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東大IPC

Story

東大IPCでは、ベンチャー投資だけでなく、「東大IPC 1stRound」という 創業3年以内の起業家や起業前のチームに対し、
事業資金・ハンズオン支援・東大やパートナー企業のリソースをZero Equityで提供するプログラムを提供しています。
採択先に対しては、ビジネス推進から資金調達まで東大IPCが並走して支援します。
創業までの経緯、どのような支援が実際にあるのか、起業家たちに語っていただきます。

株式会社アグロデザイン・スタジオ

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第3回東大IPC起業支援プログラムに採択された株式会社アグロデザイン・スタジオの西ヶ谷代表取締役へお話を伺ってきました。環境に優しい農薬の開発を進める株式会社アグロデザイン・スタジオ。技術者である西ヶ谷代表取締役が事業を推進しています。各種助成金やピッチコンテストでも優秀な成績を収め、直近ではベンチャーキャピタルなどから1億円の資金調達も成功させるなど勢いを増す当社。その原動力に迫ります。

 

「まずは、事業概要のご説明をお願いします。」
弊社は農薬の開発をしている会社です。創薬を手がけるスタートアップ企業がありますが、その農薬版だと思っていたたければ。最近の農薬は安全性が強く求められていまして、弊社では特定の害虫や菌にしか効かないような農薬を目指して作っております。特に殺虫剤と硝化抑制剤の2剤に力を入れております。殺虫剤は特定の害虫しか殺さない薬剤で、硝化抑制剤は肥料の効率を高めることで環境負荷を減らすことができる薬剤です。

 

「現在の事業フェーズは?」
今は技術開発のフェーズです。全体の農薬開発は12年ほどかかると言われている中、その3割から4割程度まで進んでいます。全体の7割まで進むとベンチャーがやるところは無くて、法律で決められた試験をやるだけですので、そうなったら既存農薬会社に開発権ごと販売することを想定しています。開発が終わるのは2028年を考えており、それまで売上は見込めません。

 

「資金の工面はどのように?」
最初は自分が出資したものと、知り合いからの出資がありまして、それから東大IPCさんの起業支援プログラムで活動支援資金や、経産省のNEDO(New Energy and Industrial Technology Development Organization)の助成金が入りまして、合わせて1,000万円くらいで1年持たせたというところです。そしてこの度ベンチャーキャピタルからの資金調達ができ1億円確保できました。

 

「ベンチャーキャピタルにはどのようにコンタクトを取っていったのでしょうか?」
東大の先生方からの紹介や私からアプローチをかけて30社程度回りました。その中で反応が良かったところを5社程度に絞って今年の2月くらいから再度アプローチして、その内の3社が協調で出資してくれました。過去を振り返ってみると、2017年2月に参加していた東京大学のEDGEプログラムで最優秀賞をいただきまして、その時のメンターだったベンチャーキャピタリストの方に起業すべきだとアドバイスをもらいました。それで起業をする1年くらい前からベンチャーキャピタルを回り始めたんですけど、5社くらい回ったところで全然ダメだとわかりましたね。

 

「なぜダメだとわかったのでしょうか?」
よく言われたのが、「研究は面白いけどまだ早い」「リターンがどれくらい出るかわからない」でした。資本施策がちゃんとしてなくて、マネタイズするビジネスモデルの仕組みもできていなかったんです。最初は1件行くだけで大変疲労して翌日は起き上がれないほどでした。10件行けばだいぶ慣れましたけどね笑。

 

その教訓があったので、今年本格的にベンチャーキャピタルを回る際にはアピール方法を変えて、研究の面白さよりもリターンを出せるという論調にしたら反応がガラッと変わりましたね。研究者が起業する上では、その事を意識できるかが大事ですね。ピッチの指南書を読んでも、マネタイズの事を書いてもどうせ崩れるんだから、ビジョンを示す事が重要だと書いてあるんですけども、資金調達の場面では必ずしも正解とは言えなかったですね。

 

 

「現在の社内体制を教えてください。」
フルタイムは1人従業員を雇っているのみです。今回資金調達ができましたので研究者を2,3人と1年以内にビジネスサイドの有識者を1人雇いたいと考えています。そのビジネスサイドの人は今雇ってもそんなにやる事が無いので、次のラウンドに動くタイミングでの雇用を想定しています。

 

「他のスタートアップ企業は複数人での起業が多い中、1人での起業を決めた理由は?」
3人集めて起業をするのが良いと言いますが、3人集める時間がもったいなかったことと、複数人を集めると50%くらいの確率で誰かが抜けるという統計があるようで、今考えると1人での起業も悪くなかったと思っています。

 

「1人で起業をして良かったこと、悪かったことは?」
良かったことは株式を1人で持てたことです。決めるのも簡単ですし、当然上場した後のリターンも大きくなります。また、複数人で創業する時には事前に株の比率を決めますが、必ずしもその比率通りに貢献できるとは限りません。私は1人なので比率など関係なく資本政策で面倒なことは起きません。

 

悪い面を挙げると、まずは人手が足りません。会計、資本政策、研究、労務まで全て1人で勉強しながらやらなくてはなりませんでした。その他にも、週に1度くらい会社の存亡を脅かすことが起きるんですよ。その時に親身になって考えてくれる人が誰もいないので、全部1人で解決しなきゃいけないというプレッシャーがありました。

 

「経営面の知識はどのようにフォローアップしたのでしょうか?」
東大のEDGEプログラムの他にも、様々なアクセラレーションプログラムに参加していました。起業する1年前から参加をし始めて、ここまでアクセラレーションプログラムに参加しなかった時期は無いほどです。メンターの方に常に見られている環境を作って毎週の成果を見せていました。メンターの方は研究のことを言っても分からないので、ビジネス上でどんな進歩があったのか伝えるようにしています。ビジネス書も100冊以上読み漁りました。

 

「ビジネス書を多く読んで得たものは?」
どのビジネス書も言っていることは同じなんです。デザイン思考もリーンスタートアップも一緒で、結局、実験をしろと言ってるんです。仮説を立てたらヒアリングなどをして、本当に自分の考えが正しいのかチェックする。それは10年以上かけて学んできたサイエンスと一緒で、考えるだけではなく試すことが大事ということを説いています。

 

「2018年11月に事業のPoC検証をしていますが、想定通りだったのか、思いがけない結果が出たのかどちらでしょうか?」
科学的な実験結果は想定通りでした。一方で農薬会社へのヒアリング結果が想定外でした。農薬会社は、私がずっと研究をしていた硝化抑制剤よりもサブでやっていた殺虫剤に興味があったんです。そのヒアリング結果を受けて、リソースをこれまでよりも殺虫剤へ振り分けるようにしました。ただ、最近のSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)の盛り上がりを受けて、環境負荷を減らす効果のある硝化抑制剤の方が反応が良くなったんです。外部環境が変化するのでリソースのかけ方が難しいです。

 

「これまで歩まれた道に関してお伺いします。子供の頃はどんなことに興味があったのでしょうか?」
小学生の頃から理科が好きだったり、中学生の時に出たWindows95のようなコンピュータにも興味があったりしました。その頃にNHKのシリコンバレーを特集した番組『新・電子立国』を見て、ビル・ゲイツやスティーブ・ジョブズ、ジェームズ・クラークはすごいと感じるとともに、その人たちに勝ちたいと思うようになったんです。インターネットでは追いつけないだろう、これからはバイオや環境だろうと思い静岡大学の生物地球環境科学科に入学しました。

 

「その後、奈良先端科学技術大学院大学に進学されました。」
そこから私の暗黒期に入りました笑。当時やっていた研究が合わなかったのか、うまく進まなかったんです。そこで共同研究していたつくばの農研機構(当時は農業生物資源研究所)が、東大の連携大学院であったこともあり東大の学生になって、農研機構で研究を続けました。

 

それまで所属していた理学部などは実用化が得意ではないところだったので、私はちょっと意識を変えて実用化に繋がる農薬作りをしようと思ったんですね。農薬は実用化をしない限り研究としては全て失敗になるので、最初から知財戦略を学びながら考えていました。研究を続けていくと、これはうまくいきそうだという感覚になってきたので、東大のEDGEプログラムを受けることにしました。

 

「その後、起業されますが、起業に向けて準備をしたことはありますか?」
実用化研究を基礎研究者が行うことは、論文を書けず学位が取れない可能性があるなど非常に困難です。しかし、絶対に実用化させようと思って、知財戦略を入念に練り、研究発表もあまりしませんでした。周囲の先生方も心配していたのではないかと思います。創薬には多額のお金もかかるので。そこは自分で研究費を取って進めさせてもらい、研究がうまくいくと追加で研究費も獲得できるようになりました。その後ベンチャーキャピタルを回っていったので、2018年に起業しましたが準備は2012年から進めていたということになりますね。

 

「学生時代の経験が今に生きていることは何かありますか?」
ちゃんと準備をしてノウハウを蓄積していたことは重要で、特に研究発表をする立場にいながらも、うまく立ち回る仕組みを試行錯誤しながら作り上げていったノウハウは、共同研究をしている他の技術者たちにも伝えています。これは農薬を開発する他社にはない強みです。また東大のEDGEプログラムに参加していた時、シリコンバレーの研修でスタンフォード大学に行くんですけど、講義を受けた場所がジェームズ・クラークホールという名前だったんです。子供の頃に憧れていた情熱を思い出す大きなきっかけになりました。

 

「その夢を現実にして起業されましたが、面白かったこと、楽しかったことを教えてください。」
企業や大学の教授と、企業のトップとして対等な立場で会話をして、私がOKと言えば契約がすぐに決まるスピード感は今までありませんでした。コントロールしている感覚は面白いです。

 

「2018年からビジネスコンテストや助成金に採択されるようになりましたが秘訣は?」
いっぱい応募するしか無いですね。東大IPCさんも3回目でようやく採択してもらえました笑。研究者としての初めての助成金も、応募できる助成金はたくさん出していて13回目でやっと採択されたんです。大体採択されていない人は書いてない事が多いです。また面白いことにベンチャー向け助成金の審査員は、同じ人が複数の助成金の審査員をしてることが多く、面識ができてくると、こちらの話がすんなり入ってくるようで採択されやすくなる面もありますね。

 

「東大IPCの支援を受けて良かったこと、改善した方がいいことは?」
他社のプログラムでは、計画から少しでもずれると詳細な報告を求められるのですが、東大IPCさんはそういう事が無かったので助かりました。サポートもいろいろしてもらって改善点などは特に浮かびませんね。絶対に申請すべきだと思います。ただ、応募する企業のレベルが高くなっているので、プレシードには厳しい状況ですね。

 

「技術者として起業を目指している方に対してアドバイスをお願いします。」
技術者として起業する人は、経営者にジョブチェンジする決意があるのか、それとも技術者として関わっていきたいのかを決める必要があります。私が見た成功している技術系の会社は、技術者が経営面も分かっているケースが多いです。経営が分からなくて技術だけやりますという技術者はうまくいっていないことが多いので、起業するなら技術者でも本気で経営の勉強をしてください。

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