2023/1/6

ユニコーン企業とは?企業一覧【2022年9月時点】

ユニコーン企業とは?

ユニコーン企業とは

まず本章では、ユニコーン企業の定義や近年増加する背景などを中心に概要を解説します。

ユニコーン企業の定義

ユニコーン企業(英語:Unicorn company)とは、「設立から10年以内」「企業評価額が10億ドル以上」「非上場企業」「テクノロジー企業」といった4つの条件をすべて満たしている企業をさします。

設立から10年以内に企業評価額が10億ドルを超えることは非常に困難であり、2013年に「ユニコーン企業」という言葉が使われ始めた頃には世界に39社しか存在しませんでした。こうした希少性の高い企業をさす言葉として、伝説上の生き物「ユニコーン」の名称が用いられたという由来があります。

なお、ユニコーン企業と類似する言葉として「デカコーン企業(英語:Decacorn Company)」が挙げられますが、こちらはユニコーン企業の10倍(100億ドル)以上の企業評価額が付けられているスタートアップやベンチャーのことです。「ユニ」は1、「デカ」は10を示す単位であることが名称の由来です。

デカコーン企業について理解を深めたい場合は、以下の記事をご覧ください。

デカコーン企業とは?ユニコーンとの違い、企業一覧【2022年9月時点】

ユニコーン企業が増えている理由

世界的な規模で見ると、ユニコーン企業の数は増加傾向にあります。この理由としては、主に以下の2点が挙げられます。

  • 資金調達方法の変化
  • ITの進歩

企業が成長するうえで、資金は必要不可欠です。特に大規模に資金調達をするためには、従来は上場し新規株式公開(IPO)を行う方法を選択するケースが多く見られました。しかし、最近ではベンチャーキャピタル(VC。高い成長率が見込まれる未上場企業に対して、主に出資の形で投資を行う会社)業界の発展に伴い、多額の資金を集めやすい環境に変化してきています。投資に積極的な大手企業・投資家も増えていることから、未上場企業が資金調達に成功して自らの評価を高め、ユニコーン企業に仲間入りすることが以前よりも容易になっています。

上記の状況に加えて、昨今のインターネットの普及やクラウドサービスの発展などに伴い、新規事業に着手したり起業を行ったりする際に必要な初期投資のコストが減少してきています。このことから、IT事業を主軸とするスタートアップ・ベンチャーが生まれやすくなっている状況です。IT業界は変化が激しいことでも知られていますが、それだけユニコーン企業に急成長する可能性が高いとも考えられています。

本記事のテーマの前提となる「スタートアップ」「ベンチャーキャピタル」については以下の記事で解説しておりますので、より深く理解したい場合にはご一読ください。

スタートアップとは?ベンチャーとの違いを解説【図解あり】

ベンチャーキャピタルとは?投資目的/手法/メリット/流れを解説

ユニコーン企業が求められる理由

ユニコーン企業は、単純に時価総額が高いために求められているわけではありません。日本でユニコーン企業が求められている理由の中から3つをピックアップして、下表にまとめました。

理由 解説
社会課題の解決 日本で深刻化する少子高齢化や環境問題などの社会課題を解決する手段として、ユニコーン企業の取り組みが注目を集めている。
新たな雇用創出 ユニコーン企業が増えればそれだけ人的資源の確保が進むため、新たな雇用機会の創出が期待される。
経済成長 1990年代初頭からの「失われた30年」で、相対的に経済力が低下した日本において、優れた創造性やチャレンジ精神をもとに日本経済の将来を切り開くユニコーン企業の存在が求められている。

海外のユニコーン企業

海外のユニコーン企業

本章では、海外に拠点を構えるユニコーン企業の現状・動向について探ります。なお、各社の企業評価額は2022年9月時点のデータです。

ユニコーン企業数

2022年9月時点の世界のユニコーン企業数は1,404社です。このうち、アメリカには703社、中国には243社と数多くのユニコーン企業が拠点を構えている一方で、日本のユニコーン企業はわずか数社程度です。

参考:Crunchbase「The Crunchbase Unicorn Board」

アメリカのユニコーン企業

アメリカに拠点を構える代表的なユニコーン企業の中から、ここでは「Stripe(ストライプ)」と「SpaceX(スペースX)」の2社を取り上げます。

Stripeは、フィンテックやSaaSを主軸に事業を展開するユニコーン企業です。eコマースウェブサイトやモバイルアプリケーション向けに決済処理ソフトウェア・アプリケーションプログラミングインターフェースなどを提供しています。企業評価額は約950億ドルです。

SpaceXは、航空宇宙メーカー・宇宙輸送サービス会社であり、衛星インターネットアクセスプロバイダとしても事業を展開するユニコーン企業です。企業評価額は約1,250億ドルです。

アジア・オセアニアのユニコーン企業

次に、アジア・オセアニアに拠点を構えるユニコーン企業の中から、中国の「ByteDance(バイトダンス)」「Ant Group(アントグループ)」、インドの「Byju’s(バイジュース)」、オーストラリアの「Canva(キャンバ)」の合計4社をピックアップして紹介します。

ByteDanceは、動画共有サービスTikTokの運営を主軸事業とするユニコーン企業です。ユニコーン企業評価額世界第1位(約1,800億ドル)を記録しています。

Ant Groupは、アリババグループのフィンテック企業(金融分野とIT技術の融合で生まれた革新的なサービスを提供する企業)です。企業評価額は約1,500億ドルです。

Byju’sは、オンライン動画教育サービスを提供するユニコーン企業で、企業評価額は約220億ドルを記録しています。

Canvaは、オンラインのグラフィックデザイン・印刷サービスを展開しているユニコーン企業で、企業評価額は約400億ドルです。

ヨーロッパのユニコーン企業

続いて、ヨーロッパに拠点を構えるユニコーン企業の中から、スウェーデンの「Klarna(クラーナ)」、イギリスの「Checkout.com(チェックアウトドットコム)」の2社を取り上げます。

klarnaは、主にBNPL(商品を購入した翌月以降にまとめて支払いができるサービス)を提供しているフィンテック企業です。企業評価額は約70億ドルを記録しています。

Checkout.comは、 ロンドンに拠点を置く国際送金のフィンテック企業で、企業評価額は約400億ドルです。

南米のユニコーン企業

最後に、南米に拠点を構えるユニコーン企業の中から、コロンビアの「Rappi(ラッピ)」、ブラジルの「Nuvemshop(スペイン語ではTiendanube)」をピックアップし、順番に紹介します。

Rappiは、宅配アプリを運営するユニコーン企業です。ビジネスモデルはUber Eatsと同様で、アプリで注文するとレストランの料理を自宅まで配送してくれるというものです。レストランの料理以外にも、スーパーの食料品からドラッグストアの薬品・電気製品、犬の散歩といったサービスも注文できます。企業評価額は約50億ドルです。

Nuvemshopは、サンパウロとブエノスアイレスにオフィスを構えてECプラットフォームを運営するユニコーン企業で、企業評価額は約30億ドルです。

日本のユニコーン企業

日本に拠点を構えるユニコーン企業の中から代表的な5社をピックアップし、下表にまとめました(2022年9月時点)。

企業名 主な事業概要 企業評価額
Preferred Networks 機械学習・深層学習など最先端技術の実用化 3,539億円
CVE CBDC(中央銀行発行デジタル通貨)プラットフォームの開発 2,245億円
スマートニュース スマートデバイスに特化したニュースアプリ開発・提供 2,004億円
SmartHR クラウド人事労務ソフトの開発・提供 1,731億円
TRIPLE-1 半導体システム「KAMIKAZE」の開発・提供 1,641億円

参考:フォースタートアップス「国内スタートアップ評価額ランキング最新版(2022年9月)」

日本にユニコーン企業が少ない理由

日本にユニコーン企業が少ない理由

アメリカや中国などの国と比べて日本のユニコーン企業は少ないのが現状ですが、本章では、考えられる理由の中から4つをピックアップし、順番に解説します。

なお、政府によるスタートアップ支援の仕組みや補助金・助成金の設置、ベンチャーキャピタルをはじめとする投資家の増加などに伴い、昨今の日本ではユニコーン企業は増えつつある状況も見られます。実際に、評価額が1,000億円以上のスタートアップ・ベンチャーの数は2021年1月から2022年1月の1年間で7社から11社にまで増加しています。

参考:フォースタートアップス「国内スタートアップ評価額ランキング最新版(2022年1月)」

起業しづらい

比較的、日本は起業しづらい環境であることが、ユニコーン企業が少ない理由の1つと言われています。

グローバル・アントレプレナーシップ・モニターが50カ国を対象に行った調査の結果を見ると、日本人の18〜64歳に対して「今後6ヶ月以内に、自分が住む地域に起業に有利なチャンスが訪れると思いますか」と質問したところ、「はい」と回答した人は10.6%でした。

この割合は「事業機会認識指数」と呼ばれており、起業意識を持つ人の割合を示すものです。ユニコーン企業が最も多いアメリカの事業機会認識指数は67.2%、2番目に多い中国はアメリカを上回る74.9%を記録しています。この結果から日本は他の主要国と比べて低い水準にあることがわかります(日本は50カ国のうち最下位でした)。

参考:みずほ情報総研「起業家精神に関する調査報告書」令和2年3月

投資額が少ない

日本のスタートアップ・ベンチャーに対する投資額が少ないことも、ユニコーン企業が少ない要因と言われています。

日本のリスクマネー(回収不能リスクを考慮したうえで、企業の成長を評価して提供される資金)は順調に増加しているものの、2021年におけるスタートアップ・ベンチャーへの投資額をアメリカと比較すると、アメリカは日本の約45倍も多いうえに、前年(36倍)よりさらに差が開いています。

日本のスタートアップ・ベンチャーに対する投資額が少ない理由の1つに、日本のVCの規模が比較的小さいことが挙げられます。

スタートアップ・ベンチャーの成長ステージの最終段階にあたる「レイターステージ」で巨額の出資を行える規模を持ったVCが少ないことから、事業が軌道に乗り、安定した成長・収益化を行えていても、さらなる拡大につながらない企業が多いと考えられています。

創業前の「シードステージ」や創業直後の「アーリーステージ」にある企業への投資に対する間口は広がっている一方で、レイターステージ以降の企業の資金需要に対応できる日本のVCは依然として少ないことが、ユニコーン企業が生まれにくい要因の1つとされているのです。

参考:一般社団法人日本ベンチャーキャピタル協会「日本経済再興のために」2022年2月21日

未上場株式に投資しづらい

日本のスタートアップ・ベンチャーに対するリスクマネーの供給が少ない要因の1つに、未上場株式に対する制限が厳しいことが挙げられます。

日本には未上場株式の取引市場はほとんど存在しませんが、アメリカや中国などにはオンライン取引市場が複数あります。また、日本では、未上場株式の時価総額に関する規制が厳しいため、投資信託による投資も難しいです。これに対して、アメリカでは上場・未上場いずれにも投資を行う「クロスオーバーファンド」が多く見られます。以上の結果として、日本はリスクマネーの供給が比較的少なく、スタートアップが十分に育たない環境にあると考えられています。

とはいえ、昨今の日本では、株式投資型クラウドファンディング(非上場株式の発行により、インターネットを通じて多くの人から少額ずつ資金を集める仕組み)が活用されるようになってきており、未上場株式に対する投資環境が改善していくものと期待されています。

上場しやすい

日本でユニコーン企業が少ない理由の1つに、上場のしやすさも挙げられます。

東京証券取引所のグロース市場(以前のマザーズ市場)は、これまでは新興企業がそこに上場することによってさらなる成長をとげるための登竜門のような位置付けにありましたが、最近は、上場すること自体を最大の目的としている企業が増えていることも事実です。

こうした企業の中には、企業価値を十分に高める前に上場する(ユニコーン企業と呼ばれるための4条件を満たす前に上場する)企業も存在します。

つまり、ユニコーン企業ではなく上場すること自体を目指すスタートアップ・ベンチャーが多いことも、日本にユニコーン企業が少ない理由の1つだと考えられています。

上場の詳細は以下の記事で解説しています。

上場(IPO)とは?条件や方法、メリット・デメリットを分かりやすく解説

より多くのユニコーン企業が生まれるためには

日本からより多くのユニコーン企業が生まれ、活躍していくためには、外部環境もさることながら、起業家・経営者1人1人の意識や考え方も大切だといえます。そこで最後に、日本からより多くのユニコーン企業が生まれていくために、起業家・経営者の意識や考え方に関するポイントの中から代表的な5つをピックアップし、順番に解説します。

普遍的な社会課題に取り組む

企業評価額を高めてユニコーン企業に成長するために、より多くのユーザーに自社の製品を利用してもらうことは重要です。より多くのユーザーに自社の製品を利用してもらうためには、普遍的な課題を解決する製品を提供することが効果的だといえます。

近年、世界的にユニコーン企業が増えている理由の1つに、ITと実生活をつなげることで日常生活の不便を解決するような製品が増えたことが挙げられます。以前はIT完結のサービスが多く、ニーズの規模に限界がありましたが、最近ではヘルスケア・モビリティーなど世界中の多くの人々が日々の生活の中で共通して抱えている大きな課題を解決するようなスタートアップ・ベンチャーが増えており、企業評価額を高めている状況が目立っています。

また、現在ソリューションが存在していないような課題や、既存のサービスが不便であったり、顧客満足度の低い状況を打破したりするようなサービス、いわゆる破壊的イノベーション(既存の市場で求められる価値を低下させつつ、新しい価値基準を市場にもたらすイノベーション)を提供するようなスタートアップ・ベンチャーがユニコーン企業に成長するケースも多くあります。

破壊的イノベーションについて詳しく知りたい場合は、以下の記事をご覧ください。

破壊的イノベーションとは?必要な理由や種類、事例

ユニークな価値を提供する

まだ存在していないような新しい価値を生み出す製品を提供する企業であれば、多くのユーザーを獲得し、急成長を達成できる可能性があります。

新しい価値を生み出す製品を提供するには、革新的なテクノロジーを開発するほか、既存のサービスを融合したり、時代の変革タイミングに沿った製品作りを行ったりすることなどが効果的です。

他とは異なる視点からユニークな価値を創造することで、将来的に市場を独占できる可能性が高まり、企業評価額の上昇につながると考えられています。

グローバル展開

世界的な規模で自社の製品・サービスを展開できることもユニコーン企業に成長させるうえで重要です。

企業評価額は、将来的に見込まれる市場の大きさにも左右されます。国内市場のみに限定した製品・サービスを提供していると、市場規模が頭打ちになってしまいやすいです。グローバル展開を目指せる企業であれば成長可能性が高く、企業評価額の上昇につながりやすいです。

グローバル展開を進めるうえで役立つ施策の一例を挙げると、グローバル市場でのビジネス経験を持ったスタッフやパートナー企業を確保することです。

投資家からの理解と協力

ユニコーン企業への成長にこだわる場合、どれくらいの期間「未上場企業」でいられるかということも考慮すべき重要なポイントです。

これは、なるべく早くイグジットしてもらいたいと考える投資家にとっては辛抱が求められます。特に日本では、どれだけ短い期間で上場を果たせるかが投資家にとって重要視される傾向にありますが、ユニコーン企業を目指すとなると、上場を急がずに企業評価額が上昇するのを待たなければならない場合もあります。

この場合、投資家からの理解と辛抱強い協力が必要不可欠だといえます。

まとめ

ユニコーン企業とは、「設立から10年以内」「企業評価額が10億ドル以上」「非上場企業」「テクノロジー企業」の条件をすべて満たしている企業のことです。

2022年9月時点の世界のユニコーン企業は1,404社存在し、中国の「ByteDance」、アメリカの「SpeceX」などが代表例です。

アメリカや中国などの国と比べて日本のユニコーン企業は少ないのが現状ですが、政府によるスタートアップ支援の仕組みや補助金・助成金の設置、ベンチャーキャピタルをはじめとする投資家の増加などの影響で、今後は企業数が増えるものと期待されています。

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