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東大IPC

Story

東大IPCでは、ベンチャー投資だけでなく、「東大IPC 1stRound」という 創業3年以内の起業家や起業前のチームに対し、
事業資金・ハンズオン支援・東大やパートナー企業のリソースをZero Equityで提供するプログラムを提供しています。
採択先に対しては、ビジネス推進から資金調達まで東大IPCが並走して支援します。
創業までの経緯、どのような支援が実際にあるのか、起業家たちに語っていただきます。

水を推進剤として高性能の小型衛星用推進機を実現する 株式会社Pale Blue

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「地球近傍及び以遠における持続可能な宇宙開発の実現」をミッションに、小型衛星用推進機の開発を行っている株式会社Pale Blue。2020年4月設立後、2020年には累計金額2億円を調達し、2022年のJAXAにおける水を推進剤とした超小型統合推進システム打ち上げに向けて日々機能改善を行っています。代表取締役の浅川純さんに、事業概要や起業に至るまでの背景、今後の展望などについてお話を伺いました。

 

水を活用した推進剤で、小型衛星を安全に動かす

「まずは事業の概要についてお話いただけますか」

低コスト、短期間で開発できる超小型衛星は、今注目されている市場です。この小型衛星用推進機の推進剤として水を使うのが当社の特徴です。なぜ水を使っているかというと、水は間違いなく安全度が一番高く、月や他の惑星でも存在する、将来的な宇宙空間でのエネルギー源になるからです。今までの大型衛星のスラスタでは、高圧ガスや毒性の高い素材が使用されていることも多く、取扱いが難しく厳重なものとなり小型化にも限界があります。その背景もあり、水による推進剤に選びました。

 

「水を推進剤として使ったPale Blueの強みは何でしょうか?」

細かい軌道修正を可能にする水レジストジェットスラスタ(水蒸気式)と推進力のある水イオンスラスタ(水プラズマ式)を組み合わせたハイブリッド型を研究開発している点です。水蒸気式で重さ4キロのスラスタは既にJSTのプロジェクト実証実験が済んでおり、ハイブリッド型は2020年5月にJAXAの実証テーマに選定され、2022年の打ち上げに向けて開発を進めています。

ハイブリット式は、水蒸気式に比べて必要な機材が多く、関連機材のさらなる小型化が当面の課題です。当社以外にも水を使って開発している企業は海外に2社ありますが、1社は水蒸気のみ、もう1社は別の方法でのプラズマ化を目指しています。プラズマ化は水以外の推進剤だといろいろな方式が使えますが、水だと錆びてしまうため従来のプラズマ化方式が使えないというところが一番の参入障壁ですね。我々のプラズマ生成方法は特許を取得しています。

 

宇宙との出会いは偶然、研究そして産業の可能性へ

「宇宙に出会ったきっかけは?」

高校生の進路希望提出の際、当時は親が公務員なので私も公務員になって高知県内で働こうかなとぼんやり考えていました。が、何か他のことを書いてみようと。そのときにふと出てきたのが宇宙というワードで、おそらく「宇宙工学者」と書いて出しました。実は父が宇宙やSFなどに興味のある人で、それも影響したかもしれません。

実は、東大に行くと決めたのも、高校時代の調査票に、県内の大学志望と書いたのですが、先生に書き直され「東大に行け」と言われたのがきっかけでした。実際に、調べていくと東大に航空宇宙工学科があることも知り興味をもち、目指すことになりました。

 

「水の推進剤に出会ったきっかけはどのようなものだったのでしょうか」

博士課程在籍時に、指導教員の小泉宏之准教授から「水を推進剤にしたスラスタの研究を一緒にやらないか」と提案を受けたのをきっかけに、博士課程の3年間で研究をし、水レジストジェット推進機を開発しました。ずっと基礎研究がメインでしたが、衛星開発のプロジェクトに関わる機会があり、初めて実機に搭載し宇宙での実証実験にも携わりました。空へ打ち上がる瞬間は、不思議な感情で印象深いですね。実際に自分の関わった実機が宇宙に漂う様子を目の当たりにして、のめりこむきっかけになりました。

また、アカデミアの世界もとても刺激的でした。学生時代、僕は頭も金髪で学会にスーツを着ていかないような学生だったのですが、興味あることは何でも色々な人に声をかけて話をさせてもらっていました。その時、JAXAの研究者の方々など年齢関係なく本当にフラットに議論をして頂き。見た目や年齢ではなく、内容できちんと議論をしてくれたのがとても嬉しく、研究者の世界は素晴らしく、楽しい世界だなと思いました。その後、海外の小型衛星をテーマにした国際学会に出席した時、産業としての盛り上がりを感じました。一方で我々がやっていることも、世界トップの方々と肩を並べて戦っていけるかもしれない。そんな想いも湧き上がり、事業化へのきっかけのひとつになっています。

包括的な支援が今後の挑戦を支える基盤へ

「起業はいつから視野にありましたか?」

博士課程在籍中に、東大で「アントレプレナー道場」に参加しスタートアップとは何かイメージが見えてきたことが、起業を考える最初のきっかけだったと思います。また当時宇宙ベンチャーが国内で注目されはじめた頃で、研究室でも宇宙ベンチャーの方とディスカッションする機会が多く、ベンチャーを身近に感じるようになりました。

全員創業メンバーは若く動きやすいというのもありますが、私たちにとっては、やりたいことをやれないことの方がリスクだと考えています。どうしたらやりたいことを実現できるか。大企業へ行ってもやりたいことができないのであれば、そちらの方がリスクかなと考えているメンバーが多かったです。

また社会問題を解決したいという思いも芽生えてきました。最初は研究から始まっているので、この技術で何が実現できるのかということに注目していましたが、例えば宇宙ゴミといった問題。このようなことにも貢献できる意義を感じはじめ、私たちの事業の社会貢献のあり方にも注目しています。科学技術の発展こそが人類を幸せにすると考えています。

 

1stRoundにはなぜ参加しましたか?」

創業前に資金で困っていたので、資金的な援助が得られるプログラムを探していました。東大の産学協同のコミュニティで、プログラムを見つけ応募しました。その後支援が決定し、初期の支援が役立ちました。VCのご紹介など手厚いサポートをしていただき、こんなに支援してくれると思っていなかったので、ありがたかったです。

本当に基礎の基礎から分かっていなかったので、とても細やかなサポートをして頂きました。例えば「スケジュール表をきちんと作ってマイルストーン管理してください」とアドバイスを頂いたのですが、私自身研究者時代、お恥ずかしながらマイルストーンリストをきちんと守ってこなかった経緯もあり。更に、そもそもどうやって作るかも全く分からない状態の中でした。「どうしたら良いのでしょうか?」と相談すると、テンプレートを頂いてスケジュールを引いたりなど。1つ1つ細かくサポートしていただきました。

 

科学技術によって、人類の幸福を最大化したい

「今後取り組みたいことはありますか?」

現在は、スラスタを開発し販売していくモデルですが、将来的にはスラスタ技術をベースにして、サービスまで展開したいと思っています。例えば、大型衛星ではすでに実施されている軌道制御の支援や、推進剤の補給なども考えられます。スラスタの周辺技術を固めていくことによって、スラスタを使うことを前提にした衛星や衛星利用インフラが整っていくと考えています。

このような展開も、2022年の実証実験が1つのマイルストーンです。2022年に実証できれば、そこから本格的な市場展開を開始し、事業拡大を目指していきたいと考えています。

また、我々のベンチャーのモチベーションとして、科学技術が大事ということがベースにあります。科学技術が人類を幸福にする源であると。私たちはその科学技術を使って、事業を起こし、そしてその収益を研究に再分配する。最終的には、そこを目指していきたいと思っています。

「起業を目指している人へアドバイスをお願いします」

とりあえず新しい環境に飛び込んで行くことが大事だと思っています。そして、何でもいいので、やれることをひとまずやってみることが重要です。私も最初、起業するつもりはなくて、アントレプレナー道場の授業を受けたというアクションから、全ては始まっていると思っています。

そこでいろいろな人と繋がりができて、新しいところに呼ばれて、またつながりができてと繋がっていく。そのきっかけの繋がりで、JSのプログラムなど、もともと知らなかった情報を手に入れることができ、採用へと繋がりました。今の時代、自分たちが好きな情報しか入ってこないものです。だからこそ、新しい場所へ飛び込み、生の情報、自分が選択していない情報に触れるのが大切だと思っています。

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