ですから勢いを持ちつつ、一方で1つ1つの売上の立て方を考えるというバランスが大事で、我々もそれを肝に銘じながらやっています。

 

鍋嶌:課題とその解決を繰り返す中で、地続きで将来的なビッグビジョンにつながるものがあるかどうかが大事です。その間が欠けていると、失敗してしまうでしょう。我々は2人いることで議論できるので、そのバランスを取りやすいのだと思います。

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